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門外不出のTCP二次審査に公式ライターが同席した話【企画部門】

2022年度のTSUTAYA CREATOR’S PROGRAM(以下:TCP)の、企画部門における二次審査へと通過した7企画が出揃い、現役の映画プロデューサーたちとの面談である二次審査が行われました。

本来であれば、審査員、TCP運営事務局の方、そして狭き門である一次審査をパスした応募者の方々のみが参加を許される二次審査。その知られざる審査の一幕を皆さまにお伝えするという使命を担い、TCP公式ライターとして同席させてもらえることとなりました。

2022年9月某日

期待と緊張のブレンドされた感情で、二次審査会場へと向かいます。入館証をもらってエレベーターを上がり、案内に従って進むと、色んな映画のポスターやその関連書籍が飾られた、テンションの上がらざるを得ない総合受付へと到着しました。

カルチュア・エンタテインメント株式会社の受付

 TCP運営事務局の方がすでに待っていてくださったので、そのまますぐに二次審査が行われている会議室へと直行。中へ入ると、広めの会議室には長机が置かれており、審査員である映画プロデューサー陣がずらりと座っています。凄い景色です。

応募者ではないにも関わらず、緊張しながら入室する私に対して、気さくに挨拶してくださる審査員の皆さんの様子に少しホッとし、案内された席へとつきます。早速、面白そうな会話が耳に入ってきました。

「こうすればもっと盛り上がりそう」

「過去のあの作品と類似性がある」

「ここの要素は拾いたい」

審査員の方々が、二次審査の面談を終えたばかりの候補作について議論しているようです。(私は途中からの参加だったので到着したのはすでに何名かの審査を終えたタイミング。)

映画プロデューサー同士の会話なんてそうそう聞く機会が無いぞ…と思い、聞き耳を立てつつ、会話の中で映画のタイトルが登場する度に、自分が知ってる or 知らないことに一喜一憂しながら、PCを立ち上げ記事を書く準備を進めます。

一次審査の内容については前回の記事を参照してください。

映画になる前の映画

TCP応募の必須提出物である企画書には様々なことが記載されています。
・タイトル
・企画のテーマ
・訴求ポイント
・登場人物、キャストイメージ
・あらすじ
・ログライン(脚本の内容と魅力を簡潔に伝える要約文)など

テーマがしっかり書いてあるもの、ストーリーラインの説明に重きを置いたもの、企画書としてのデザインがしっかりしているもの、書き方は三者三様です。

「いま見ているもののどれかが、数年後には映画館で観られるかもしれないのか…すげえ…」とか思っている内に、二次審査の再開です。

実際の審査内容や質問は非公開なのですが、それぞれのプロデューサー達からは「実際に自分が作品化するならどうするだろう」という視点で、多角的な質問が飛び交います。

企画が深く練られているかどうか、最終的にこの企画で何を伝えたいのか、自分の指針があるかどうかなどに加え、こういった質問に対してどのように回答するかのパーソナリティも審査では見られます。

審査員の質問や提案が、企画に新しい一面を与えるという側面もあるので、候補者の方にとっても有意義な企画会議になるのではないかと思います。

そんな二次審査の面談。途中参加ではありましたが、好奇心と緊張のメーターを振り切って参加していたため、一瞬で終わってしまいました。心地良い疲労感さえあります、審査してないのに。しかし二次審査は続きます。どの企画を最終審査へ通過させるのかの議論、「決定会議」です。

映画とは?

決定会議で様々な議論が繰り広げられる中、特に目から鱗だったのは、審査員のみなさんがお持ちだった「その企画は、なぜ映画というメディアでなくてはならないのか」という視点。音楽、漫画、小説、舞台など様々な表現方法がある中で、なぜ「映画」なのか。

映画を”観る側”と”創る側”とでは、やはりその視点は異なります。映画製作に携わる人にとって、非常に重要な要素となり得るのではないでしょうか。

私も含め、映画を創る側ではないほとんどの人は、あまり考えたことがないポイントだと思います。観客が作品を鑑賞する際には、それはもう”映画”に成っています。つまり「なぜ映画なのか」という問いへの答えが、すでに作品に反映されているはずだからです。

小説原作、漫画原作、舞台劇の映画化、映画ではないメディアから映画に生まれ変わったケースは少なくないですが、それぞれで何をどう語っているのか、何が違うのか、改めて意識してみると面白いかもしれません。

最終審査について

「決定会議」にて、最終審査へと進む作品が決まり、次のステージで賞を獲得した作品は、映画化され、劇場で公開されます。

冷静に考えて凄い話です。もちろん、そこに残るまでの道程は生半可なものではありません。でも、映画館で公開される作品を企画するチャンスが、誰にでも平等にある、これがTCPの素晴らしい点だと思います。

最終審査を担当する審査員は後日発表予定とのこと。

2022年度のTCP最終審査は、より「審査」に重きを置いて注力すべく、今までのステージを使用したプレゼン方式の審査から、クローズドな審査へと変わります。

そこではどんな議論が交わされ、最終的にどのような企画と物語へと変わっていくのか。引き続き「映画の卵」達の行く末をお届けしてまいります。

(文:芦田央(DJ GANDHI)