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人助けが疲れちゃうときは、形を変えて【オンラインナースのお仕事】

※この記事は、双極性障害の朝日さんの原稿をもとに、看護師の私の視点を入れ書きこしたエッセイです。


まわりに困った人がたくさんいると、私は仕事を放っておいて助けに行ってしまうだろうから、それだと疲れてしまう。だから、まずは自分の悩みと、ブックライターや、彼女の周りにいる人の悩みを解決する原稿を書けばいい。
そして、ブックライターが「友人にこんな人がいて、こんなことを言っていたんだけど」とか言って話し始めると場が和むと思う。別に私の言葉じゃなくて、そのケースに当てはまるものが伝わればいいと思う。
口伝えで、誰かの重荷が少しでも楽になるのなら、そういう人助けもありだなと思う。それ自体も私にとっての薬になる。

朝日さんの原稿より ※ブックライター=つくし

人助けって、直接自分が動くだけではないんですよね。間接的な「口伝え」それも十分な人助けであり、私にとっては大切な仕事でした。

以前勤めていた病棟は、4チーム制。1チームにつきリーダーがひとり、メンバーがだいたい4,5人で形成されています。大変なのは自分がリーダーで、メンバーが新人ナースしかいない日です。

「はるかさん、患者さんを怒らせてしまいました」
「はるかさん、先生になんて報告したらいいか、わかりません」

うー…、もう、全部私が対応しちゃった方が早いだろうな…と体が動きそうになってしまうのですが、それをやると、自分の仕事が進まない。なにより、後輩たちの成長につながらない。はやる気持ちをグッと抑えます。

そして、一緒に考える。でも、患者さんのところに出向くのも、ドクターに報告するのも、後輩に頑張ってもらいます。心中穏やかではありません。私の考え方で本当に大丈夫かな、患者さんだけでなく後輩を傷つけることになったらどうしよう、ドクターにこちらの意図が伝わるかな…などなど。私が全て請け負った方が、精神的にも楽なのです。

それでも「もう一度患者さんと話して、今抱えている心配事を知ることができました」「先生から、経過観察でよいと言われました」と、後輩から報告をもらうたびに、これでよかったと胸をなでおろします。

なんでもひとりでやらなくちゃと思っていた時期もあります。周囲の力を信じられない自分がいたからです。でも、いつまでたっても私だけが退社できなくて、それは自分のせいなのに「みんな手伝ってくれない」とか思ってしまうようになって。メンバーとの関係も悪くなるばかり。信頼しないことは簡単、信頼することはすごく難しい。

でも、勇気を出して信じてよかったです。私が動かなくても、口伝えで後輩が頑張ってくれて、患者さんの安全が守られたり、安心を届けられるのなら、それも立派な仕事。何より「自分にもできた」という後輩の顔を見ると、温かな気持ちになりました。

もちろん、上手くいかなかったことも数知れず。しかし、その過程を経て、後輩がグングンと成長していき、患者さんから「ここの病棟の人、みんな優しいですね」と言っていただけると、それだけで心が満たされました。人助けの形は、ひとそれぞれだと思います。ぽーんと助けに行って、さらっと自分の仕事に戻れる人もいるでしょう。きっと、自分にとって心地よいスタンスがあるはずです。

今、口伝えとは形は違うけれども、朝日さんが原稿を書いて、それをもとに私がエッセイを書く。その記事に「ありがとう」のコメントがつく。その感謝の言葉を、私が朝日さんに届ける。ものすごく時間もかかるし遠回りだけど、朝日さんにとっては、これくらい複雑な方が元気でいられるのではないかなと思っています。


※このマガジンは、個人が特定されないように書こうと留意しています。でも、朝日さんは「別に自分だと気づかれても構わない。それよりも、同じ病気の人を救えるのならという思いが優先する」とのこと。関係者の方は、そっと見守ってくださると幸いです。


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