見出し画像

「私たちが乃木坂46です。」 1期生&2期生からの継承を経て、ここから未だ見ぬ夢の景色へ。

【8/28(月) 乃木坂46 @ 明治神宮球場】

かつてと比べて、とても多くの人たちが当たり前のようにアイドルを目指すようになった現在。そうした時代において、国内における現行のトップアイドルである乃木坂46は、日本中の少女たちからの憧れの眼差しを一身に受けながら、そして、そうしたファンたちに希望を与える存在として、今日も覚悟と誇りを持ってステージに立ち続けている。そんな彼女たちにとって、2023年は、あまりにも大きな節目の年となった。

2月、それまでグループのキャプテンを務めていた最後の1期生である秋元真夏の卒業コンサートが行われ、この場でキャプテンの役割が3期生の梅澤美波へと引き継がれた。2019年以降、3年以上にわたり2代目キャプテンとしてグループを支え続けてきた秋元の卒業は、残されるメンバーたちにとって、とてもショッキングにして切ない出来事であった。しかし秋元は、自らの卒業の理由について次のように前向きに語っていた。

タイミングがきたのかなって感じたのは、後輩たちがすごくしっかり育ってて、特に3期生が。あと、「先輩たちが作った乃木坂が好き」って、みんな言ってくれるんですけど、その乃木坂っていうのが、もう3期生たちが作ってきた乃木坂46に変わりつつあるなっていう風に感じて。だから引き継いでも何も心配はないし、むしろみんなが先頭に立っている姿を外から見てみたいと思うようになりました。

秋元真夏 『振り返れば、乃木坂』

3月には、2期生最後の一人である鈴木絢音がグループを卒業。そして5月には、2022年末にグループを卒業した齋藤飛鳥の卒業コンサートが東京ドームで2日間にわたり開催された。全編にわたって努めて明るく振る舞っているように見えた齋藤だったが、中盤、メンバー全員のほうを向いて「乃木坂をよろしくね。」と告げた時の声は確かに涙ぐんでいて、そのシーンはまさに、この数年にわたり少しずつ進められてきたグループ内における世代交代が美しい形で完了した瞬間であったように思う。

これをもって、2012年にデビューした1期生、また、2013年に加入した2期生が全員グループから卒業を果たし、この春から乃木坂46は、梅澤をキャプテンとした新体制として走り出すことになった。そして、3~5期生メンバーのみで臨むことになった初めてのツアーが、今年の夏に行われた「真夏の全国ツアー2023」であった。ファイナルの舞台は、乃木坂46にとっての聖地である明治神宮球場。これまでの神宮公演は雨に降られることが多かったが、今年は奇跡的に全4公演にわたり天気に恵まれた中での開催となった。


各メンバーが様々な場で語っていたように、3~5期生メンバーにとって、これまでグループの礎を築き上げてきた1~2期生メンバーの存在は非常に大きなもので、この夏、先輩たちの力なしで全国ツアーに挑む上では相当なプレッシャーがあったという。しかし彼女たちは、そうした不安や恐怖を乗り越えた上で、新しい乃木坂46のライブパフォーマンスを堂々と見せつけてみせた。特に、本編の終盤で披露された期別楽曲の3連打"バンドエイド剥がすような別れ方"(5期生)、"I see…"(4期生)、"僕が手を叩く方へ"(3期生)は、それぞれの世代の色合いを鮮やかに伝える一幕で、乃木坂46は、新しく加入するメンバーの力によって次々と変化・進化を重ね続けていくしなやかなグループであることを再確認させてくれた。

本編の最後に披露されたのは、この夏にリリースされた最新シングル曲"おひとりさま天国"。この曲でセンターに大抜擢された5期生の井上和は、今回のツアーを通して、どれだけこのグループがたくさんの人に愛されているか改めて知ったと振り返った。また、自分のためよりもグループのために、ファンのために頑張るメンバーたちへの愛と尊敬の念を伝え、そして、「もっともっと誰かの期待に応えられるように、希望を与えられるような存在になれるように、乃木坂46がこれからも誰かの頑張る理由になれるように、頑張ります。」と涙ぐみながら宣言した。

