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『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』書評

「この間、風邪ひいて、39度まで上がったよ」
「そりゃあ、大変だったね」

ほとんどの人が風邪の経験者。
熱が出る前のガタガタと震える悪寒や、高熱時のうなだれよう、解熱剤を内服した後のパジャマまでびしゃびしゃになる汗の不快感。
「熱が出た」と聞けば、それを瞬時に理解することができます。

でも、それがうつの場合。
なんと声をかけていいのかわからない、というのが実のところではないでしょうか。
「頑張ってねって、言っちゃダメなんだよね…?」
「元気そうに見えるけど、本当に病気なの…?」
理解したくても、経験したことがなければ、分かってあげることができません。

そして、当事者は、身体が辛いのはもちろんのこと、それを上手く表現できないことや、周りに気を配る余裕がなく人間関係が上手くいかなくなっていく苦しさを抱えているのです。

本書は、当事者の声が集められて本になっています。
優しいタッチのまんがでうつの「感覚」について描かれ、担当した漫画家さんもうつ症状を経験。

医療者が「こうするといいですよ」「これをしてみましょう」とアドバイスするのではなく、当事者の「こうやって過ごしました」「こんな言葉掛けがうれしかった」という声が掲載されているので、プレッシャーを感じず「自分だけじゃないんだ」と肩の力を抜いて読み進められるはずです。

本書に集められた当事者の声は以下の通り。
「体が重く、いつも家の中で壁を伝って歩いていた」
「体調の波が読めなくて、仕事や予定を直前にキャンセルせざるを得なく、申し訳なさから約束をしなくなった」
「楽しみや希望を奪われたような症状が、うつの症状の中で一番辛かった」

うつの「感覚」が言葉になり、イラストとなって目に入ってくることで、私は初めて、うつの症状にふれた気がしました。

病気が目に見えない精神疾患は「わかってほしい」「わかってあげたい」でも「上手く伝えられない」「なんと声をかけたらいいだろう」と当事者と支援者が「分かり合えない」状態となってしまうのが、さらに孤独を強めてしまうといいます。

私が理解したような気になっていても、当事者の心を本当の意味で理解することは難しい。
しかしながら「知る」ことが、寄り添える一歩となることは信じていたいのです。
本書が一人でも多くの方の手に届くことを願っています。


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【プロフィール】
築紫悠(つくしはるか)
看護師歴13年 産婦人科・新生児集中治療室・整形外科勤務経験あり。 周産期・周手術期・悪性腫瘍・終末期医療について深く学び、体と心の痛みを抱える患者・家族に寄り添う看護を身に着ける。
自分を犠牲にしながら多忙を極めていたが、パートナーの闘病や子育てを通じ「本当の健康とは何か」を学び始め、退職を決意。 現在は家庭に重きを置きながら、オンラインナースとして「頑張りすぎて体と心を壊す人を減らしたい」というビジョンの下活動中。

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