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それでも、ロックバンドの物語は続く。「BAND OF FOUR -四節棍-」を観た。

【9/9(金) 「BAND OF FOUR -四節棍-」 @ ぴあアリーナMM】

今回の公演は、昨年末に開催された、ELLEGARDEN、10-FEET、マキシマム ザ ホルモンの対バンツアー「Reunion TOUR 2021 〜Eat music in the same LIVE HOUSE〜」に、BRAHMANを加えた4組で敢行された対バンイベントである。

昨年末のツアーは、タイトルの中に「Reunion(再会)」という言葉が掲げられていたことが象徴しているように、2018年に復活を果たしたELLEGARDENと同じ釜の飯を食ってきた(同じライブハウスの音楽を食ってきた)10-FEET、マキシマム ザ ホルモンによる久々のガチンコ対バンツアーという意味合いが大きなものだった。

しかし、単なる懐古的なツアーだったのかと言えば、もちろんそんなことはなくて、昨年末のツアー初日には、ELLEGARDENが6枚目のアルバムの制作に入ることがアナウンスされた。完成すれば、2006年の5thアルバム『ELEVEN FIRE CRACKERS』以来の新作となる。いつか必ずELLEGARDENの新曲を聴ける日が来ると信じていたからこそ、あの時に発表された「THE BOYS ARE BACK IN THE STUDIO AGAIN TO RECORD OUR 6TH ALUBM」という言葉は、涙が出るほど嬉しいものだった。実際に、今年の2月からロサンゼルスでアルバムの制作が始まり、8月には、細美武士のブログを通して、着実にレコーディングが進行中であることが明かされた。

そうした経緯を踏まえて開催された今回の「BAND OF FOUR -四節棍-」。開催日の9月9日は、ELLEGARDENとリスナーにとって大切な日だ。僕は、この日、必ず何かが起きることを予想していた。この日、細美は、ELLEGARDENの新章にまつわる何かを必ず発信するはずだと信じて会場に向かった。そして、その願望にも似た予想は、見事に的中することになった。


1番手を担ったのは、10-FEET。TAKUMAは「同窓会か、このイベントは。仲良い奴ばっかりや、ついついムキになっちまうぜ。」と語っていて、実際に、まるで2000年代のライブハウス戦国時代さながらのガチンコな熱演を繰り広げてみせた。この夏の新曲「aRIVAL」が放つ鮮烈なロックバイブスには、本当に痺れた。


2番手は、BRAHMAN。MCらしいMCもなく、鬼気迫る熾烈なロックパフォーマンスを次々と展開していく。圧巻だ。"今夜"では、盟友・細美との共演が実現。2人の温かな歌声のハーモニーは、言葉を失うほどに美しいものであった。そして、歌い終えた2人が熱く抱擁し合うシーンにも強く胸を打たれた。


続いて登場したのは、マキシマム ザ ホルモン。普段は、ライブ中にほとんど話さない亮君が、嬉しそうに細美との思い出を語っていて、それぞれのバンドを繋ぐ絆の深さが改めて伝わってきた。もちろん、単なる仲良し同士の戯れ合いといったムードは一切ない。今回は、ホルモン流ポップアンセム"恋のメガラバ"と"恋のスペルマ"をセットリストから外して、全編コッテコテのハードコアな楽曲で最後まで攻めまくってくれた。


そして、3バンドが繋いできた熱きバトンは、ついにELLEGARDENへと託される。約束の唄"supernova"、そして、9月9日に鳴らされることを誰もが待ち望んでいた"No.13"、他にも、"スターフィッシュ"や"Space Sonic"、"The Autumn Song"、"ジダーバグ"、"Make a Wish"などなど、いつまでも色褪せることのない眩いロックアンセムの数々が容赦なく放たれていく。2018年以降、彼らは活動休止する前と同じように、今では当たり前のようにライブを重ねるようになったが、それでも、やはりELLEGARDENのライブはいつだって特別なものだ。改めて、そう強く感じた。

「新曲、聴く?」アンコールを受けてステージに再び現れた細美は、フランクにそう問いかけた。観客は声を出して応えることはできないけれど、それでも満場のフロアが確かにどよめいているのを感じた。そうだ、みんなずっと、この時を待ち侘びていたんだ。「ずっと過去の思い出の中とか、あの時の楽しかったことの中で生きていくわけにはいかないので、今ここから、現役のバンドに戻ります。」という細美の宣言の後に、ついに16年ぶりとなる新曲"Mountain Top"が披露される。広大な大陸のように果てしなく広がっていくロックアンサンブル。年を重ねていく中で増していく憂いや切なさを、偽ることなくありのまま映し出していく等身大の言葉たち。そして、カラッと晴れわたる大空を突き刺すように響くサビの強靭なメロディ。《俺は燃え尽きたい/俺は答えが知りたい/俺は最後の勝負を待ち望んでいる》という覚悟の言葉に滲む切実さに、強く心を揺さぶられた。


今回の4バンドの熱演を観て、そしてELLEGARDENの新曲を聴いて、バンドが続いていくことの深い意義を改めて思い知った。10年以上、20年以上にわたってバンドを続けていくこと自体が非常にタフなことであるにもかかわらず、そしてその上にコロナという逆境が重なっているにもかかわらず、この4バンドは、決して現状維持に満足することなく、自分たちのバンドの、そしてロックシーンの未来を切り拓こうとしている。僕は、これまでに数え切れないほど彼らのライブを観てきたけれど、その上で間違いなく言えるのは、今のライブが一番痺れるし、最もガツンと魂を震わせられる、ということだ。長年にわたり彼らを追いかけ続けているリスナーとして、これほどまでに嬉しいことは他にない。

そして、これからも、いつまでも絶え間なく進化し続ける彼らのロックを、彼らが人生を懸けて磨き続ける渾身のメッセージを、ロックサウンドを、真正面から堂々と受け止められる自分であり続けたいと思った。お互いに年を重ねていく中で否応もなく変わっていってしまうこともあるけれど、それでも、その中で決して失ってはいけない大切なこともあるはず。そうした生きる上での信条を、僕は彼らのロックを通して、彼らの生き様を通して教わってきた。だからこそこれからも、いつまでも現役としてステージに立ち続ける彼らに負けないように、こっちだって懸命に彼らの音楽活動を追いかけ続けていきたい。

今回も、最高のライブをありがとう。




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