この日のライブ、および今回のツアーは、アンコールを締め括った"乃木坂の詩"によって美しい大団円を迎えた。最後にキャプテンの梅澤は、今回のツアーを振り返った上で、「今、先輩たちの跡をしっかり受け継ぐことができたと証明できたと思います。」「私たちが乃木坂46です。」と力強く語った。その言葉には、このツアーにおける歩みによって裏付けられた輝かしい自信が滲んでいて、その堂々たる姿は本当に感動的なものだった。


自分が大好きなグループを守りたい。もっともっと大きく成長させ続けていきたい。そして、次は自分が誰かにとっての希望になりたい。先輩たちの姿に憧れグループに加入し、その背中を見ながら必死に努力を積み重ねてきた3~5期生メンバーは、そうした深い想いを胸に走り続けながら、今回見事に自分たちだけの力で全国ツアーを完遂した。そして、秋元が自らの卒業の理由の中で語っていたように、今の乃木坂46は、歴代の先輩メンバーたちが大切に育み続けてきたグループの精神性(それは、自分よりも他者を重んじる利他の精神、そして、そうした一人ひとりの思いやりの心が一つに調和した時に生まれる慈愛のオーラ、温かな一体感、などというように様々な言葉で表現できるものだと思う。)を継承した上で、 10年以上にわたり築き上げられてきた礎の上に新しい花を咲かせようとしている。

何よりも特筆すべきは、乃木坂46は、そうした世代間の継承とアップデートを重ねながら、同時に、活動のスケールと支持層を拡大し続けていることだ。7都市16公演にわたる今回のツアーでは、合計で約25万人を動員。そのファイナルにあたる神宮公演は、全4日間で過去最長の日数だった。また、9月29日から10月1日にわたり行われたアンダーライブは、グループ史上最大規模(横浜アリーナ公演3days)での開催となった。決して立ち止まることなく、それどころかむしろ、今まで以上に大きな期待を受け止めながら走り続けていく。その歩みにおいては想像を絶するほど大きなプレッシャーが伴うはずであるが、どのような時もピースフルなオーラを放ちながら走り続ける彼女たちは、本当に逞しく、芯の強いグループなのだと思う。


これまで2度にわたりシングル表題曲のセンターを務めてきた4期生の遠藤さくらは、10月3日に発売された自身初となる写真集の巻末インタビューの中で、このように語っている。

乃木坂46は、メンバーの入れ替えなどで少しずつ変わっていき、昔から応援してくださっている方からすると、すっかり変わったように見えるかもしれません。でも中から見ると意外と変わっていないことも多くて。温かで優しい和やかな世界はそのままなんです。そんな乃木坂46ならではの魅力を大切にしながらも、現状にとどまることなく新しいことにも挑戦していきたい。もうすでに大きなグループではありますが、私たちの力で、もう一段大きく飛躍できたら、と思っています。

遠藤さくら 『可憐』

卒業メンバーたちが残してくれた功績は、いつまでも消えずにグループの中に残り続けていく。そしてその礎の上に新しい世代の力が折り重なることで、乃木坂46は、これからも現状維持に甘んじることなく絶え間なく進化し続けていく。梅澤は、今回のツアーの最終公演の舞台で「歴史あるこの場所から、新たな夢へと歩き出します。」と語っていた。2017〜2018年にわたる日本レコード大賞2連覇や2022年の日産スタジアム公演2daysの、さらに先の景色がどのようなものになるかは今はまだ想像もできないけれど、このグループの未来が明るいものであり続けていくのは間違いないと思う。

最後に。言うまでもなく、メンバーの完全な世代交代を経てもなお、シーンのど真ん中でこれほどまでに巨大な支持を獲得し続ける女性アイドルグループは、少なくとも日本においては前例がない。卒業メンバーから継承した乃木坂46の精神性を胸に、国民的アイドルとしての使命を真正面から引き受け続けていく彼女たちの次の10年を、これからも追いかけ続けていきたい。



【関連記事】


最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。 これからも引き続き、「音楽」と「映画」を「言葉」にして綴っていきます。共感してくださった方は、フォロー/サポートをして頂けたら嬉しいです。 もしサポートを頂けた場合は、新しく「言葉」を綴ることで、全力でご期待に応えていきます。