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tsukuru novel

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私の創作小説です。
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#404美術館

中央_3

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私は怖くなった。
この人を心の頼りにしてしまったら、私はもう生きてはゆけない。その想いを掻き消すよう、ワイングラスをグッと傾け、澄んだ赤色のアルコール飲料をツツと心の奥の方まで流し込む。

───────数時間前

何が必要か、どんな服装で行けばいいか、全くわからなかった。そもそも、本当に彼が来てくれるのかすらも、俄かに信じ難い話だ。

それでも、刺激がない日々に突然舞い込んだ一枚

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中央_2

封筒を開けると、そこにはホテルのカードキーのみ入っている。
装飾は何一つ施されていないけど、絶妙なクリーム色が上品さを出している封筒だった。

カードキーに刻まれたそのホテルの名前は、誰でも知っているようなホテルだった。勿論大学生の私は宿泊は愚か、ラウンジにだって足を踏み入れたことはない。

この封筒はご褒美、と言いながら年配の男性が私にくれたものだった。
守るべき自身とプライドが無い私は、後腐れ

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中央_1

中央_1

水曜、平日ど真ん中の午前十時。
ワンルームに無理やり押し込んだ、お気に入りのソファに寝転んで、天井を仰ぐ。

青山の大通りを入ってすぐにあった、今はもうシャッターを下ろしている家具屋さんで一目惚れをしたソファ。
ダークグリーンに染められた合皮が、レースカーテンを通した太陽光を僅かに浴びて艶やかな表情を見せる。

本当ならば今日は出勤予定だったが、数日前有給を取った。有給をいつでも好きなタイミングで

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