灰月弥彦

新潟のしがないプログラマ。だいたい本か映画の話をします。

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マガジン

  • コロナに立ち向かう参考書籍リスト

    『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』に掲載の参考書籍を読んだ感想記事をまとめています。

  • 【独学】読書猿『中学0年生からやり直す英語読み』

    読書猿氏のサイトより https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-92.html 英語学習をやり直す記事のまとめです。

最近の記事

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【海外文学のススメ】怪奇小説の沼から

1.初めにガイブンが売れないといわれて久しい。出版不況といわれる全体の潮流の中でもガイブンは特に厳しいらしく、ツイッターをみていると初版が数千冊のオーダーでも珍しくはないようだ。 売れなければ、出ない。 供給が途絶えて我々が餓死しないためにも、公式企画「海外文学のススメ」に参加することにした。この記事では私の愛する怪奇小説の中で、普段海外文学を読まない方でも楽しめるような書籍を、アンソロジーを中心にいくつか紹介しようと思う。なお、選定には入手のしやすさを考慮した。 2.

    • 【読書記録】小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集

      2024年159冊目。 クリスティナ・ロセッティの詩集です。幻想的な詩が多く収録されています。 著者は「吸血鬼」を書いたポリドリの姪にあたるらしく著者の母親がポリドリの妹になるようです。 表題作の「小鬼の市」は40ページほどの物語です。小鬼の売っている果物を食べてしまった妹を助けるために姉が奮闘するお話しで、小鬼が誘惑する様子や果物の美味しそうな感じがよく出ていました。 全体的にどこか郷愁を感じるようなどこか悲しい雰囲気のある詩が好みでした。 後半は信仰に関する詩が

      • 【読書記録】月の森に、カミよ眠れ

        2024年158冊目。 上橋菜穂子のデビュー2作目。デビュー作はSF風でしたが、2作目からはお馴染みのファンタジー路線となっていて読みやすかったです。 失われていく民族がテーマなのは一作目と共通です。著者の深い関心が感じられます。 たとえ滅びるとしても掟は守るべきという考えは共感できませんでした。誰だって死にたくはないですし、家族を守りたいというのは自然な感情だと思います。この掟やカミとの絆のあたりを理解するためには、もっと深掘りしてほしかったと思いました。

        • 【読書記録】狐花 葉不見冥府路行

          2024年157冊目。 歌舞伎化を前提に書き下ろされた作品。『了巷説百物語』にも登場する中禪寺がメインとなる作品です。 京極夏彦を読んでいると感覚が麻痺するのか中編かなと思ってしまいますが、普通に長編のページ数があります。歌舞伎化が一場面が短く読みやすいです。 中禪寺が主人公ですが、憑き物落としは中途半端に終わってしまいます。ラストは逆に幽霊を憑けている印象です。百鬼夜行シリーズとは違うということですね。 洲齊の出生が一つの核になっていました。元々はドラマ版のキャラク

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        【海外文学のススメ】怪奇小説の沼から

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          11本
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          8本

        記事

          【読書記録】ジーキル博士とハイド氏

          2024年156冊目。 『フランケンシュタイン』に続いて古典を。短いお話しですがよくまとまっていて無駄がなく名作だと思います。 ジーキルとハイドは分離した人格とされていますが、記憶などは共有しているようなので側から見ると分離しきっておらず混ざっているようにも感じられます。ハイドからジーキルに戻れなくなった時もハイドとして暮らせる準備もしていたにも関わらず部屋にこもっていたりと、ハイドの時にもジーキルの意識があるように感じられました。 このあたり、最近の作品では異なる意識

          【読書記録】ジーキル博士とハイド氏

          【読書記録】精霊の木

          2024年155冊目。 『守り人』シリーズや『獣の奏者』の上橋菜穂子のデビュー作です。最初はSF風だったんですね。驚きました。 正直若書きの印象は否めないかなと思いました。あとがきでは機械オンチと自称しているように、SF描写があまりこなれていないなと感じました。 超能力も存在する世界観で、精霊たちのいるパートと機械文明のパートの世界が融合しきれておらず、チグハグな印象を持ちました。 失われた民族への眼差しはフィールドワークを行う著者らしさが出ており、のちの作品の萌芽は

          【読書記録】精霊の木

          【読書記録】帝乃三姉妹は案外、チョロい。10

          2024年漫画等197冊目。 前回の感想で書いた通りに撮影ほったらかし水着回でした。三姉妹を平等に描いているので同じシーンも三カメ分あって展開が遅く感じました。 優が来る前は三姉妹の仲はそんなによくない感じだったはずなんですが、今は何をするにも三人一緒でべったりですね。優のためにってだけでなく聖奈といる時もセットなので微笑ましいです。 逆に心配なんですが抜け駆けしたくなったりしないんでしょうか。告白シーンを撮影するわけですが、他の2人の告白を見て辛くなったりしないか心配

          【読書記録】帝乃三姉妹は案外、チョロい。10

          【読書記録】聖女に嘘は通じない2

          2024年漫画等196冊目。 情報量が多い割に展開が遅いのでまとめて読んだ方がスッキリするかもと思いました。すべての候補を満遍なく見ているので視点がボヤけている印象です。ひとりずつじっくりと観察してくれるとわかりやすいのですが……。 教会にも革新派と穏健派の派閥があることがわかりました。いろんな思惑が入り組んでいるので整理するのが大変です。 モニクが聖獣をラズと読んでいることが引っかかります。なぜその名前を知っているのでしょうか。 クロエにはまだ明かされていない情報も

