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教育現場における、伝統工芸や郷土玩具の可能性

当初感じた違和感

私は、毎年1回、地元の中学校に出向き、3年生に人形の絵付け体験授業をしている。
最初に絵付けの方法を教えて、後は自由にやってもらうというもの。

ベーシックな塗り方は説明するものの、自由を大前提にしているため、出来上がる作品は様々だ。私も美術の先生も生徒の手助けはしないため、自力で塗ることになる。 

数年前、初めて授業に出た際、すごく違和感を感じた。
ちょっとでも塗りが難しいと感じた生徒が「先生塗ってください」と持ってくるのだ。

美術の先生も「仕方ないなー」と言って、塗ってあげる。
すると次々と生徒が塗ってもらいに来る。
こうなっては、誰の作品でもなくなってしまう。

私は難しさを体験してもらうための授業だと思っていた。
なので先生には手は出さないようにしてほしいと裏でコソッと伝えた。
それ以後、生徒は自力で全てを塗ることとなった。

自力感と集中の向こう側

そして、自力で塗るとなると、生徒の集中はすごい。
教室がシーンとなり、筆と息の音のみが聞こえてくるほど静かになる。

生徒としては自分の決めた絵付けで、自分で塗るため言い訳ができない。

しかもこの人形、全員強制的に文化祭で名前付きで飾られるのだ(笑)
もはや集中しない理由がないのだ。

そうやってできた作品は、見ていてとても楽しい。

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写真は授業の30分ほどで塗ったもの、残りは昼休みや放課後で完成させるらしい。

中学3年生の多感な年頃に、縛りなく自由にさせると、ほんとに柔軟な発想をしてくれる。

そして、すごくいい笑顔で難しかったーとか、楽しかった!とか、ほんとに純粋な感想をくれる。

これは本気で絵付けにぶつかって、集中したからだと思う。そして本気になると記憶にも残る。

きっとこの子達が、大学生や社会人になった時、東京や大阪で、うちの人形を見かけたら、「うわーこれ懐かしい!」となる。

当時好きだった同級生とか、頑張ってた部活とかのことを懐かしむ。
たまには、実家帰ろうかなとか、疎遠になった同級生にLINEしてみようかなとかなる。

そういったことに、少しでもなったらいいなーと思う。
郷土愛といったら堅苦しい。
けど誰でも懐かしく安心できる故郷は必要だ。

これは伝統工芸や郷土玩具にとって1つの強みともなるし、
地元の名前や地域名が付された工芸品の使命だと思っている。


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