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四季を漬け込む

2020年は人類にとって、ぬか漬けの年になったといっても過言ではなかろう。
新型コロナウイルス対策の一環として国から推奨された、在宅勤務。

「家で働いてますって言ったって、やろうと思えばいくらでもサボれるじゃねえか」「仕事っつーもんは職場に来てこそなんだぜ」等々ぶつくさ言っていた社長が重い腰を上げたのを機に、私はぬか漬けを始めた。
もうまもなく、季節が一巡するところだ。

牛乳を煮詰めた古代のチーズ「蘇」やコンポスト、そして家庭菜園など、在宅時間が長くなったことで流行したものはいろいろあるけれど、私の周囲で最も流行ったのは、ぬか漬けだった。
否、私が流行らせたともいえる。かも、しれない。

粘土のような手触りに癒され、ぬか漬けの不思議なうまみに目を見張り、みるみるうちにぬか床にハマった私は、いつしか友人たちにぬか床の愛しさを書いて、喋って、伝えまくるようになった。

布教活動への熱は、鎮まる兆しもなく。
ぬか床への愛は、燎原の火のごとく広く燃え上がっていく。

友人の一人にゆで卵のぬか漬けがとてもうまいと話したところ、彼女はチューブタイプのぬか床でぬか卵を試し、そのおいしさを絶賛してくれた。

数ヶ月前、ぬか床を持っていない別の友人に「いつかぬか床を始めることがあったらぜひ漬けてほしい食材リスト」をルーズリーフにまとめて送りつけた。
その後彼女に会ったら、なんとジップロック式のぬか床を始めていた。聞けば彼女の後輩からも、私とほぼ同時期にぬか床を始めたという知らせが入ったのだそう。

そうらみろ、ぬか床ブームの到来だ。
しかもこのぬか床ブームは「蘇」のような一過性のブームとは異なり、一度始めたらぬか床がダメになるまで続く長期的なものだ。
ぬかに魅入られた私たちは、きっとこれからもずっと、ぬか床と共に幸せに暮らしていくことだろう。

そんなわけで、ぬか床を始めて約一年。
ここいらで一度、これまで漬けた食材を個人的なお気に入り度とお手軽度に沿ってまとめておこうと思う。

いつか自分で読み返して、懐かしむために。
あるいはこれを読んだあなたが、ぬか床を始めてくれることを祈りつつ。

さて、まずはお手軽度とお気に入り度で分けた4象限を見ていただきたい。

スライド1


先に言っておくと、お気に入り度が著しく低い食材はなかった。
つまり、基本的においしいのである
ただ、「わざわざぬか漬けにしなくてもいいかな…」と思った食材もチラホラあった。
それも含めて、書き記しておきたい。

【お手軽度 高〜中&お気に入り度 高】

お手軽かつお気に入りの食材。
下処理がいらないものや塩もみだけでOKなものは、ついつい高頻度で漬けてしまいがち。だって楽なんだもの。

スライド2

厚揚げ:そのまま漬けるだけ。ぬかを洗い落とさずにフライパンで焼いても美味。

エリンギ:そのまま漬けるだけ。干してから漬けると、にょりっと歯ごたえが増して楽しい。

カブ:皮を剥いて塩もみして漬ける。茎から根にかけてのつなぎ目のシャキシャキ感がたまらない。ほかの料理に使うよりもぬか床に埋めた方がいい。

長芋:皮を剥いて漬ける。滑るので厄介だが、とても美味。シンナー芋になりかけたトラウマがある。

きゅうり:ところどころ皮を削いで塩もみして漬ける。安定のおいしさ。

ナス:半分に切り、塩もみして漬ける。キュっとした噛みごたえ、ジュワッと溢れる酸味と塩気がこたえられないおいしさ。

【お手軽度 低&お気に入り度 高】


漬け込むまでにちょっと手間はかかるものの、圧倒的おいしさを誇る食材。
特にゆで卵は全人類にオススメしたい別格のうまさである。

スライド3

ゆで卵:茹でて殻を剥いた卵を、冷ましてから漬ける。一回につき5〜6個まとめて茹でると楽。冬に半熟バージョンも作ってみたら、その日一日卵のことしか考えられないほどうまかった。

干し大根:大根を4〜5センチ幅で輪切りにして、何日か干してから漬ける。たくあんみたいなシャキシャキ食感。

木綿豆腐:半日ほど重石を乗せて水切りして、ガーゼに包んで漬ける。面倒臭がってガーゼを巻かずに漬けたら、ぬかが埋め込まれて舌触りがザリっとしてしまった。
チーズみたいな味と評される。

【お手軽度 高〜低&お気に入り度 中】


お気に入りかと言われるとちょっと考えてしまうけれど、時々無性に恋しくなる食材。

スライド4

ごぼう:米ぬかと一緒に茹でる。おいしいけれど、煮物の方が好きかも。

人参:皮を剥いて漬ける。生っぽさが強め。

レンコン:皮を剥いて茹でて漬ける。穴に入ったぬかを落とすのがやや厄介。

キャベツ:一枚ずつ漬ける。食べるときにぬかを落とすのがやや面倒。

……上の野菜たちはぬか漬けのレシピ本ではかなりの常連なのだけれど、個人的にはぬか漬けじゃない料理の方が好きかもしれない。

こんにゃく:茹でてから漬ける。横着して長く漬けすぎたのか、表面がモロモロと白く溶けかけてしまった。

スルメ:ガーゼに包んで漬ける。面倒臭がってそのまま漬けたら、その後ぬか床から数週間イカ臭が漂う羽目に。
山椒や柚子皮、ぬかみそ辛子を投下してなんとか鎮圧したものの、けっこうつらかった。
とはいえ日本酒が止まらないオツな味。

以上が2020年に私が漬けた食材、全15種の下準備と寸評である。
ついつい食べ慣れた食材に走りがちだけれど、今年はもっと新しい食材にも挑戦してみたい。
今のところ漬けてみたい食材は、以下の10種だ。

【2021年に漬けてみたいもの】


*ミョウガ
*アボカド
*ズッキーニ
*パプリカ
*ミニトマト
*セロリ
*ゴーヤ
*アスパラガス
*ブロッコリー
*ささみ

実はみょうがは昨年からずっと漬けてみたかった野菜のひとつなのだけれど、うかうかしているうちに時期を逃してしまった。
年中出回っている卵や厚揚げとは違い、野菜には旬がある。
季節のおいしさをしかと味わうために、今年はより一層四季アンテナを研ぎ澄ましていこうと思う。

私のぬか床時代は、まだ始まったばかり。
新たな食材をぬか床に迎えて、また一年。
どうか今年も、健やかに。
どうかみなさま、よきぬか漬けライフを。

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