レシピを作る過程:トマト仕立て、ハーブとチーズの新しいカレーソース/白身魚と相性バッチリ
先日、釣ってきたナマズを使って是非ともスゥーシィープラーが食べたいとリクエストをもらった。スゥーシィープラーは揚げた魚のレッドカレーがけ。辛くて濃厚な、白いご飯がたくさん食べたくなるガッツリ系タイ料理だ。
「もちろんいいよ」といったものの、その時我が家ではレッドカレーペーストを切らしており、あったのはグリーンカレーペーストか酸っぱいカレーペースト、もしくは乾燥された赤唐辛子か生の緑唐辛子。もちろん新たにレッドカレーペーストを買ってもいいのだが…レッドカレーペースト以外の新鮮な素材が揃っているなぁ、と一瞬考えてしまった。
すると夫、
「SUMACOさんの創作料理でいいよ。」
といってくれたので、お言葉に甘えることにした。実は、ナマズを調理するのが初めてなのだ。なのでナマズをちゃんと味わってみたかった。ナマズは肉厚な身であり、とても柔らかいために調理する際には気をつけないとほろほろに崩れてしまう。このほろほろ状に崩した身の特徴を生かした美味しい料理もあるけれど、今回はナマズをごろっと食べたいみたいらしい。
カレーペーストはハーブの集合体
以前、チェンマイでタイのカレーペーストをハーブをすりつぶして練るところから料理教室で習った。タイに住んでいる限り、なにもカレーペーストを買わなくても市場で買えるフレッシュハーブと石すり鉢があれば作れるのだということがそこで初めてわかった。でもやっぱり面倒くさい。カレーペースト専門店もそのハーブを買う市場にたくさんあるし、スーパーでも手軽に買えるとしたら、やはり普段にはそれで十分と思ってしまう。
ただ、例えば同じレッドカレーペーストといっても、作っているお店によって、ブランドによって、つまり作り手によって全く味が違うのだ。レッドカレーにはレッドカレーの基本的なハーブの種類があるけれど、その分量だったり何かをプラスすることもありで個性が出てしまう。だから皆、カレーペーストを購入する場合は自分のお気に入りのカレーペーストの店・ブランドを選んで購入している。
レッドカレーが大好きな私は以前、その時に入ったお店にいつものカレーペーストがないことに気がつき、その代わり別なブランドの大きなパックのレッドカレーペーストを見つけた。いつもよりかなり大容量だったが、まぁしょっちゅう使うのでいいかぁ、と気にせず購入した。最初に作った”いつものカレー”が、何だかいつもとは違う。自分、どうしちゃったんだろう。それでも何とか味を整えて夕食で食べたが、何だか腑に落ちない。
悲しくなってしまった。
数日後にまたレッドカレーを作った際に、今度は少なめにこのカレーペーストを入れてみた。もしかしたら前回は入れすぎて”苦味”が立ってしまったのだろうと。
結果、それでも違う。はっきりいって美味しくできない!それはいつもとは違う、すごくクセの強い苦味が入っているからだった。
そのカレーを夕食に出すと同時に、この味のことを夫に話してみた。「美味しくないよね?いつもと違うよね?私に遠慮しないで正直にいってみて。私はこのカレーペーストが美味しくないと思う。」と。
夫は、「うん。このカレーペーストには一般的にレッドカレーペーストには入れないの”ハーブ〇〇”(私は名前を忘れた)がかなり入っているよね。もしかしたら他のカレーペーストにも入れているところはあるかもしれないけど、ここまでたくさん入れるのはかなり独特な味の好みの作り手だね。」
まだパッケージ半分程残っていたけど、これ以上は絶対に使いたくない・使えないので「ごめんなさい!」と心で謝ってから捨てさせてもらったという経験がある。
それとは反対に、時折食堂で何気なく食べた一般的な料理がハッとさせられるほど美味しい!と感じると、そこではペーストを自分で調合してしているお店が多いのも事実。
その人のハーブの調合で、そのカレーの味がスタートする。
