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[アーティスト田中拓馬インタビュー1] うどんみたいな絵はだめだ!?

このページは、画家・アーティストの田中拓馬のインタビューの最初の記事です。これから続々と記事が追加されますので、お楽しみに!
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今回の内容
1.ラッセンはツルっとしているから飽きる!?
2.“ツルっとしている”ってなに?
3.ツルっとしてないのはレンブラント!
4.現代アートはツルっとしているのが多い! だけど…
5.田中拓馬はツルっとしてないものを描きたい?

- 今日は、拓馬くんにアートについて語って欲しいんだよね。
拓馬 いきなり語ってくれって言われてもね(笑) 何かテーマがあればね。
- じゃあ、例えば、君の作品はインテリアとしてはどうだと思う?
拓馬 インテリアなら、ラッセン(※)の方が分かりやすいでしょ。
- ああ、そういう評価なのね。
(※ [クリスチャン・ラッセン]  ハワイの画家。イルカなどが描かれた作品で、バブル時代の日本でベストセラー画家となった。)

拓馬 まあ僕が自分の部屋にラッセンの絵を飾ってたら笑っちゃうけどね(笑)
ー (笑)それは大笑いだね。衝撃的だ。
拓馬 それはないけどね(笑) ラッセンはね、飽きちゃうんだよね、悪いけどね。ラッセンを悪く言うわけではないんだけど、と言いつつ悪く言うんだけどさ(笑)、分かりやすすぎるんだよ。
- ほお。
拓馬 例えば、いつもご飯作ってくれる女の子がいて、その子がさ、いつもおいしいご飯を作ってくれたら飽きるじゃないですか。たまに失敗したりさ、いろいろありながら、頑張ってる姿を見たら、いいなと思うかもしれないけどさ。毎日同じご飯だったら面白くないと思うんだよね。

- そのラッセンが飽きるっていうのは、ラッセンの一連のシリーズについての話なの? 一枚の作品について?
拓馬 ラッセンは一連のシリーズも一枚の作品も、実はあんまり差がないんだよ。イルカが出てきて同じような構図で海の中を潜ってて、みたいなのが多いんだよ。
- そうすると、1枚の絵が飾ってあります、という時に、それがラッセンなら毎日観ていたら飽きると。じゃあ、毎日見ていても飽きない作品ってあるのかな?
拓馬 なかなかないんじゃない。ただ、飽きやすいものと飽きにくいものはあると思うよ。ラッセンはツルっとしているから、飽きやすいと思う。人がアート作品を観るときに、微妙な感じをとらえるじゃない。その微妙な感じを与えるのは、油絵とか、特殊なテクスチャのものとかの方が多いと思う。
- なるほどね。
拓馬 印刷ものみたいなツルっとしたものは、味わいがないというか、うどんを喰ってるようなものなんだよ。
- うどんはおいしいじゃないか(笑) 
拓馬 うどんはいいけどさ、ツルっとしてるじゃない(笑)
- ラッセンの悪口より、うどんの悪口の方が問題だよ。うどんは飽きるとかいったら、うどん好きに怒られるよ(笑)
拓馬 (笑)うどんが飽きるわけじゃないけど、ツルっとしてるとだめなんだよ。

- まあ、要するに、典型的なパターンからのずれが全然なかったら、いつもの奴かって思っちゃうっていう、そういうことでしょ。
拓馬 そういうことだね。毎回同じものだとつまんないじゃない。ちょっと違ったりすると、あれっと思うけど。そういうものを感じられるものが良い作品だと思うよね。
- なるほどね。引っ掛かりがあるという感じかな。
拓馬 レンブラント(※)の作品なんか見ていると、意外に小さい作品でも、そういう細かい違いというか、パターンから壊してあるんで、素人が書いたものと全然違ってくるよね。
- ああ、なるほど。
拓馬 他の古典の作家もそうだけど、特にレンブラントにそれを感じるね。
- やっぱりレンブラントは大きな存在なんだね。そうか。
(※ [レンブラント・ファン・レイン] 17世紀オランダの画家。バロック絵画を代表する画家の一人。代表作「夜警」など。)

拓馬 それが現代アートになると、どちらかというとツルっとした作品が多いし、古典とはちょっと違うかなと思うね。
- それは面白いね。現代アートの文脈では、ツルっとしているかどうかは、評価とかに関わらないのかな。
拓馬 例えばウォーホール(※)なんかだと、作品はツルっとしてるけど、やったことは別というかね。あれはやっぱり歴史的な意義があるんじゃないですか。だけど、どっちの方が価値があるのかは僕の中でもはっきりしてない。
- なるほど。現代アートだと、作品そのものというよりコンセプトで勝負しているところがあるよね。
拓馬 そうだね。色んなところで勝負してるんじゃないかな。
(※ [アンディ・ウォーホール] アメリカの画家・版画家・芸術家でポップアートの旗手。32個の缶詰だけが描かれた「キャンベルのスープ缶」などの作品が有名。)

- じゃあ君はツルっとしてないものを目指しているの?
拓馬 僕が自分で目指しているかは別にして、ツルっとしたものを好きではないね。
- ああ、好みとして。
拓馬 もちろん、僕もできればツルっとしてないものを描きたいけど、口で言うほど簡単じゃない。ここは、技術的なところだと思う。
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今日はここまでです。[アーティスト田中拓馬インタビュー]を最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は、文中でも出てきた拓馬くんが一番うまいと思う画家について語ってもらおうと思います。どうぞお楽しみに!

田中拓馬略歴
1977年生まれ。埼玉県立浦和高校、早稲田大学卒。四谷アート・ステュディウムで岡﨑乾二郎氏のもとアートを学ぶ。ニューヨーク、上海、台湾、シンガポール、東京のギャラリーで作品が扱われ、世界各都市の展示会、オークションに参加。2018年イギリス国立アルスター博物館に作品が収蔵される。今までに売った絵の枚数は1000点以上。
田中拓馬公式サイトはこちら<http://tanakatakuma.com/>
聞き手:内田淳
1977年生まれ。男性。埼玉県立浦和高校中退。慶應義塾大学大学院修了(修士)。工房ムジカ所属。現代詩、短歌、俳句を中心とした総合文芸誌<大衆文芸ムジカ>の編集に携わる。学生時代は認知科学、人工知能の研究を行う。その後、仕事の傍らにさまざまな市民活動、社会運動に関わることで、社会システムと思想との関係の重要性を認識し、その観点からアートを社会や人々の暮らしの中ににどのように位置づけるべきか、その再定義を試みている。田中拓馬とは高校時代からの友人であり、初期から作品を見続けている。

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今回の見出し画像:「堕天使」(作品の一部のみ)
始めてみた時に、発想の面白さにびっくりしました。現在は国内の某美術館に収蔵されています。

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