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「トヨタ物語」この物語に副題はいらない事実の書。

 こんにちは。オオハシです。 夏休み期間中、極力時間を確保してnoteなど進めています。実はこちらの本は、それこそ春の長期休暇の期間で買って読み切っていたはずが、note化ができていないまま積読状態になってしまっていたところでした。なかなか読むこととこうしてまとめを作る作業は一気にやらないと日付が経過してしまいますね。それではいってみましょう。


トヨタ物語

野地 秩嘉 著   
2021年12月の本
 
 私は2019年よりトヨタ系部品メーカー様の営業担当をしており、これまでもいくつかのトヨタ関連の本は読んできました。お客様の考え方の根底にあるものを知ることにより、真の意味でお客様のためになれるご提案ができると考えてるからです。「トヨタの未来生きるか死ぬか」、「豊田章男」、「MaaS」「Beyond MaaS」そして昨年では「This is LEAN」、そして古くは「ザ・ゴール」「ザ・ゴール2」ほか。 ほかにも数多くあるが紙面の都合上この程度にしておきます。

自分が名古屋出身であるということもあって、三河の一ベンチャーが世界のトヨタになっていくまでのストーリーは純粋に読み物として面白いだけれど、それと同時に著者の徹底的な調査に裏付けられている厚み、が、真に重厚さを与えていると感じました。事実を精緻に積み上げた長編ドキュメンタリー、ただただ敬意を払いたいと思います。

最近ひょんな機会で「アメリカでの丸亀製麺」の事例を読んだことがあり、トヨタ生産方式というか大野耐一さんが「考える作業者を育てる」とおっしゃられたことがものすごく身に染みました。(アメリカの丸亀製麺は一杯のうどんを作るのに12人もの人をかけて分業しているという話)

 
 これまで複数の本を読んできたこともあってトヨタの歴史に残された数多くの方々のお名前が既視感があり、それぞれの方々が本当に生き生きと描かれていました。彼らの考え方や行動を読むだけでも勉強になるわけだけれど、せっかくなので個人的に気になった部分を抜粋してみることによって自分としての理解を深めたいと思います。(文量が多い点はご容赦ください)

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考えて仕事をしろ

 P27 「考えることを楽しいと思う作業者には向いている。現場でカイゼンできることはアメリカの作業者にはなかった経験だから。ただし、時間を切り売りするだけの作業者には適応できないだろう。これまでの生産方式は、人間に考えなくともいい、手や身体を動かしておけばいいというシステムでした。しかしオーノさんは考えて仕事をしろと言ったわけです。それがシステムの特徴です。」

トヨタ物語 P27

関連会社の原型

P103 飛行機用エンジンを作るためには工作機械がいる。そこで、すでに自動車用の工作機械を作っていた豊田自動織機内の工機工場を独立させ、豊田工機という会社にした。豊田工機は飛行機、自動車用部品を作る工作機械会社となり、2006年光洋精工と合併、ジェイテクトとなった。トヨタ向けだけでなく、他の自動車会社にも機械類を販売している。こうしてトヨタは戦争中に今も残る関連会社の原型を設立した

トヨタ物語 P103

飛行機の技術者

P139 「国産車が進歩したのは飛行機のエンジニアが入ってきたからだよ。スカイラインのエンジンを作ったのは元ゼロ戦のエンジニアだし、モノコックボディを自動車に持ち込んだのも飛行機の技術者だった。考えてごらん。イギリス、ドイツ、アメリカ、フランス、スウェーデン、イタリア、日本…。飛行機を作った国の自動車と中国、韓国など飛行機を作ったことがない国の自動車はまったく違うんだ。設計思想が違う。それはね、空を飛ぼうと思ったことがない男が作った車なんて、まったく魅力がないからだよ。」