頭の中でハーブが踊る
つまり、私も自分でハーブを調合してソースを作ればそれは列記としたカレーペーストになるんだよなぁと頭の中でくるくると何かが計算し始めた。「よし、やってみよう!」と実際に素材を用意して味見をしながら作り始める。そうすると作りながら頭の中ではまるでハーブが踊るような映像が見えてくるのだ。
自作カレーペーストはハーブの種類と量で決まる。まだレシピのない、これから味が変わるスタート地点なので、とりあえず唐辛子は入れすぎないよう”少々”で始めることが大事。
そこにベースにトマトを使用。トマトに火を通して水分が出るようにする。トマトが全体的に崩れるまで煮る。
辛さの味見をしたところ、最初に入れた乾燥赤唐辛子だけでは、奥に感じられるちょっとした辛さだけだったので、生の緑唐辛子も入れてみた。そして酸味を足したかったので、ライムの搾り汁、乾燥されたスパイスミックス、そこに柔らかいコクを出すためにチーズも少し入れてみた。今回は決してクリーミーにはしたくなく、魚の味を引き立てる味が欲しかった。
もっと味を出して煮詰めるため、一度少し水を足し、煮込みながら水分をまた飛ばしていく。
甘さちょっと足りない?塩けは足りてる??そうしながら砂糖と塩での味の調節を再びする。
あくまでも”ソース”
次はナマズの調理だ。ごろっとした肉厚なナマズ。でも身はとても柔らかいので気をつけて扱う。せっかくのこのごろっとジューシーな塊を口の中で楽しみたいからだ。 次の工程が待っているので、焼き過ぎないよう、火が通りすぎないように注意する。
ナマズ一切れ一切れの表面がしっかり焼き上がったら、フライパンに残るナマズと先ほど作ったソースを一緒にし、絡めながら丁寧に炒め煮にする。この段階で初めてしっかりと中まで火を通すことが大切。
私的にはこのソース、結構美味しくできたと思った。味見の時点でこのソースをちょっとご飯にかけみたら「くぅ〜!!!!」と美味しい唸りがでた!
実食
ナマズの身はぶりぶりっと柔らかく、ほろっとした塊で口の中でとろけるよう。淡白な味で、臭みは一切ない(養殖ではない、天然のナマズだかららしい)。その魚の身にこのカレーソースは、魚の味を一緒に楽しめるくらいの主張の強さだ。甘酢っぱ辛くて、チーズのコクがたまらない。爽やかなトマトベースのソースだけれど、酸味が尖っていないのだ。
さて、夫の感想は…
「もぐもぐ」と最初の一口にちょっと長めの無言の時間が流れる。
そして
唸った!
リクエストしたスゥーシィープラーよりも魚の味をちゃんと楽しめる絶妙カレーソースで非常に美味しいといってくれた。
確かに、スゥーシィープラーはレッドカレーソースが強烈で、実のところ揚げ魚が何であっても、肉だったとしても、味がレッドカレーソースの味しかしないのだ。
今回作ってみたカレーソース、日本で一緒に食べたら美味しい魚は何だろうと考えてみた。もちろんナマズでいいのだが、きっと手に入らない地域が多い気がする。
はまちかな。
厚切りした、もしくはごろっとした大きめ一口大にしたはまちをカリッと揚げて、そこにこのカレーソースと絡めて煮たら美味しと思う。どちらかというと、肉より魚に合うソースだ。しかも、表面がカリッと仕上げられた魚だ。
付け合わせは、フワッとしたサラダ菜系を使ったさっぱりサラダかな〜。
みなさんお気づきかもしれないが、これはいわゆるトマトソースとチーズの絶対に美味しいとわかっている組み合わせだ。今回はこのカレーソースを作るにあたって”ナムプリックオン”という北タイ料理の一つの甘めのピリ辛トマトミートソースディップにインスピレーションをもらった。蒸し野菜や蒸した餅米をこのソースにつけて食べるのが美味しいのだ。
また作ろう!そしていつでもまた同じように作れるレシピを仕上げたいと思う。
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