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企業風土は「上司のマネ」で作られている

こんにちは。

多くの方が連休明けを迎えられていると思います。
東京はようやくナントカキャンペーンの対象になり、この夏のストレスを発散すべく、各地では多くの観光客でにぎわったようです。

ただ、その一方で、都市だろうと地方だろうとそんな事情とは関係なく、リスクと背中合わせで働き続けるエッセンシャルワーカーの皆さんに、あまりスポットが当たらなくなっているのが少し残念です。

かくいう私も、熱海の保養所で仕事や創作活動をしている身ですが、あらためて、こうした方々に心からの敬意と感謝を述べたいと思います。


さて今回は、企業風土改革を専門とする私が、
すごく簡単に「企業風土とは何か?」を説明できないか
と、考えた内容を共有したいと思います。

私なりに「そういうことかもしれない」との思いにいたったきっかけは、
当社の保養所からすぐのところにある海浜公園で、ボンヤリ釣りをしていたときのことでした。
この日はたまたま息子たちを連れてやってきていたのですが、そこで、次男がブツブツと文句を言っているのです。
聞いてみれば、釣り客のマナーの悪さについて、でした。


子供は身近な大人のマネをする

「いい歳した大人が、自分が持ち込んだ釣り糸とかビール缶を、そのまま置いていくなんて信じられない」とのことです。
そんなこと気にも留めず、淡々と釣りに興じる長男とは違い、彼の正義感はかなり強く、
「中二の俺ですら、持ってきたものは全部持ち帰ってるのに」と怒り心頭。

ふだんから私は、子供は身近な大人のマネをする、と思ってきました。
ですので、自分なりに子供たちにマネされても恥ずかしくないような振る舞いを、できるかぎり心がけています。
マナーの悪い大人はいっぱいいますが、誰も「自分が後世に対して恥ずかしいことをしている」とは思うことはないのでしょう。

しかし、この原理はマナーに限ったことではない気がしました。
さらに発展して考えるべき余地があります。


部下も上司のマネをする?

それは、「部下も、上司のマネをする」ということも言えるのではないかと。いえ、きっとそうに違いありません。

企業風土を説明するとき、私は「システムコンテクスト」という言葉をよく使います。

コンテクストとは「文脈」です。
企業にとって、目に見える成果を決める、目に見えないものすべてが、このコンテクストに含まれています。
目に見える成果とは、なにも業績や従業員数、賞与ばかりではありません。
事故、不祥事など、企業にとっては「問題」とされるものも、すべて
成果です。

そうした成果を、間接的、直接的につくる「ふだんは目に見えない要素」が、企業風土となっています。
目に見えないものではありますが、感じることはできています。
それは例えば、
・社是や企業理念
・職場のパワーバランス
・個々のモチベーション
・エンゲージメント
・ローカルルール
・個々の好み、信念、価値観
・暗黙のルールや独自の共通言語

などなど、普段は気に留めることはあまりないようなものです。

しかし、こうしたさまざまな目に見えない要素が絡み合って、企業風土を形成し、それが要因となって企業の成果を決定づけます。

つまり、企業風土と企業業績は密接に関係しており、
それらの遠因となっているのが、普段私たちが感じている風土の構成要素なのです。

新入社員や中途入社員がまず洗礼を受けるのは、この「一見わけのわからない独特の風土」です。
どんな雰囲気のときに、どんな言葉使われ、どんなパワーバランスやレポートラインでチームの動くのか、というコンテクストに慣れることが優先されます。

それを無視して成果を挙げたとしても、多くの日本企業では「よそ者がたまたまうまくいった」としか見られません。
実際、転職の多い私も、過去務めた企業で、そんな目で見られていたのを実感していました。

つまり、その企業の独特の風土に、良かれ悪かれ「染まって」しまわないかぎり、本当の意味では、歓迎されないのです。


コンテクストとは、「私たちが受け入れ、使っている言葉や行為」


では、ふだんは目に見えることがなく、でも確実に感じていることができているコンテクストは、もっと言えば、

「私たちが受け入れ、使っている言葉や行為」
と言えます。

何げなく発している、その一言が、企業風土を作っていると思っても良いと思います。
私も含め多くの人は、自分の口から出てくる言葉の重みを、深くは考えないで使っていると思います。

ここで、最初の考察に行き当たったわけです。

つまり、部下は、上司のマネをするのです。
それが風土を形成するのです。風土が成果をつくるのです。


いかがでしょうか?

企業にはそれぞれ、崇高な理念やミッションがあります。
それらはなにも、思いつきや流行りで作られたモノではないでしょう。

会社はこうあってほしい。
社員はこうあってほしい。
そうすれば、企業として社会に貢献し、利益をあげつづけていける。

そういう思いがあって、作られているわけです。

しかし、いったいどれほどの人が、忙しい日常でそれらを意識しているでしょうか。
会社全体がハラスメント、メンタルヘルスなどに振り舞わされる日常が、現実に近いのではないでしょうか。

目の前の現実にばかり目がいくのは、ある意味仕方のないことかもしれません。
しかし、エグゼクティブ、マネージャーである自分が図らずも、その悪しき風土の一端を担ってしまっていたとしたら…

最初はピュアな新入社員や中途入社員たちが、いつの間にか「慣性」に流されるように染まるのは、その「一言」のせいだとしたら…

それはつまり、無意識から、いや無自覚から発する、不用意なそのひとことの積み重ねなのです。

部下は上司のマネをする。
そして、いつの間にかそれが組織のコンテクストになる。
コンテクストが風土を形成し、成果を決める。


その一言を吟味する

風土改革とは、究極をいえば「その一言を吟味する」ところから始まる取り組みとも言えます。

企業風土は「上司のマネ」で作られている

自分の口からでる言葉に、よくよく注意を払ってみたいものです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)

わずかな言葉で
多くを理解させるのが、
大人の特質であるなら、

小人はこれとは逆に、
実に多くの言葉をしゃべりたてながら、
相手に何一つ伝えないという
天与の才能を持っている。


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