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Dusty Storeroom

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オリジナルの小説を集めたマガジンです。意味は「埃っぽい書庫」。日の当たらない場所でも、文章を読んで楽しめるようにという思いと、あまり明るい作風のものが多くないことから名づけました…
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2016年7月の記事一覧

Rain Through Umbrella

ぽつり。ぽつり。ざー。ざー。

湿度の高まりとともに気圧が低まり、雨が落ちる。

部活動の練習が中止になって喜ぶ学生や、

傘を持ってきていない学生から漏れるため息、

必死に雨避けを探しながら小走りで移動する社会人。

雨を物ともせず颯爽と自転車で駆け抜ける雨合羽姿の用務員。

止むのを待ちながら与太話に花を咲かせる女子会勢。

様々な顔が見られるこの街で、一人傘を差し歩く。

雨は嫌いじゃない

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Home Town

Home Town

空港から電車へ乗り最寄り駅に降り立った瞬間に感じる、照りつける日差し。

この場所で浴びると、炎天下に晒され汗と血と涙を流した

あの時を巡るような心持ちになる。

電車の中には、精悍な顔つきで参考書をめくる見慣れた制服の高校生がいた。

迫り来る勝負の時に備え、虎視眈々と刀を研ぎ続ける様は

自分の足跡を振り返るような気持ちと、応援の言葉が湧き上がってくる。

最寄り駅からは、バスに揺られる。

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