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[アーティスト田中拓馬インタビュー2] 一番うまいのはレンブラント!

このページは、画家・アーティストの田中拓馬のインタビューの2回目です。前回のインタビューでは、レンブラントを高く評価した拓馬くんですが、今回はそのレンブラントについて聞いていきたいと思います。
(前回の記事は、記事一覧からご覧ください。)

今回の内容
1.レンブラントの作品は歴史的産物!
2.生前に一番成功した作家!?
3.“背景知識”がなくてもすごい!
4.レンブラントの技術とは?

 ‐ 拓馬くんはレンブラントのことを高く評価しているわけだね。
(※ [レンブラント・ファン・レイン] 17世紀オランダの画家。バロック絵画を代表する画家の一人。代表作「夜警」など。)

拓馬 ただ、レンブラントの作品は歴史的産物だよね。つまり、当時の時代状況を踏まえたうえで描かれた作品だから、今見ると分からないところもあるよね。見る人によっては、「古典の絵でしょ」「昔の貴族をかいてるだけでしょ、うまいね」で終わっちゃうんですよ。それは背景を知らないからだね。あれはだから作品はツルっとしてないけど、背景はツルっとしているんですよ。(※)
(※ “ツルっとしている”については前回のインタビューを見てください。)
 ー それはどういうこと?
拓馬 例えば貴族のナントカさんを描きましたっていわれても、こっちはそのナントカさんを知らないわけじゃない。だから面白くないという人はいるかもしれない。
 ー そうかもね。
拓馬 国立西洋美術館に行っても、名画がたくさんありますよ。でもあれ見ても、背景は分かんないんだよね。あれが、あの技術で、例えば誰でもいいけど、北野武が描いてあったりさ、それを観たらすごく良いと感じると思うよ。
 ー なるほど。作品にどういうストーリーを感じるかということかな。

 ー でも、古典が面白くないって言っても、技術だけを見に行くのもありじゃないかな。少なくとも、拓馬くんにとってはそれだけの価値があるということなんでしょ?
拓馬 まあそうだね。僕はレンブラントが一番うまいと思うよ、実際の油絵の表現で行ったら。他にももちろんすごい人はいるけど、ダ・ヴィンチ(※)とか色々いるけど。
(※ 言わずと知れたレオナルド・ダ・ヴィンチのことです。ルネサンス期を代表する万能の芸術家。)
拓馬 レンブラントの何がすごいかっていうと、生きている間にあそこまで活躍できた画家って他にいないんじゃないかな。まあレンブラントの師匠との関係とかもあってのことなんだけどね。レンブラントは、二十歳くらいの時にヨーロッパ中に名前が鳴り響いて、王侯貴族から仕事の依頼がたくさん来たんですよ。それで、あんまり稼ぎすぎたから酒飲んでお金を使いすぎておかしくなっちゃってたらしい。
 ー そうなんだ。
拓馬 ダ・ヴィンチは王様の城の横の別の城をもらったって聞いたことがあるけど、でも時間はかかっているからね。まあダ・ヴィンチは他のこともやっている分、絵に関しては成功が遅れたかもしれないけどね。レンブラントは絵に集中したから早かったのかもしれないね。
 ー なるほどね。
拓馬 レンブラントでいうと、僕はまだ直接は見てないんだけど、「夜警」っていう教科書に載っている作品があるじゃないですか。あれはすごいと思うね。あれに匹敵するものをダ・ヴィンチが残したかっていうと、「最後の晩餐」になると思うけど(あれは見に行こうとして入場制限のせいで見られなかったんだけど)、確かにあれはあれですごい。どっちの方がすごいって決められないかもしれないけど、「最後の晩餐」の方は、キリスト教に関するテーマだから思い入れがある人もたくさんいるわけですよ。つまり、背景知識は多いわけです。
 ー レンブラントは違うわけね?
拓馬 レンブラントの「夜警」に関しては、確か向こうの商工会かなんかの自警団からの依頼で、作品の背景がないじゃない、商工会だか自警団だか言ってもこっちは知らないじゃん。でも、背景なしであの作品だけでもすごいと感じさせるんですよ。そこがすごいところだね。作品だけでパンチが来るというのは、いい作品の証拠なんですよ。

