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インタビュー記事〜クラフトビールで開業するまで〜【後編】

こんにちは!
久福ブルーイング本島の久保田です。

☟【前編】の記事はこちら


今回の記事は、クラフトビール醸造所の「久福ブルーイング本島」とパン屋さんの「空to海」がコラボして麦芽粕(ばくがかす)パンができるまでの奮闘をインタビュー形式でまとめました。この取り組みをちゃんと記事にして残したい!そんな気持ちからライターさんにインタビューをお願いしました。これまでの経緯や実際に醸造所を始めて直面した課題について、赤裸々に語っています。

☟このnote記事を読むメリットは、

✅やりたいことに挑戦する勇気をもらえる
✅課題をどのように解決したかのヒントを得られる
✅近距離二拠点という暮らし方に触れられる
 
こんなところでしょうか?
少しでも何かのお役に立てれば幸いです。


後編は、ぼんやりしていた今後の展望や私がnote記事を通して伝えたかった熱い想いがギュギュっと詰まっています。

さて、それでは【後編】のつづきをどうぞ。


***



ーもう1つの大きな課題は何だったのでしょうか?

まなみ:もう1つ大きな課題となったのは、廃棄物についてです。私たちの醸造所では1回の醸造で麦芽を約70~80㎏使います。醸造過程で水分を含んで重さも嵩も増えた麦芽カスは全て廃棄物になります。陸続きのところにあるブルワリーさんだと、畜産農家さんなどで牛や豚の餌の一部や、飼料として廃棄を少なくするという手段もあるのですが、私たちの場合はそうはいきませんでした。

島内には水産業以外の産業がなく、廃棄するためには、輸送費をかけて島から運び、お金をかけて廃棄するという方法しかありませんでした。


ー麦芽カスはどれぐらいの量出てくるのですか?

重さで100㎏ぐらいです。私たちの醸造所が使っているタンクが300ℓなのですが、サイクルでいうと月に2~3回ぐらい醸造していて、そうすると毎月相当な量の麦芽カスが出てきます。島からだと輸送費もかかりますし、家畜もいないのでどうするんだこれ……と頭を抱えていました。悩んでいても毎月毎月、膨大な麦芽カスが出ます。廃棄をするにもお金がかかるので、どうせだったら何か他の物に形を変えられないかなと考え始めました。



そんなある日、夫が海外のブルワリーで麦芽カスをパンにしてアップサイクルしているところがあるという記事をネットで見つけてきました。もともとパンも小麦だし、麦芽とパンは相性がいいかもしれない!とすぐにピンときました。


パンが作れるようになれば…
直売所やイベントなどで、ビールが販売する横に、ビールを造ったときに出た麦芽カスで出来たパンがある。

お客さんと「このビール作った時に出た麦芽カスから作ったでパンなんですよ〜」みたいな話ができて、ビールのおつまみのような感覚でパンも食べられる。

そんなイメージを共有して「すごくいいね!」と夫と興奮しました👨🏼‍🦲👩🏻


ーその後は、旦那さんと相談してパン作りを研究されたのですか

次に私たちがとったアクションは、どうやって麦芽カスを乾燥させて粉にすればよいかを考えることでした。水分を含んだ麦芽カスをそのまま放っておくと、腐敗が進んでしまうので、なるべく早く乾燥させることが必須でした。私たちはパンを作ったことがなかったので、天日干しすればよいのかオーブンで水分を飛ばせばよいのか、その手順が全く分かりませんでした。ただ、「この麦芽カスを使ってパンにしたい!」というゴールだけは明確でした。


そのゴールを目指して、行く先々で出会う人出会う人に「麦芽カスをパンにしたい!」と伝えていたら、2つの大きなご縁に恵まれました。

1つは、「麦芽カスを乾燥させる機械持ってる人いるよ~」と紹介してもらったtamateさん

そしてもう1つは、香川の荘内半島という地域にあるパン屋「空to海」さん

初めて「空to海」さんを訪ねた時、そこで食べたパンにとても感動しました。私はけっこう何でもおいしく感じちゃうタイプなのですが、「空to海」さんのパンは本当に美味しかったんです!!私の中でビールと麦芽カスとここで生まれるパンが、すごくマッチした感じがしました。何よりパンを作ってらっしゃる方もとっても素敵な方でした!その人自身がパンを作るということをめちゃくちゃ楽しんでおられる感じです。お話を聞けば聞くほど、ただおいしいパンを作りたいっていう情熱に胸を打たれました。


こうして久福ブルーイング本島と麦芽カスの乾燥にご協力いただいているtamateさん、そしてめちゃくちゃおいしいパン屋「空to海」さん3社が集まり、麦芽粕パンをつくる「Re; malt」プロジェクトが始まりました。
※「Re; malt」の語源は "モルト" を再生するという意味です。



