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音楽は鳴り止まない。嵐、「約束」の活動休止前ラストライブを振り返る。

【嵐/「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」】

2020年12月31日、この日、嵐の5人は、これまでの21年間の歴史に一つの区切りをつけた。

約2年前から、いつか「この夜」が来ることをずっと分かっていたはずなのに、いざ大晦日を迎えても、そのことをどうしても信じられなかったし、こうして2021年が幕を開けて何日か経った今でも、まだその実感を得られずにいる。

それでも、一つの区切りとなった「あの夜」のことを決して忘れないために、嵐の活動休止前ラストライブの模様を振り返っていきたい。



今回の無観客生配信ライブの会場は、東京ドーム。広大なステージの中央に建てられた超巨大な円柱のセットから、嵐の5人が登場する。

オープニング曲は、"ワイルド アット ハート"。約2年前、活動休止を発表した記者会見においてBGMとして使用されていた楽曲だ。とてもカラフルなポップソングでありながら、同時に、大野智の決断を優しく肯定しているかのようにも聴こえる。


《もしも旅立ちを決めたときは/何も言わないで見送るから/約束なんかは必要ないから/今を生きるだけさ My friend》("ワイルド アット ハート")


今回のライブでは、長年のファンにとっては懐かしの過去曲や、2020年11月にリリースされたアルバム『This is 嵐』に収録された最新曲など、非常にバラエティに富んだ楽曲が次々と披露された。しかしそこには、ある明確な一つのメッセージが貫かれているように思えてならなかった。


《サクラ咲ケ  僕の胸のなかに/芽生えた  名もなき  夢たち/振り向くな  後ろには明日はないから/前を向け》("サクラ咲ケ")


《夢のように続くよ  One more time/キミだけに  キミだけとSHOW TIME》("SHOW TIME")


《嵐の中  闘う友よ  いざ行け/握り締めた手の中には  君の言葉/雨に打たれ  風に吹かれ  僕らは向かう》("GUTS!")


《雨の向こうへ  風の向こうへ  旅は続いていく/今  君の向こうへ  そして僕の向こうへ  道は続いていく》("風の向こうへ")


音楽は鳴り止まない。だからこそ、明日へ、その先の未来へ、「愛」と「希望」を歌い続ける。

この至上のメッセージは、言うまでもなく、嵐の5人が21年間にわたって懸命に体現し続けてきたものである。そしてこの日のセットリストは、そこに込められた5人の強い願いや覚悟を、改めて伝え表してくれるものだった。

そして僕は、嵐の新たな代表曲"Turning Up"のパフォーマンスを観ながら、2021年を迎える次の日から、彼らが活動休止をするとは、やはりどうしても思うことができずにいた。音楽的なトライアルを次々と重ね、《世界中に放て  Turning up with the J-pop!》と歌う彼らは、ここからもっとアクセルを踏み込み、僕たちのJ-POPを更に革新し続けてくれるのではないかとさえ思えた。だからこそ、この配信ライブは、とても不思議で、そしてどうしようもなく切ない時間だった。



中盤も、もちろんバラエティ豊かな楽曲が並んでいたことは大前提だが、嵐の5人の揺るぎない意志は、一貫して貫かれていたように思う。


《めぐりめぐる季節の途中で/何色の明日を描きますか?/強く強く信じ合えたなら/何色の未来が待っていますか?》("明日の記憶")


《永遠を  探しに  行こうなんて言わない/明日も  ずっとその先も  君といたいだけ》("Love Rainbow")


《愛しさ溢れて光キラリ願い/いつまでも消えない輝き両手に/優しさ集めて光キラリ築く時間をずっと/果てしなく歩んでいく》("Step and Go")


活動休止前ラストライブだからこそ、ともすれば、これまでの思い出を振り返る回顧的な内容になってもおかしくなかったはずだ。しかし嵐の5人は、数時間後に活動休止を控えながらも、いつかの未来へ向けて歌い続ける意志を力強く示してくれた。そのことが、何よりも嬉しかった。


中盤を経て、一時的に配信ライブを中断した上で、紅白歌合戦との中継に移行する。嵐の5人はここで、昨年の紅白で初披露した"カイト"を歌った。


《嵐の中をかき分けていく小さなカイトよ/悲しみを越えてどこまでも行こう/そして帰ろう  その糸の繋がった先まで》(”カイト”)


このCメロの歌詞を歌う代わりに、嵐の5人は一人ずつ、テレビの向こうの視聴者に向けて、感謝の言葉を真摯に伝えていった。その一つ一つの言葉たちが、まるで、いつか嵐が再びJ-POPシーンに帰ってくるための「約束」のように思えて、強く胸を打たれた。


そして、いよいよ迎えた最終章。やはり嵐の5人は、今回のライブで一貫して同じメッセージを届け続けてくれていたことを、改めて確信する。


《I'll come running wherever you are/My love for you ain't never gonna change/I'll come running wherever you are/Girl whenever you call my name》(”Whenever You Call”)


《止まった時間は夕暮れ  僕らの未来を照らす/二度と戻れない夜の中で/いつまでも語り続ける  永久と希望の歌を/たとえ今だけと分かっていても》("PIKA ★★ NCHI DOUBLE")


《追いかけて  果てない未来へ繋がる/いつか巡り逢える虹の橋で/同じ夢を見よう》("君のうた")


