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食の通訳

ご縁は突然に


先日、緊急のヘルプ要請が舞い込んできました。
13年来の知り合いのヤオさんという、今ではタイ版ミシュランガイドブックに紹介されているレストラン-MAA DAE-のオーナーシェフです。
彼女は山の麓にあるご自宅でお料理教室もしており、今回は日本から来たお客様への通訳を頼まれました。
ちょっとした手違いがあり、普段の形で通訳の方が手配できないことから、私にお話がきたのです。

ヤオさんと私が出会った13年前、私は全くタイ語ができなかったので彼女とはイベント先など、今でも会えば英語での会話になります。ヤオさんは流暢な英語を話し、私自身も今でも英語のほうがタイ語よりも断然得意です。

というわけで、今回は英語ー日本語の同時通訳となりました。
(今までの経験ではタイ語ー英語の通訳でした)
私たちは13年前に知り合いましたが、それぞれ全く別の道へ進み、お互いにタイ国外にもよく出ていたのであまり接点がなく、
最近私が食関係のお手伝いをするようになったことがきっかけで、今回声をかけてくれました。嬉しかった〜!
人生って面白いです。

食の通訳をして学ぶこと

ヤオさんのお料理教室は基本的に一泊二日の泊まり込みで、宿泊はヤオさんとそのパートナーさんの素敵な土壁でできたご自宅兼スタジオキッチンの中にあるゲストルームです。

吹き抜けのスタジオキッチンが素敵

基本的に習いながら一緒に作ったものを昼食や夕食としていただきます。その途中にはコーヒーや飲み物が提供され、朝食はヤオさんが作ってくれたものをいただくので、滞在期間中豊かな”ヤオ食”にどっぷり浸れます。

朝食は、自分で好きなだけとって食べるスタイル。
この日は豪華なお粥でした。
美味しい〜!もちろんおかわりです。

ヤオさんの料理教室では、調理法を学ぶのはもちろん、タイの調味料の詳細な説明から丁寧に始まります。

私自身は同時通訳者の立場でいたので、時折通訳用にスマートフォンに軽いメモをとりますが、調理内容の記録は取らないので全ては覚えていませんが、今回は料理以外のことをたくさん学べました。

それは、ヤオさんが生徒さん(お客さん)を到着から出発までの間中最善の形で”ケア”する姿勢です。もちろん教える立場と教わる立場になるのですが、それだけではない「もてなし」がそこにはありました。

中にはヤオさんが私だけに伝えること(業務連絡的内容)、そしてお客様に伝えてほしいことなど、節々からお客様への気遣いが感じ取れました。

私自身の今回の通訳内容的には、普段からタイの食の勉強で学んでいることを母国語である日本語で活かせたので、とてもスムーズにことが運びました。料理教室中だけではなく、一泊二日の滞在期間の食事中などの会話も全て(寝る時間以外)ノンストップで通訳することが苦とならない程楽しい内容で、あっという間の出来事でした。

どこの部屋をとっても洗練されています。
くつろぎの空間
私が大切にしている10年前に作られたヤオさんの料理本。
来年には第2弾が発売されるそう。楽しみです!

さて、今回のヤオさんを含め私が今現在関わっている”タイの食を伝える”方々それぞれにスタイルがありキャラクターがあり、料理に特徴的なことがあります。
一口に「タイでタイ料理を学ぶ」と言っても、本当に様々です。
ただ、私が関わっている方達に共通していることが

ーできるだけ土地のものを、そしてオーガニックのものを食として扱う
ー素材の味を大切にする
タイ人も外国人も習いたいタイ料理
ーとても謙虚な姿勢

ということです。

近年では日本でもタイ料理が段々と知られるようになり、人気が出てきているようですね。タイに来れば、価格帯の低い屋台食から宮廷料理的なタイ料理が思う存分”美味しく”経験できますが、気をつけたいのは基本的に外食として食べられるタイ料理は化学調味料、白糖、油が非常にたっぷりと使われるということ。

もちろん化学調味料、白糖、油の大量摂取も全く気にならない方もいらっしゃいますが、最近はタイ人もナニ人でも食に気を付ける人は増えてきています。旅先ということで短期間であればタイ料理を毎食毎日食べていても、さほど影響はないかと思いますが、長期滞在になればなるほど”食生活”が気になってきます。

街中には気軽にできるいわゆる「観光向け」タイ料理教室はたくさんありますし、そうでなければ日本でもちょっと有名なかたの料理教室もあります。

タイ料理を学びたい人もその目的や料理の種類、費用が様々なので、ご自身が手にした”ご縁”を大切にしていただけたら、きっと満足して何かを習得できるんだと思います。

私も、私がいただいたご縁で食を学べていることがラッキーだなぁと思う日々。もっと食を学び、自分の仕事に活かしたいと思います。

ヤオさんのお店は今現在予約を取らないとなかなか食べられないくらいの人気店となっています。ウォーク・インが難しい状態であって、数日前に予約をすれば大丈夫。ただ、ヤオさんはそれが必ずしもいいことではないと言い、近々ミシュランガイドから降ろしてもらおうかと検討中だそう。
その理由は、ネットで情報が自由に広がりすぎ、人が来すぎてお店で用意できるこだわりの新鮮な素材が間に合わない。
いつでも「もう売り切れました」とお客様に言わざるを得ないのがとても残念。
お店に来てワインと共に食を楽しんでもらいたいのに、後ろでは次のお客さんが待っているのが見えるような状態が常であれば、せっかく来てくれたお客様に気持ちよくゆっくりと食事を楽しんでもらえないのは悲しい。それは本望ではない。

こんなことを私にも話してくれるヤオさんの信念を持って食を扱うサービス業に携わる姿勢が好きです。

本日も読んでいただきありがとうございました。

ヤオさんのHPはこちら。


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