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セパタクロー熱中時代。vol.13

2017年の年の瀬。セパタクロー日本代表は大きな決断を下した。翌年に控えたアジア大会でエントリーする種目を決めたのだ。

インドネシア大会では4種目が実施されることになった。3人制のレグ、チームレグ、チームダブル、そして、クワッド。前回大会との変更点は2人制のタブルが団体戦になり、4人制のクワッドが初採用された点だ。この中から2種目を選ばなければならない。

過去の歴史をみてもチームレグは外せないと思われたが、彼らはあえて外した。チームダブルとクワッドにエントリーすることにしたのだ。本命に据えたのはチームダブルだった。JOCから割り当てられた派遣枠の関係もあったけれど「金メダル」という目標を真剣に考えた結果だった。

この4年間、世界選手権やスーパーシリーズと呼ばれる新設の大会で強豪国と戦う機会が増えた。その中で感じたのはサーバーの違いだった。逆にレシーブやアタックでの駆け引き、データを集計して戦略的に戦う分野では手応えを掴んでいた。そして、サーブ力の差が一番でるのがレグなのだ。

ダブルやクワッドのサーブはエンドラインから打たれるが、レグのサーブはエンドライン手前に描かれたサークルから放たれる。分かりやすく例えるならば、ソフトボールと野球の関係に似ている。マウンドが近いソフトボールの120km/hは、野球に置き換えると体感速度は170km/hにもなると言う。

手前から高い打点で打たれるレグのサーブは捕球が難しい。強豪国は強烈なサーブを高確率でコートインさせてくる。逆にダブルやクワッドのサーブはエンドラインから打つため捕球しやすい。ラリーにさえ持ち込めれば勝機が見いだせる。これはサーバーを含めた代表選手全員が共有していた感覚でもあった。

ダブルやクワッドで求められる能力はレシーブ力やジャンプ力だ。サーバーにとってレグを捨てることは、これまで磨き上げてきた最大の武器を捨てることを意味した。

仁川大会に出場したあるサーバーは「正直、キツいっす。でも今までで一番ボール蹴ってます」と話し、素人目にも慣れない動きだったけれど、レシーブやブロックの練習にも必至に取り組んだ。

なぜならば、無残に敗れ去った仁川での借りを返すためだ。そして、手ぶらで帰ってくる虚しさを繰り返すのは、まっぴらだったからだ。彼らは「金メダル」と「セパタクローの未来」のためにエントリーする種目を、自分たちで決めた。

このときから日本代表にはある習慣が作られた。練習前に挨拶代わりの握手をして、練習後の円になっておこなうミーティングでも、最後は全員で握手を交わすようになったのだ。

この儀式には彼らの決意が込められていた。

(続く)

TPW_20180502_0008のコピー

※写真はサーブを打つ寺島と合宿での一コマ。

SPOAL「セパタクロー熱中時代。」を一部加筆修正して転載>

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