『老人ホテル』(原田ひ香・著)
題名から、老人が経営するホテルなのか、利用が老人限定のホテルなのか、それが気になって(?)手にした『老人ホテル』(光文社・刊)です。
表紙にホテルの清掃係と思われるモップとバケツをもった若い女性、裏表紙にドアから顔を出す高齢の女性が描かれており、主人公は表紙の若い女性のようです。
そう思って本を開くと、
と、始まります。
天使???
よく見ると、天使に「えんじぇる」とフリガナがついていました。
この天使(えんじぇる)が、表紙の若い女性で、その人が、裏表紙の老女のようです。
天使(えんじぇる)は、以前話題になった“キラキラネーム”の一つでしょう。途中で分かる兄弟姉妹の名も、キラキラでした。
何度も「てんし」と読んでいましたが、天使を想像せず、主人公として読むので困ることはありませんでした。
物語は、ホテルのスタッフと、そこに“暮らす”老人とで進みます。
このホテルが「老人ホテル」と呼ばれるのは、
と、ホテルを生活の場とする長期滞在の老人が利用しているからです。
天使が、清掃員としてホテルで働くのは、一人の老人(綾小路光子)と会い、教えを得るためです。
生活保護を受ける大家族で育った日村天使は、社会のことを知らずに育ちました。
ホテルに長期滞在する老人は、経験豊かですが、何か影を持っています。
天使と老人との“交流”が始まり、最初は分からないことばかりですが、少しずつ変わっていきます。
物語の後半(終盤?)、やっと光子と話ができるようになり、さらに“指南”を受けるようになります。
生活や社会のことを、何も知らない、何もできない天使に、光子が一つずつ教えて、実行させていきます。
天使は、素直に教えを実行し、“結果”が出ます。そして次へ…。帯にあった「投資版マイフェアレディ 」へと成長していきます。
物語の終わりは…。
ハッピーエンドではなく、ちょっと不穏な…。
「節約、投資、女の誇り。老女が授けてくれたのは、独りでも生きている希望。」
老人や大人よりも、若者にお薦めの物語でした。
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◇『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』(原田ひ香・著)(2022/02/23 集団「Emication」)
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