夢のなかのあの人
夢のなかのあの人
夢の中で見たあの人は、
現実のあの人とは似ても似つかなかったのに、
わたしはひとめであの人だとわかった
その人の姿、表情、話し方、
どれをとっても違うのに、
わたしにはすんなりと
その人がその人であることがわかったのだ
ああもしかしたら人間は、
現実よりも夢の世界を生きているときのほうがずっと、
神に近い目を持ちうるのかもしれない
人の蠢く感情の底に沈むほんとうの姿を、
筋肉で作った笑いの奥に潜む
ろうそくのように覚束ない生命の揺らめきを
夢の中でだけは
余計ながらくたに惑わされず、
魂そのものだけを見つめることができるのかもしれない
姿かたちなんかに囚われずに
目覚めて、わたしは考える
現実を生きる人間であるわたしは、
あの人に出逢ったとき、
果たしてあの人だと気づくことができるのだろうか、と
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