肩甲上腕関節について(概要・関節窩・関節唇)
今回は肩甲上腕関節についてお話していこうと思います。
肩関節というと肩甲上腕関節を想像する理学療法士・トレーナーの方は多いのではないでしょうか?
また、いろんな靭帯や筋肉、関節包があってよくわからない・なんとなく苦手意識がある方も多いのではないでしょうか?
実際自分も新人の頃は肩関節疾患の患者さんがどんどん増えているのに、肩関節は靭帯も筋肉も複雑だと思っていて、勉強する前から苦手意識がありました...
そんな肩関節ですが、今回の記事を見てくださっている方は少しでも肩甲上腕関節について知りたいという方だと思うので、少しでも参考になれれば幸いです。
かみ砕きながら、分かりやす説明していくのでみなさんも一緒に勉強していきましょう!
そもそも肩甲上腕関節って何?
「肩関節なのに、肩甲上腕関節ってどういうこと?」
「なんとなく肩甲骨と上腕骨からなる関節...?」
という方も多いのではないでしょうか。
まずそもそも肩甲上腕関節というものは、どのような関節なのか一緒に紐解いていきましょう!
肩甲上腕関節というのは、肩関節複合体の1つです。
肩関節複合体とは、5つ関節から構成され、その中でも解剖学的関節と機能的関節の2つに分けられます。
解剖学的関節
(滑膜性の連結がある いわゆる一般的な関節のイメージ)
・肩甲上腕関節
・胸鎖関節
・肩鎖関節
機能的関節
(滑膜が存在しないが、解剖学的関節を効率よく動かす作用がある)
・肩甲胸郭関節
・第2肩関節
の5つ存在します。
肩甲上腕関節は、上記の通り肩関節複合体の中の解剖学的関節に属している関節ということになります。
肩甲上腕関節って不安定な関節
肩甲上腕関節は上腕骨頭と肩甲骨関節窩で構成される関節ですが、上腕骨頭の1/3のみが肩甲骨関節窩に接するという極めて不安定な関節です。
ピンの上に乗るゴルフボールをイメージしてもらえると分かりやすいと思います。
でも、そのゴルフボールを軽く触ると落ちてしまいますよね?
肩甲上腕関節はそれぐらい不安定な関節なんですね。
しかし、そんな不安定な関節であるのに僕らは生活していて脱臼などを起こさないのでしょうか?
それは、その周りに筋・靭帯・関節包・関節唇が存在するからです。
手の平をすぼめてバスケットボールを支えるときと、手を開いてしっかり支えるのをイメージしてもらうと手を開いてしっかり支える方が安定しやすいですよね?
なぜかというと開いた指が四方八方から支えているからですよね。
簡単に言えばそれが、靭帯や関節包、関節唇の役割ということです。(人間ってすげぇ)
では、そんな元から不安定な肩甲上腕関節ですがどのような構造をしているのでしょうか。
肩甲上腕関節の基礎解剖
概要
肩甲上腕関節は、上腕骨頭と肩甲骨関節窩で構成されると先ほど説明しました。
その2つは純粋に関節をなしているわけではないです。
上腕骨頭は、30°後ろにねじれています。これを後捻といいます。これがあることによって肩甲骨関節窩と関節を形成することが出来るんです。
肩甲骨関節窩は、少し窪んでいる形状をしています。
肩甲骨は胸郭の丸みに沿っており、軽度外側に位置しています。
よって、関節窩は前額面に対して約35°前を向いています。
この位置で手を挙げたりするのは、肩甲骨面上(scapular plane)と呼びます。
なので、肩甲上腕関節に問題がある可能性が高い場合真っ直ぐ挙げると痛いけど、肩甲骨面上で挙げると痛くないということもよくあります。(絶対ではないですし、これで肩甲上腕関節に問題あるとは断定できませんが...)
関節包
肩甲上腕関節は関節包というものに包み込まれています。その関節包は、上腕骨の解剖頚まで広がっています。また上腕二頭筋長頭腱にも広がっており、最終的に結節間溝まで伸びます。
なので、上腕二頭筋が関節を安定させる機能を有すると言われる理由はここにあります。
関節包は、上腕骨頭の約2倍の容量を有しており、肩甲上腕関節の可動性に必要な関節の遊びを作っていると言われています。(食べ物にフワッとラップしているイメージ)
この関節包が包み込むことで、上腕骨頭を肩甲骨関節窩からずれないように制御しているわけです。
また包み込むことにより、関節内圧が陰圧になることを補助してくれるため、さらに関節の安定性が高まると言われています。
関節包は、約45°外転位で全てが緊張状態になると言われていますが、様々な肢位によって緊張する部位が変わってきます。
関節包の中でも前方部は関節上腕靭帯と言われ、上から
・上関節上腕靭帯(superior glenohumeral ligament:SHGL)
・中関節上腕靭帯(middle glenohumeral ligament:MGHL)
・下関節上腕靭帯(inferior glenohumeral ligament:IGHL)
からなります。
また下関節上腕靭帯は、前部線維(AIGHL)後部線維(PIGHL)腋窩陥凹に分けられます。
それらが、様々な肢位をとっても関節包が緊張して、脱臼を防いでくれているのです。
関節唇
関節唇は、関節窩の周囲を囲っているものです。これがあることで、元々の関節窩の窪み以上に窪みをつくることが出来て、接触が高まり関節の安定性を高めることが出来ます。
関節唇は、野球などのスポーツや脱臼時に傷害されることがしばしばあります。
その理由として関節唇の構造上の問題があります。
皆さんは、関節唇が全て均等に関節窩を囲んでいると考える方も多いと思います。
しかし、実際の関節唇は上の方がゆるいため可動性が高く、下の方がしっかりしているため、可動性が低い特徴があります。
まとめ
今回は肩甲上腕関節の概要・関節窩・関節唇についてまとめてみました。
まずは、全体をざっくり把握してイメージしていくことが解剖学を勉強するには大事なことだと考えています。
なのでまずは遠回りに感じるかもしれませんが、ゆっくりイメージを繰り返していくことで、徒手の操作・運動療法の質が上がると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
是非参考になれば嬉しいです。
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