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時間旅行社ネットワーク:わたしたちの「物語」(1)

こんにちは。
一般社団法人時間旅行社ネットワーク統括研究開発本部長の井手といいます。大学の教員をする傍ら、ボランティアでまちづくりや世代間交流イベントを行っています。

一般社団法人「時間旅行社ネットワーク」。
変わった会社名だな、と思う方もおられるでしょう。

この会社名に込められた「思い」や「願い」などをみなさまにお伝えしようと、まずは、ここに至るまでのわたしたちの「物語」をつづりたいと思います。

取り組みのスタート(2014〜)

わたしたちの取り組みのスタートは、10年前にさかのぼります。

私は、地元郷土史家や地域住民の方々とともに、私の故郷である鹿児島県垂水市に戦時中のわずかな期間存在した造船所に関する歴史の掘り起こしや、自分自身が育った商店街・本町(ほんまち)の歴史をはじめとするコミュニティ・デジタルアーカイブの作成、さらに、SNS上で「垂水時間旅行社」を立ち上げました。

当時を知るお年寄りの記憶をたどりながら、郷土史家さんが現地確認をする様子
住民有志で掘り起こした新たな歴史を地元の人々に発信する「シンポジウム」の開催
(「海潟造船所シンポジウム」2015.12, 垂水市協和公民館)

【参考】
垂水時間旅行社(Facebookページ)
垂水時間旅行社コミュニティデジタルアーカイブ「たるみずアーカイブ」

垂水時間旅行社のコミュニティデジタルアーカイブ「たるみずアーカイブ」
(開発にはデジタル地球儀はEukarya社さんのRe:Earthを利用しています)

取り組むきっかけ(2011.3.11〜)


きっかけは2011年3月11日にテレビ越しに見た、「あの」光景です。
歴史ある神社、古い木造家屋、ほんの数分前まで生活が動いていた街…全てを一瞬で飲み込み、なきものにしていく自然の猛威への恐怖。

自分にとって故郷は決していい思い出のある場所ではありませんでした。が、たったひとつの「わたしの故郷」は、明日もあるとは限らない大切な場所なのだ!と気づいたのです。

そこからはじまったのが、今まではっきりと共有されていなかった歴史的事実の掘り起こし、そして、どこからでもアクセスできるデジタル空間で、誰もが「故郷」を共有できる環境をつくること、でした。

「世代間交流」を重視していった理由

地域の歴史をたずねていく過程では、歴史書にも教科書にもない、生き生きとした当時の日常の様子の記憶を語るお年寄りとの出会いが、たくさんありました。

「聞き書き」をして、その記憶を証明する資料を探しに図書館や公文書館に通い続けて「記憶」と「記録」とをつなげていく作業の日々は、楽ではない地道な作業ではありましたが、歴史研究に携わる者としてはとてもやり甲斐のあることでした。

一方で、残念なこともありました。

お話を伺う予定の方が急に亡くなられたり、病気になってお会いできなくなったり…。「いつかそのうち」という悠長な構え方をしていては、その人の貴重な記憶と出会う機会を逸してしまう。そんな焦りを覚えました。

私は教育学部に勤務していますので、教育学者・教師教育者としての側面も併せ持っています。この立場から考えると、子どもたちにその大切な「知識」と出会ってもらうには、子どもたちと一緒に自分がやっている掘り起こしを行い、子どもたちに歴史を「知識」ではなく「体験」として出会ってもらう場面をつくっていきたい、と思うようになりました。

こうして「お年寄りと子どもとの世代間交流を通した『学び』の機会をつくる」という形がうまれていったのです。

(次回につづきます)


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