 ー そこは、でも、並の作品のレンブラントの作品は、具体的にはなにが違うんだろうね。
拓馬 技術だよね。めちゃくちゃうまいんだよ、レンブラントは。
 ー でも技術がすごいってなんなんだろう。そっくりに書くのが技術ってわけじゃないんでしょう?
拓馬 つまりね、レンブラントにももちろん駄作はあるんだけど、力が入っているときのレンブラントはすごいよね。レンブラントの絵ってね、遠くから見ても分かるんですよ。あの当時の絵ってみんな個性がないんですよ、基本的には。肖像画を観たら嫌気がさすというか、また同じような絵が出てきちゃったなという感じなんだけど、レンブラントの絵だけは遠くから見ても分かるんだもん、あ、レンブラントの絵だって。
 ー それはすごいね。
拓馬 怖いぐらいだよね。もちろん、こっちがレンブラントの作品をある程度見ているからかもしれないけど、それでも見たことのない絵を見て、これはレンブラントだってわかるってすごいと思うよ。
 ー それは何の要素が違うのかな。
拓馬 何の要素なんだろうね。なにか乗り移ってるんじゃないんですか(笑)
 ー 技術論にならなくてオカルトになってしまった(笑)
拓馬 多分こういうことなんだよ。絵の世界って、化学に近いところがあって、どの絵の具とどの絵の具を混ぜたらどういう色になるとか、どれくらいの厚みの絵の具でどういう効果になるとか、そういうことが技術なんですね。そして、レンブラントはそういう研究が厚い。
 ー 絵の具の特徴や効果をよく理解しているってことだね。
拓馬 だから、普通のさらっとした絵よりも、厚みがあって、テクスチャもありながら陰影を使って上手く表現出来るんだと思う。
 - なるほどねえ。
拓馬 こういうのは、本当は実物を見ながら話せれば一番いいんだろうけどね。ネットの画像とか画集とか見ていても分からないからね、厚みとかは。
 - 確かに。じゃあ拓馬くんが大成功してレンブラントを1枚買ってください(笑)
田中 (笑)いやいや。
 - 将来、田中拓馬美術館ができる時には、田中拓馬が評価する絵とか言ってレンブラントを飾って(笑) 
田中 (笑)まあでも、レンブラントはすごいと思うよ、本当に。

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今日はここまでです。[アーティスト田中拓馬インタビュー]を最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は、拓馬くんが「騙す事はそもそも悪か?」というテーマで話してくれるそうです。(変更の可能性もあります。)インタビュアーもまだどんな話になるかわかっていません。楽しみです。更新は来週末予定、皆様もぜひお楽しみにお待ちください!

これまでのインタビュー記事はこちらからご覧ください。

田中拓馬略歴
1977年生まれ。埼玉県立浦和高校、早稲田大学卒。四谷アート・ステュディウムで岡﨑乾二郎氏のもとアートを学ぶ。ニューヨーク、上海、台湾、シンガポール、東京のギャラリーで作品が扱われ、世界各都市の展示会、オークションに参加。2018年イギリス国立アルスター博物館に作品が収蔵される。今までに売った絵の枚数は1000点以上。
田中拓馬公式サイトはこちら<http://tanakatakuma.com/>
聞き手:内田淳
1977年生まれ。男性。埼玉県立浦和高校中退。慶應義塾大学大学院修了(修士)。工房ムジカ所属。現代詩、短歌、俳句を中心とした総合文芸誌<大衆文芸ムジカ>の編集に携わる。学生時代は認知科学、人工知能の研究を行う。その後、仕事の傍らにさまざまな市民活動、社会運動に関わることで、社会システムと思想との関係の重要性を認識し、その観点からアートを社会や人々の暮らしの中ににどのように位置づけるべきか、その再定義を試みている。田中拓馬とは高校時代からの友人であり、初期から作品を見続けている。

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今回の見出し画像:「HELLO JAPAN」(作品の一部のみ)
レンブラントとはまったく関係がありません。コラージュを用いたイマジネーションの豊かさが感じられる作品。

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