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dot.マルシェに向けた機運の高まり|2023おおいた起業体験プログラム③

2024年始まりましたね。もう1月も15日になりました。新年早々,能登半島地震,羽田空港でのJAL機と海上保安庁機の衝突事故と痛ましい事件・事故がありましたが,本年も研究,教育にと力を入れて頑張ります。何卒宜しくお願いします。

さて,2023年度に各地へ拡大した高大連携アントレプレナーシッププログラム「スプラウト」。これまでもご紹介してきたように,このプログラムは大分県内の3都市(日田・佐伯・豊後大野)に在住する高校生と,福岡・大分の大学に所属する大学生がアントレプレナーシップを学ぶ機会を創出することを目的として実施しています。2回のオンライン授業,授業間にはワークショップを実施することで高校生と大学生のコミュニケーションを進めるとともに,2月10日-11日には福岡・天神にある大分県の就職支援施設「dot.」を舞台にマルシェを実施します。

今回は1月14日(日)午前に実施した「おおいた起業体験プログラム」の模様をお送りします。講義テーマは「組織と会計」。前回はアントレプレナーシップの重要性を基礎に企業家の考え方を学習。さらに,事業を構築するために理念を立て,戦略構築することの意義をお話しました。今回はそこからdot.でのマルシェを形にしていくプロセスとして,事業計画を構築する手がかりとして会計思考を身につけることが目的。果たしてどのような内容だったのでしょうか。

今回も授業を担当するのはプロジェクトを担い始めたばかりのゼミ2年生3人。緊張が伝わってきます(笑)

授業をする側の緊張感は言葉の節々に現れる

今回講義を主に担当するのはAさん。普段は誰にでも話しかけてハキハキとしている彼女だが,今日は明らかに緊張している。しかも,九州移住ドラフト会議で指名された熊本県菊池市に滞在中ということで,マルチタスクでこの講義に参加してくれている。年明け,成人式,講義と忙しい中でも授業準備をしっかりと取り組んでくれている。

今回の講義は「スプラウト」で言うところの第3回,第4回に相当する。第3回は個人の能力をどう組織的に活かすか,個人がベースにあるけれども,個人と個人の間にあるやり取り=違いを認識した上でリーダーシップとフォロワーシップを発揮するといったテーマがあるし,第4回はここまでの内容を受けて事業計画と進捗,成果を測定するための会計について話をする。

アントレプレナーシップを桃太郎で教えるのであれば,組織も桃太郎で教える。

ただし,今回の「おおいた起業体験プログラム」では,それぞれの都市から参加する高校生が少人数であること,友人同士で基本グループ内でのコミュニケーションが円滑に取れていることを前提にしているので,組織に関する内容は軽めで良いとあらかじめ指示していた。それでも,DISC分析のようにある種の性格診断テストは盛り上がる。

それでも,Aさんの緊張は伝わる。どうしても自信がないと文章が言い切れない。「〜の感じ」とか,「〜だと思います」とぼかす表現が続くことになる。やはり普段は明るく振る舞っていても,いざ授業をするとなると緊張する。よく分かる。が,教壇に立つ以上は自信を持って授業をして欲しい。休憩時間の間にそうしたメッセージを送る。

計画は比較的スムーズに:ツボを押さえて理解が進む

続いて会計の授業に。このプログラムはアントレプレナーシップを発揮する舞台として実際に販売する機会を設けている。しかも,それを福岡で行う。今回プログラムに参加した高校生たちも一度や二度は来たことがあるが,自分たちで商売をするとなるとまた感覚が異なるだろう。自分たちが目利きした地元の商品を福岡で売る。どうもピンとこない様子。

いよいよ会計のお話に。

それでもここまでわずか1回の授業と1回のグループワークでしか,しかもオンラインでしか話をしたことがないのに,高校生は元気いっぱいでテンションが高い。大学生もそれにつられて授業は熱を帯びて進んでいく。

なぜ利益が必要なのか。なぜ会計なのか。

「スプラウト」では会計を単に計算技術として教えるのではなく,その目的から押さえていく。初回講義では私から「付加価値の創造と分配の重要性」について話をしているが,今回はそれをもとに具体的な話をしていく。

通常の企業ではゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)があるから,付加価値を最大化し,利益を残すことによってそれが実現する。今回のマルシェは1回限りだけれども「しっかり儲けることが大事」だと教える。儲けることで,わたしたちの生活が保証され,地域が潤うのだと改めて伝える。

そして,それを実現するための方策として経営戦略との連携について話す。要するに競争戦略の話。他社との差別化を図り,一定の売価でも顧客が買いたいと思うような仕掛けをする「差別化戦略」と,圧倒的な低価格で量を販売する薄利多売で一定程度の利益を獲得しようとする「コストリーダーシップ戦略」を簡単な引き算だけで教えていく。ここで事業活動が単に「販売競争」ではなく,「自分自身の持つ価値観の反映」であることに気づくとなお良いのだろう。それを企業活動と地域で住む自分がどう暮らしていくかと結びつける仕掛けがこのプログラムの肝となる。

