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BUMP OF CHICKEN、初の配信ライブ「Silver Jubilee」を観た。

【11/14(日) BUMP OF CHICKEN/「Silver Jubilee」】

2020年の春以降、新型コロナウイルスの蔓延という壮絶な逆境の中において、数多くのアーティストが配信ライブに一つの活路を見い出した。そして同時に、リアルのライブとは異なる新しい音楽体験を提供するために模索を続けてきた。

そんな中、これはあくまでも推測でしかないが、BUMP OF CHICKENの4人は、配信ライブに対して慎重な姿勢をとっているように思えた。

振り返ってみれば、大規模な会場でライブを行なうこと、ライブ映像作品をリリースすること、地上波のテレビ番組に出演すること、そうした今となっては当たり前の活動に対して、当初、彼らは慎重なスタンスをとっていた。

それは彼らが、ライブという特別な空間における切実なコミュニケーションを、何よりも重んじていることの証であった。その価値観は今も決して変わってはいないが、しかし4人は、上述のそれぞれの活動に一つずつ「必然」を見つけて、一歩ずつ新しいコミュニケーションの回路を開いてきた。

その「必然」とは、BUMP OF CHICKENの音楽が、未だ見ぬリスナーとの出会いを求めたから、と言い換えられると僕は思う。

4人はいつだって、彼ら自身が生み出した音楽が望む方角へと導かれるように歩みを進めてきた。2010年代、野外スタジアムや東京ドームでライブを敢行したことも、紅白歌合戦に出場したことも、"虹を待つ人"や"ray"、"Butterfly"や"新世界"が、そうした場所で鳴らされることを求めた「必然」だったのだ。


では今回、彼らが初の配信ライブを実施する「必然」とは何だったのか。それはきっとシンプルなことで、このコロナ禍でリリースされた新曲たちが、ライブで鳴らされることを求めたからなのだと思う。

3人でのテレビ番組出演こそあったものの、彼らがライブを行なうのは、2019年11月の東京ドーム公演以来、約2年ぶりである。その間にリリースされた新曲の内の3曲が、今回の配信ライブ「Silver Jubilee」で披露された。

彼らがライブに対して強い想いを持っているのは、自分たちが生み出した音楽はリスナーの存在があって初めて完成する、という確信があるからだ。(そしてそれは、ポップ・ミュージックの基本原則でもある。)ライブとは、そのリスナーの存在を直接的に感じることができる空間であり、だからこそ彼らを含む多くのアーティストにとって、ライブとはかけがえのない場であるのだ。

もちろん、通常のライブとはシチュエーションは大きく異なるが、今回披露された"アカシア"、"Flare"、"Small world"は、ライブの場で画面の向こうのリスナーに向けて鳴らされた時、ついに、2度目の誕生を迎えることができたのだと思う。

また、今回披露された新曲の中には、直井由文が制作に参加できなかった楽曲もあった。だからこそ、バンドにとっては、やっと「4人」で演奏することができたという感慨も深かったはずだ。お互いに向き合うようにして演奏する4人の喜びに満ちた表情は、ライブという時間がかけがえのないものであることを何よりも雄弁に物語っていたように思う。


最後に披露されたのは、2014年リリースの『RAY』に収録されたアルバム曲"サザンクロス"であった。

《どんな今を生きていますか/好きだった唄はまだ聴こえますか/くしゃみひとつで笑った泣き顔/離れても側にいる 気でいるよ》
《星を読んで位置を知る様に/君の声で僕は進めるんだ/さよならを言った場所から/離れても聞こえるよ 約束が》

何年も前に書かれた楽曲ではあるが、今、配信ライブで披露されることで、もともとのメッセージが更に強度を増す形となった。とても素晴らしい選曲であったと思う。

今回の配信ライブは、わずか5曲の構成であったが、終了直後、年末から年始にかけてのアクションが立て続けにアナウンスされた。その中には、待望の有観客ライブ「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 02/10-11」の開催決定の報せも含まれていた。

これからも、彼らの動きを引き続き追い続けていきたい。



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