トヨタ物語 P139

考える人間を育てる

P146 「人間は自分がいまやっていることがいちばんいいと思っている。オレがやることは、やつらに『いまやっていることを疑え』ということだろう。それは簡単ではない。そんなことができる人間はなかなかいない。考える人間を作る…。それがオレの仕事だ。」

P178 大野は管理職に「アンドンのひもを引っ張った作業者には、どんな時でも、ありがとうと言え」と命じたのである。
 ランプが黄色に変わる。管理職が飛んでいく。
「すみません、トイレ行ってきます」
 すると、管理職は、「おお、行ってこい。呼んでくれてありがとう」と返事をする。また、作業者が自分のミスで呼んだとしても、それでもなおかつ、呼ばれた上司は「ありがとう」と言わなければならない。
 もし、管理職が「忙しい時に、オレを呼ぶな」とでも言おうものなら、アンドンは無用の長物となってしまう。大野はラインで働く者の心理を深いところまで読んでいた。

P229 「トヨタがやることは、考える人間を育てることだ。上から押しつけても生産性は上がらない。現場からくふうが上がってこなければならない。私の仕事はそれだ。
 また、見ていると、アメリカ人の経営者や管理職は現場に降りてきて、ワーカーと話をすることはない。計画を伝えるだけだ。その点、私らは喜一郎のように現場の作業者と話をしている。みんな平等だ。うちがフォードに勝とうとするなら経営者も作業者もない。みんな一緒に考えることだ。」

トヨタ物語 P146, P178 , P229

かんばん

P262 「できあがった部品にはこのかんばんを付けておく。すると後の工程の人間が取りに来る
 後の工程の人間は部品をもらったらかんばんだけを外して、前の工程に戻す。前の工程は、かんばんが戻ってきたら、そこに書いてある数量だけ部品を作る。部品ができたら、かんばんを付けて後の工程が取りに来るのを待つ。

トヨタ物語 P262

リードタイムを最大限短くして「ジャストインタイム」を実現するために考えられた「かんばん」。 今ではソフトウェア開発での用語にも用いられていたりしますが、もともとはフォードやGM、クライスラーなどに真似をされないよう、試行錯誤で開発されたものです。 また「かんばん」はあくまで手段であり、その運用方法の本質がわかっていないと、という記述もありました。勉強になります。


鈴村さんの涙

P303 張が覚えているのは珍しく鈴村が大野の前で弱音を吐いたことだ。
「大野さん、オレたちは一生懸命、会社のためにやっている。ですが、大野の一派は会社をつぶすと言われました」
 よほど悔しい思いをしたのだろう、鈴村の目には涙が光っていた。大野は「そうか」と鈴村の肩に手をかける。
「鈴村、お前は泣けばそれで済む。しかし、わしはどうすればいいんだ。泣くこともできんぞ」

トヨタ物語 P303

7つのムダ

ひとつ つくりすぎのムダ
ふたつ 手待ちのムダ
三つ 運搬のムダ
四つ 加工そのもののムダ
五つ 在庫のムダ
六つ 動作のムダ
七つ 不良をつくるムダ

トヨタ物語 P309

大野耐一さんがおっしゃられていた概念とのことです。つくりすぎのムダがもっとも悪だというところ、懐かしい20年ぐらい前に 「ザ・ゴール」 を読んだときに非常に感動したことをよく覚えています。ムダを省いて徹底的にコストを削減し、その価格をお客様へ還元する。一挙手一投足、見習っていきたいです。