それを理解するために学生が用意したグループワークは2つ。

1つは一定の条件でカフェを経営するというシミュレーション

1つは,今年の女子商での授業でお目見えした「カフェのシミュレーションワーク」である。できるだけ言葉を易しくしながら(損益分岐点分析の話に持っていかずに),エッセンスを教えていくワーク。そして,売上高=客単価✕販売個数であることをベースにどのような商品を提供するかを考える内容になっている。

ここでもそれぞれの土地柄を反映した内容になっていて,ある都市ではサンドイッチセットを単価850円で販売しようとすれば,ある歳の高校生はジューススタンドで単価は安いけど,高校生が買いやすく,多くの販売個数を狙えるようなものを提案していた。また,ラテとパンケーキで1,450円という高めの提案をするグループも。多分にその都市にあるカフェや(恐らく親に連れて行かれているであろう)飲食店の影響を受けているようにも見えるが,複数の大学生のサポートを受けながら,柔軟な発想を出してくる高校生たち。15分のワークは盛り上がりに盛り上がっていたようだ。

2つめは「dot.マルシェ」での販売計画

2つめはこの学びを活かして「dot.マルシェ」での販売計画について。何をどのようにして売るかについては,各都市の状況もあるのでお任せとしているが,あと1ヶ月の間で仕入業者との交渉,仕入個数,単価の決定,POPの作成などやることは多い。それもあってできるだけ早く決めていこうという狙い。

ここでも20分のワークがあっという間に進む。何を売るかは当日までのお楽しみとして頂いて,早くもそれぞれの地域の特色が如実に表れている。あいにく単価の設定まではまだ進まなかったが,何をどう売っていくかだけでもグループワークは大盛りあがり。しかも,しっかりとそれぞれの地域(高校)が今回のマルシェに向けてテーマを設定していて,理念から戦略,計画へと落とし込もうという意思が見られたことは素晴らしいと感じた。いずれも差別化戦略を採りたいというのもなかなか宜しい。これだけでも今回のプログラムで伝えたいメッセージが伝わっている感がある(自己満足)。

今回の授業のメッセージ

こうして今回の2時間半の講義は終了。たった2回ではあったが,少なくとも授業においては手応えを感じられる内容になった。あとはマルシェまでの1ヶ月でどこまで詰めて,当日を迎えることができるか。計画をできるだけ論理的に詰めた上で,当日お客様との接点でしっかりと売り切ることができるか。ここは大学生の創業体験プログラムと同じことでもあるし,どこの地域でも恥ずかしがって目標にコミットできない人も出てくるので,コミュニケーションを取りながら万全な体制で迎えられるようにしたいですね。

ふりかえり

普段は4回50分8コマ(400分)で行う内容を2回2時間半(300分)で行った「おおいた起業体験プログラム」の講義がこれにて終了。普段の対面講義に向けた準備に比べるとあっさりしていて,淡々と講義が行われてしまうのかなと思っていたが,バトンを引き継いだ2年生3人がしっかりと準備をするとともに,dot.インターンや大分在住の大学生たち,現地社会人メンターの皆さんのサポートを受けながら,かなりしっかりとした高校生たちのおかげもあって,和気藹々とそれなりに盛り上がった授業になったようだ。

とりわけ,日田の高校生4人は,校長先生のお取り計らいもあって今回福岡まで来て現地を視察する機会にも恵まれた。残念ながら私用があって同席できなかったが,メンターからは「今日の福岡は彼女たちはかなりの学びになったと感じてます」と端的なコメントでありながらも充実した訪問だった様子が伺えた。恐らく高校生にしても,「遊びに来る場所」ではなく,「商売というチャレンジをする場所」として天神という街を見たことはないだろうから,彼女たちなりに考えることがたくさんあるのだろう。まだ何も始まっていないし,どんな結果になるかもわからないのだが,始まる前から期待感に満ち溢れている。

特に,豊後大野から参加してくれている3人は「わたしたちがこうやって参加して何かを持ち帰ることで後輩たちにも学ぶ機会を作れる」のだと,このプログラムが自分たちだけでなく,後輩たちにとっての学びの機会創出につながるという意識を持ってくれている。その裏にはメンターとの関わりもあるのだろうが,こうして地域に暮らす高校生が,そこで仕事を創る大人たちやオンラインの向こうにいる大学生から学べる機会を創れているのだとしたら喜ばしい。願わくはこの機会が彼・彼女たちに何かをもたらすキッカケになれば良いのだが。

となると,わたしたちにできることは当日のマルシェに向けた集客。なかなかこのマルシェを目掛けて来てくださるお客様はいないだろうから,dot.に併設されたカフェに来たお客様,あるいはdot.でちょっと仕事でもしようかと思った人をうまく捕まえる仕掛けが必要になりそうだ。SNSでも告知はしていくとして,大学生ができるサポートも限られているだろうから,アイデアを捻り出して「参加してよかった」と思ってもらえるように当日までの準備を進めていきたいですね。

というわけで,読者の皆さん。2月10日と11日は福岡・天神の「dot.」で開催される「dot.マルシェ」(仮称)に足をお運びください!

「dot.マルシェ」(仮称) 2024年2月10日-11日開催
・時間:2月10日(土)13:00-17:00 / 2月11日(日)11:00-17:00〔予定〕
・場所:福岡市中央区大名1丁目15−35 FPG links DAIMYOⅢ 2階


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