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「息子の涙のその訳は?」の話

ある日の夕食後。

私が二階でくつろいでいると

息子とかっちゃんがキャッキャウフフしている声が下から聞こえた。

「……クローバーは?」

「めちゃいい!」

(何の話だ……?ま、いっか)

しばらくして

「お母さん!アイロンのかけ方教えて〜」

「ほう」

家庭科の授業でエプロンを作ったらしい。


そう言えば、前に

「お母さん!どれがいいかなあ?」

「えぇ〜っ!?今はこんなたくさんの中から選べるんじゃ?」

こんなのを学校から持って帰ってきた。


「お母さんも作ったん?」

「作った!」

「どんなヤツ?」

「緑の色でスヌーピーだったな……何の選択肢もなかったと思う……」

「迷うなあ〜」

などと話しながら、選んだ。

後は、プリント出来る布で形を作り、それをアイロンで貼り付けるだけだという。


(アイロンかける前でシワッシワ)

私は思った。

(せっかくデザイン、カッコいいヤツなのに……ポッケにこれをつけて……蛇足ってヤツじゃないのか……)

とちらりと脳内をよぎらない訳ではなかったが、私は大人なので言わなかった。

授業の一貫では……致し方なし。


すると……

かっちゃんが一言。


「つけん方がカッコいいんじゃない?」


(アー……イッチャッタネ)


「〇〇もそう思う」


え……そうなん?


なら、まあいいけど。

しかし、問題はここからだった。


「お母さん……見て……」

しょんぼりした息子がエプロンの裏側を見せてくれた。

お分かり頂けただろうか?



「この型紙プリントは、洗うときれいに消えます」


ネコ……
オマエ……
何を笑顔で……


消されるんやぞ?


いや、違う。

奴は何もかんも分かってる。


『子供達が無事にエプロンを仕上げ、それを見届けるまでがボクの一生!』


あぁ……
声が……
声が聞こえる(幻聴)。


「悲しい……」

ボソッと呟く息子。
 
「や……これは悲しいよな……ずっと君らが作るのを……見守ってくれてたんじゃ……」

うっかり息子の感情を煽ってしまう私。


泣き出す息子。
しんみりするつくね。
韓流ドラマを見てニヤついてるかっちゃん。


(何で……消える物にキャラをつけるんだ……)

製作サイドォーー!!

はっ……まさか!?
そこまでが、そこまでが授業の一貫だと?

このネコを己の手で消す……
そこまでが……
そんな……


キャラもんは鬼門なんだ……
 
幼稚園の時にお母さんが作ってくれた上靴入れ……
シャボン玉してる女の子が刺繍されてたんだ。

それをお母さんは卒園したから

「もう捨てるよ」
 
って言うんだよ。

「え……何でそんな……」

「もう次は小学生じゃから、新しいのを買うし、とっといても仕方ないじゃろ」

「え……ヒドい……」

号泣したね。


そんな私の息子は、保育園の時に、名探偵コナンの歯ブラシを捨てたら

「何でコナン君の歯ブラシ捨てるん?」

「え……もうボロボロじゃし」

「ヒドい……可哀想……」


(えぇ……めんどくさ……)

と思いかけて、思い出す。
何十年前の自分の姿を。

(似てるな……私の息子だもんな)
 

洗濯後、息子が再びあらわれた。

ネコの消えたエプロンの裏側を見せ

「悲しい……」
 
と、少ししょんぼりしていた。

が、ひもを後ろで結ぶのに悪戦苦闘しており、割とすぐそれどころではなくなった。


「スゴい難しい……どうやってやるん?」

「前で結ぶのと同じように……」

「え……」

「鏡見ながらやってみたら?」

「出来ん……」

「ごめん、私も、自分のをする事は出来るけど、人にこのやり方を教える事が出来そうにない……明日は前で結ぶか、友達に結んでもらってくれ」

「分かった」


ネコよ、さらば。




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