《ボクらはいつも探してる/でっかい愛とか希望探してる/Everyday!  Everybody!/まだまだ世界は終わらない/いまから始めてみればいいじゃない/Let's get on!  Let's get on Yea!》("A・RA・SHI")


そうだ、まだ終わりではない。今から思えば、嵐の5人は、デビューしたその日からずっと、「音楽は鳴り止まない」という眩いメッセージを届け続けてくれていたのだ。

断言してもいいが、これほどまでに大きな「愛」と「希望」を、20年以上にわたって歌い続けてくれたグループは、広い世界を見渡しても、長い音楽史を振り返っても、嵐の他にいない。彼らの存在の大きさに、改めて圧倒されてしまう。

そして、この日のライブは、いつか嵐の5人が、再び歩み出す未来のための「約束」の時間であったことを再確認する。


そしていよいよライブは、クライマックスへ。最後のMCで届けられた一人一人の誠実な言葉に、僕は何度も心を震わせられた。


櫻井翔

僕たちはきっと、明日以降、来年以降も、けっこう会うと思います。でも個人的には、それは「嵐に似た何か」なんじゃないかなと思っています。なぜならば僕たちは、誰かに喜んでもらうために議論をする時に、誰かに楽しんでもらう準備をしている時に、そして誰かに笑顔を届けることできた時に、初めて胸を張って、嵐と言える気がしているからです。いつかまた、「僕たちが嵐です」と胸を張って言えるその時まで。本当に、21年間ありがとうございました。

大野智

僕は、このメンバー4人と20年以上一緒にいますが、一番思うこと、感謝していることは、人としての人間力、人間性だと僕は思っています。気配り、気遣い、感謝の気持ち。人に良くされたら「ありがとう」を必ず言う。人のことを一番に考えて、行動する。簡単なようで、なかなかできることではないと、僕は思っています。人はすぐ変わります。でも、何も変わらずに、それらを続けてきた4人がいたから、僕は今日までやってこれたんだと、本当に心から思っています。本当にありがとう。僕は明日から、自分のことを考えて、自分の時間を大切に生きてみようと思っています。明日から思ったことをやってみようと思います。またいつか、人のためになれるように。

二宮和也

本当にこういう場所に立てて十分幸せだし、本当に感謝してるんだけれども、もう一つだけわがままを言っていいならば、まだまだツッコミたかったし、もっともっといじりたかったです。それが本音かな。やっぱり僕の言葉は、全て4人に向けた言葉だったし、全てこの4人が生んでくれた言葉だと思っているので。昨日の夜、それを取り上げられちゃうような気がして、妙に浸ったりして、不思議な時間でした。欲深い人間で、すみません。ただ、今日もみんなと会って、リハーサルだろうと大本番だろうと、変わらず楽しめるのは、やっぱり嵐はすごいなと、痛感しました。

相葉雅紀

僕は、何度かメンバーに手紙を書いたことがあります。最初の手紙には「トップになろうね」って書きました。メンバーは、「何がトップか分かんないよね」って、そんな話をいつもしてました。たしかに、僕らのいるこの世界のトップは僕も分かりません。だけど、今日分かったことは、僕を除いた4人のメンバーは、人として、人間として、トップなんだなって。そんなトップの4人と、21年やってこれたのは、僕の宝物です。本当に、心から、嵐でよかったです。そして、あなたたちが嵐のファンで本当によかった。

松本潤

僕にとっても、嵐は夢でした。信じられないほどの素晴らしい夢の数々を一緒に見れて、幸せだなと思います。僕らには叶わなかった夢もあるし、叶って、想像もできなかった景色をいっぱい見てきたから、満足っちゃ、満足。でも、満足できてないこともたくさんある。そんなことを胸に抱えながら、これからも生きていこうと思っています。この21年で培った最高の思い出、最高の経験をもとに、これからも歩いて行こうと思うし、時には5人で飲んで、そんな思い出話をしたいと思うし、みんなともそうなふうに話せる機会ができたらいいなと思っています。いつか、この夢の続きを、できたらいいなと思います。それまで、みなさんお元気で。僕らはそれぞれ一人ずつになるかもしれないけど、精一杯やっていきます。なので、これからもよろしく。そして、この21年でたくさんの人に作って頂いた僕らの音楽を、これからも愛してあげてください。何か辛い時、困った時に、元気を出したい時に、いつでも音楽はそばにあります。なので、寂しかったら、嵐を聴いてください。俺も聴きます。本当に、21年間、感謝してます。


そして披露されたのは、最新アルバム『This is 嵐』のクロージングナンバーでもある"The Music Never Ends"。まさに、この日のライブを通して歌い続けてきた一つのメッセージに、確かな輪郭を与えるような楽曲だ。


《We must go on/次の景色へ/The music never ends》("The Music Never Ends")


最後の楽曲は、嵐にとっても、ファンにとっても、とても大切な一曲である"Love so sweet"。この楽曲は、いったいどれだけの人の人生を彩り、導き、救ってきたのか。もはや想像もできない。これこそ、まさに至上のJ-POPアンセムであり、同時に、嵐の5人だからこそ歌い届けられた楽曲なのだと思う。

だからこそ彼ら5人には、またいつか必ず、ステージでこの曲を歌って欲しいし、そして、その「約束」は必ず果たされるはずだ。この日のライブを観て、その確信を深めることができた。だから、何も悲しむ必要はないのかもしれない。



何年後、何十年後になるかは分からないけれど、いつか5人が、再び嵐として歩み出す日を、いつまでも信じて待ち続けたい。




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