トヨタ生産方式を定着させる仕事

P316 
 わたし自身、7年の間に70回、トヨタの工場を見学し、ラインを見つめた。では、何かムダを発見できたかと問われたら、まったくできなかったと答えるほかない。ひとつくらい見つけられるんじゃないかと思って、現場に立ったけれど、現実は甘くなかった。いつ見ても、現場のライン作業は同じように見えたし、たとえ、ラインが止まったとしても、そこで何が起こったかは、作業者に聞いてみない限り、まったくわからなかった。
 ある時、生産調査室室長だった二之夕裕美(現・東海理化社長)と一緒に元町工場の組み立てラインを見ていたことがある。
 見学コースからラインを眺めていたのだが、二之夕は突然、立ち止まり、「あそこを変えなきゃ」とつぶやいた。
 えっ、どこですかと訊ねたら、「あの作業者が見えますか?」と言った。
「ほら、彼です。バンパーを取りつけつ前に包装のセロファンを外しているでしょう?」
 確かに、その作業者はいちいちセロファンをはずしてからバンパーを車体に取り付けていた。
「張りついたセロファンをひきはがすのは面倒です。一日に何度もやっていると嫌になる。あれはセロファンを外す工程をどこかに作らなきゃいけない。もしくはセロファンではない包装材に変えることも考えなくてはならない」
 二之夕はラインを一瞥しただけで、問題点を発見し、同時に改善案を考え出し、次の瞬間には部下を呼んで、すぐに実現化するように言い渡していた。もっと言えば、カイゼンが進んでいる現在でさえ、ラインを見つめればムダを発見することができるわけだ。 
 トヨタ生産方式を定着させる仕事とは、つまりこういうことだ。見る目をもったプロが、人がやりにくそうにしているところを探し、ひとつずつ、その場で解決する

トヨタ物語 P316

このシーンはほんとすごいと思いました。そもそも著者の野地さんの7年間で70回以上工場に足を運んだというところもすごいのですが、それこそ一瞥しただけで作業工程におけるムダを見つけて、すぐに改善策を提案できるような人がいる:トヨタ生産方式を定着させる仕事とは、つまりこういうことだ。「見る目をもったプロが、人がやりにくそうにしているところを探し、ひとつずつ、その場で解決する。」 まさにその通りだととても感動しました。また、別件ではございますが、私、東海理化様の担当営業を担っており、二之夕社長にもお会いしたことがございます。ある会議システムのデモを行い操作感を社長にお見せするような機会だったのですが、そのタイミングにおいても初見されたシステムに対して、本質をとらえられた質問をグサリとなされていた事を思い出しました。プロの仕事、というところですね。
さぁ長くなってきましたが次でラストです。


ストップウォッチで仕事のムダとり

P508
 「実際に営業マンの仕事を見ると、お客さんと接している時間は意外に短い。おそらくどんな職種でも一緒ですよ。自分では長く感じているかもしれないけれど、セールストークをしている時間なんてあっという間なんです。
 それには原因があって、ひとつは事務の仕事や車の査定をしている時間が長くなってしまうから、接客の時間が物理的に短くなる
 ある時、私たちがやったのは、接客する時間を最大限に増やすためのサポートでした。接客以外の仕事のムダを切り詰め、余裕のある接客をしてもらうことが目的でした。それが今ではもっと進んでいて、成約率をあげて、見込み客の開拓に時間をかけるといったことまでやっています。」

トヨタ物語 P508

時代はだいぶ新しくなって友山さん(元副社長、現在はトヨタ自動車Executive Fellow) がTPSを販売側に当てはめていった話より抜粋。これものすごく納得感があります。どのくらい納得感があるかというと、実際にストップウォッチで仕事時間を計測し、もう10年以上も自分としてカイゼンを続けてきている、というところです。 さらに言うと、日経DuralというWebマガジンへインタビューされたこともあります。よろしければこちらもご一読いただければ幸いです。

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以上です。

せっかくトヨタ物語を読んで感動した記事だったのですが、終わりが自分のインタビューのオチになってしまってすみません。でも実際に「計測できるものはカイゼンできる」というお話を以前おききしたことがあって、実際に計測・継続してきたらカイゼンできてきた事実はあるので、少しご紹介いたしました。

さて、もう多くの方がお盆休みを終えられ復職されてきていると思います。また時間を見て、読書レビューをアップしていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
また次回お会いできる日を楽しみにしています。

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