          【読書記録】聖女に嘘は通じない2

          【読書記録】ナイトランド・クォータリー vol.35 永劫の戦い、終わりなき恐怖

          2024年154冊目。 特集は「永劫の戦い、終わりなき恐怖」。「戦い」が無限に続くことの恐怖だけでなく、涼宮ハルヒのエンドレスエイトに言及した記事があるなど、無限ループすること自体が怖いとする捉え方もあり、面白いと感じました。 パッと思いつくのは『火の鳥』など仏教の輪廻転生でしょうか。生きること自体が苦しみだというのはよくわかります。それが無限ループだとすると本当に嫌ですね。 お馴染みの映画紹介は『デューン 砂の惑星PART2』と『オーメン:ザ・ファースト』。オーメンは

          【読書記録】ナイトランド・クォータリー vol.35 永劫の戦い、終わりなき恐怖

          【読書記録】怪談

          2024年153冊目。 ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の作品。英語の作品ですが「耳なし芳一」や「雪女」、「むじな」などは広く知られています。 怪談の多くは八雲による再話で、元ネタがあると聞いているので、元ネタと比較して読んでみたいと思いました。講談社学術文庫版に収録されているようです。 「むじな」のお話しは元話をネットで見つけられたので読んでみたのですが、最後の屋台の灯りがふっと消えたの描写は八雲の創作であることがわかりました。元話は落語的なオチがあるのですが、八雲版

          【読書記録】怪談

          【読書記録】狐笛のかなた

          2024年152冊目。 『鹿の王』や『獣の奏者』のような大長編を読んだせいか少し物足りなく感じました。『守り人』シリーズもそうですが上橋さんの作品は作り込まれた世界観が魅力なので、もっと小夜たちの生活の様子やあわいの世界などを掘り下げて描いてくれたらいいと思いました。 ストーリー展開は非常によかったです。まさか小夜のパートナーが小春丸じゃないとは思いませんでした。 小春丸は小夜のことを「むごいことだ」と言いますが、子どもをつくり、穏やかに暮らす小夜のことをむごいとは思え

          【読書記録】狐笛のかなた

          【読書記録】薬屋のひとりごと15

          2024年151冊目。 虫垂炎の手術はwikiによると18世紀頃が最初ということで相当未来の技術。作者によると、薬屋ワールドは科学的知識は19世紀頃まではOKということらしいです。 天祐の手術拒否は呆れてしまいますし、怒りたくもなるのですが、怒りつつも一番理解しているのが猫猫なのも面白いです。 𡈼氏と猫猫の中の進展はあまりありませんでしたが、猫猫をただ1人の妻として迎えようと必死に模索しているのが感じられてよかったです。 同時に帝の孤独さも感じられました。遺言を書く際

          【読書記録】薬屋のひとりごと15

          【読書記録】フランケンシュタイン

          2024年150冊目。 『オペラ座の怪人』に引き続き有名な古典を。以前創元推理文庫版を読みましたが再読です。 シェリーがこの本を書くことになった経緯は前書きの通りですが、そのきっかけとなった書籍も『幽霊綺譚 ドイツ・ロマン派幻想短編集』として邦訳されています。 フランケンシュタインの怪物というと四角い頭にツギハギだらけの身体、頭からはボルトというビジュアルがお馴染みですが、これは映画でボリス・カーロフが演じた際の姿ですね。 あと、死体に雷の電気を流して復活させる描写も

          【読書記録】フランケンシュタイン

          【読書記録】Sランクモンスターの≪ベヒーモス≫だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士として暮らしています。1〜11

          2024年漫画等185〜195冊目。 だいぶ前に数巻買ってたんですが、アニメ化されるということで最新刊まで。原作小説は2巻まで出ているようですが諸々あって途絶でしょうか。コミックはweb版がベースとなっているようです。 おまけのSSがネタバレになっている気がするんですがいいのでしょうか。表に出てこない設定とかならいいんですが次巻の内容に触れているパターンがあるので気になりました。 お色気シーン多めですが、大体胸に挟まれるだけなのでちょっと飽きました。とはいえベヒーモスの

          【読書記録】Sランクモンスターの≪ベヒーモス≫だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士として暮らしています。1〜11

          【読書記録】すみせごの贄

          2024年149冊目。 『怪と幽』に掲載された作品をまとめた短編集です。怪と幽は全部読んでるのですべて再読です。書き下ろしもありませんでした。 「とこよだけ」はキノコ特集の巻に載っていたのでこの内容だと思うんですが、なんとなくホジスンの『夜の声』を彷彿とさせる感じがするのは私だけでしょうか。 「火曜夕方の客」はなんとも切ない作品。しんみりしているところに最後刺しにくる必要はあったのでしょうか……。 「戸栗魅姫の仕事」は琴子が対応をしくじった珍しいパターン。怪異に対して

          【読書記録】すみせごの贄

          【読書記録】入門 現代の宇宙論 インフレーションから暗黒エネルギーまで

          2024年148冊目。 大学卒業以来、久しぶりにこういう専門書を読みましたが完全に忘れてしまってました。特に数学の展開はもうできないので結論や解釈の部分だけ読みました。 そういう読み方をしたせいか理論的な部分よりも観測に関する部分の方が面白かったです。特にLIGOの重力波の検出の話が面白いと思いました。重力波の検出原理のことは触れていなかったので詳しいことはわかりませんが、こういう観測面での進展が今求められていることだと思います。日本にもカミオカンデの近くにKAGRAがあ

          【読書記録】入門 現代の宇宙論 インフレーションから暗黒エネルギーまで