やっぱり何事も言葉にして人に伝えるって大事なことだなぁと感じています。私たちとしては、ビール造りをスタートして2~3年後ぐらいにパンもスタートできたらいいなと中長期的なプランで頭に入れていました。でもこんなに早く麦芽カスを乾燥させてパンを作ってくれる人に出会えるなんて、正直驚いています。言葉にすることで想いは伝わり、困難な壁も少しずつクリアしていけるんだということを実感しています。

現在は、本島でビールを仕込んだあと、その工程で出た麦芽カスをtamateさんで乾燥してもらい、製粉した粉を使って「空to海」さんでパンを製造してもらっています。パンの品質保持の面から、今は箱にある「空to海」さんで販売している状況ですが、今後はオンライン販売も始める予定なので、ぜひ久福ブルーイング本島のWebページや空to海さんのBASEをチェックいただけますと嬉しいです。


ークラフトビールを創業したとき、地域の人々の反応はいかがでしたか?

まなみ:よく聞かれるのですが、私たちは島出身ではないので、外から入ってきた私たちを受け入れてくれる方もいれば、不安を感じてそっと距離を置いている方もいらっしゃる、というのが実際のところかなと思っています。特に島での商いが島の方々の暮らしにどういう影響を及ぼすのか、というところに関してはシンプルな移住ではないだけに、不安を煽りやすい要素にはなってるのかもしれないなという感じはあります。

もちろん応援してくれる方もたくさんいらっしゃいます! 新しい商品をリリースする度にお店に足を運んでくださって、ビール買ってくれる方もいますし、「次どんなビール出るん?」と楽しみにしてくださる方もいます。地域の方との距離感は、その時々によって変わってくるものだと思っています。何かのタイミングでギュっと縮まることもあるかもしれないし、逆に親しくさせていただいた方から線を引かれるようなこともあるかもしれません。そこに関しては、正直測れないので、私たちは私たちの信じたことをただ粛々とやっていくのみだと思っています。


ー今後の展望や目標があれば教えてください。

このnoteを通して、まだ出逢ったことのない方にも届くといいなと思っています。アクセスの近さに関係なく、瀬戸内やビールに馴染みがない方にも興味を持っていただけたら嬉しいです。ネットでビールを買うでもいいですし、パンを買うでもいいですし。インスタとかWebページにアクセスしたりする中で、いつか瀬戸内行ってみたいな~と思ってもらえるような。いいなと思ってくださる人たちや価値観共有できる人たちに、物だけじゃなくて生き方や暮らしや想いも届けられたらいいなと思っています。この記事に載っている瀬戸内の景色を見て、こういう所で作ってるんだ、いいなぁとか、こういう暮らしをしてる人が作ってるんだ、いいなぁとか、知ってもらえるだけで嬉しいです。それで移住してください! みたいなことは全然思っていません。共感していただいて、読者の皆さんの暮らしが今より少し豊かになるきっかけになれば嬉しいです。


もちろん、本島で造り出した物の良さや価値はちゃんと伝えていきたいです。ビールを四国・瀬戸内の素材を使って手仕込み、手詰めで一つ一つ丁寧に造っていることや、麦芽カスでできたパンは食物繊維も豊富で栄養価が高いことなどは継続して発信していきたいと思っています。そしてこの記事が、そういう入り口になると嬉しいです。


ー最後に。読者の皆さんにメッセージをお願いします。


ここまでお読みいただきありがとうございます。私たちの起業は、夫婦のなんてことないよもやま話からスタートしました。アラフォー×未経験からのスタートは、子どもたちの将来やこれからの生き方、いろんなことを天秤にかけながら、足踏みしながら進んでいたこともあり、スタート地点に立つまでに相当時間を要したように思います。


一方で、一旦歩み始めると「Re; malt」プロジェクトのように、ご縁に繋がれ想定以上に早いタイミングで始められることもありました。


✔︎大切にしていることや、やりたいことは何でもやってみる。

✔︎言葉にして動いていくことで思わぬご縁に繋がることがある。

✔︎何かを始めるのに遅いなんてことはない。


はじめの一歩はめちゃくちゃ小さいくせに、
めちゃくちゃ勇気がいる。


それは大きな成功を遂げるより、
もしかすると偉大な一歩なのかもしれません。


まだスタートをきったばかり。
夢は大きく、でも小さなチャレンジを大切に。
今日も夫婦でビールを醸していきます!


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最後までご愛読ありがとうございました!
幾「久」しく「福」を届ける久福より
愛をこめて

あなたのスキ♡やサポートがとても励みになります!私たちのビールは1バッチごとに個性が出てくると考え、商品にナンバリングをしています。あなたが手に取るビールは何バッチ目のビールになるでしょうか?この一期一会を大切にしたいと思います。