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【昭和歌謡名曲集25】傘がない 井上陽水

井上陽水の歴史に残る名曲である。「いちご白書をもう一度」「結婚しようよ」「神田川」、あの辺りで、学生運動の時代が終わり、新しい価値観の時代が来るのだが、その象徴となる歌は、やはりこの曲である。共産主義革命とかの大きい物語から、ミーイズムの個人的な価値観に時代は移っていった。
72年のリリースである。
70年にはよど号があって、72年には、浅間山荘、大菩薩峠の凄惨なリンチが発覚し、74年には三菱重工爆破事件が起こった。
爆弾闘争、暴力革命。理想実現のために手段を選ばない新左翼運動、学生運動は急速に大衆の支持を失っていく。
そしてミーイズム。テレビで流れる社会的ニュース、問題より、今の問題は、君に会いにいく傘がない。その方がよほど大事なことだ。そうした心情が若者の支持を集めた。
 第二次世界大戦後、価値観の大変換があった。我々は騙された。自分は軍国少年であったのに。信じていたのに。それなのに。あの戦争とは何だったのか。戦犯は誰か。声高に語られた。
同様に70年迄の学生運動、75年頃までの運動先鋭化の時代は、同様の価値観の転換を下の世代が行うこととなった。30代以上は信じるな!、と声を上げた学生運動家を信じるな、と若者は思った。政治的思想を持つことより、傘の心配・自分の生活の心配をすることとなる。その姿勢を評して「志は何処へ」とか言われた。今更言われてもな。

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