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2022年12月の記事一覧
【短編小説】ブルーライト・ヨコハマ
「いしだあゆみ」が歌う「ブルーライト・ヨコハマ」が大ヒットしていた。保育園児の僕も大声で歌った。歌詞の意味なんかどうでもよかった。爺さんも婆さんも子供も大人も皆が歌った。歌とはそういうものだった。
僕は港でよくこの歌を歌った。時間つぶしに。何回何回も歌って、時間が経つのを兄と待った。
母が男を家に引き入れて、それからお小遣いを兄に渡して、自分の腕時計を僕に渡す。
「二時間したら帰っておいで」
【短編小説】うばすて
おばあちゃんは赤ちゃんだ。なんにも一人ではできない。歩くのも、ごはんを食べるのも、おふろにはいるのも、うんちするのも、みんなお母さんに助けてもらう。ときどきいなくなって、夜中におまわりさんから電話がきたりする。お父さんは交番にすっとんでいって、おばあちゃんをカクホして帰ってくる。おばあちゃんがいない間、お父さんもお母さんもお姉ちゃんもみんながシンパイする。あたしだってシンパイする。でも、心のどこ
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