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映画『ミナリ』成功を信じアメリカの大地を耕す

1980年代のアメリカ。農業での成功を信じ突き進む父親。まだ小さい息子が父親を見つめる瞳。韓国系移民家族の日常とたくましく生きる姿が描かれます。監督・脚本リー・アイザック・チョン、音楽エミール・モッセリ、2020年製作、アメリカ映画。A24制作。

第93回アカデミー賞は作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞(ユン・ヨジョン)、脚本賞、作曲賞の6部門にノミネートされています。

レーガン政権下のアメリカ、アーカンソー州。ジェイコブ(スティーヴン・ユァン)とモニカ(ハン・イェリ)夫婦と、その子供達アン(ネイル・ケイト・チョー)とデビッド(アラン・キム)の韓国系移民家族が引っ越してきます。ジェイコブは農業での成功を夢見ていたますが、すべて一人で決断する夫に妻は不満をかかえています。住まいは古いトレイラーハウスで、息子のデビットが心臓に病を抱えているにもかかわらず、病院まではとても遠い。
夫婦は子供たちの面倒をみてもらうために韓国からモニカの母親スンジャ(ユン・ヨジョン)を呼び寄せます。破天荒で愛情あふれるスンジャに小さいデビットも懐いて、いよいよ収穫の時期を迎えるのですが...

学校に行くか行かないかの年齢のデビッド。彼の描き方がとても良かったです。全くの新人であったアラン・キムの、ニコニコしすぎない、時には無表情な、それでいてじっと考えているような瞳が子供らしい。

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韓国から呼び寄せたスンジャの登場で、疲弊していた家族の曇った色に明るさが加わります。スンジャは英語はほとんど話せません。読むこともできません。お菓子作りもできませんが、土産の花札を子供たちに教え、一緒に夢中になり遊びます。

近づく事を禁止されている川辺に、韓国から持ってきたミナリ(セリ)の種を植えるスンジャ。

初めはスンジャを避けていたデビッドも、親とは別の余裕ある愛情に包まれて、すっかり懐いてしまいます。

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何もない土地での農業は精神的にも肉体的にも厳しく、水が枯れてしまったことで夫婦は金銭的にも苦難を強いられます。綱渡りのようなギリギリの生活。

大変な苦労の末やっと収穫した野菜も、買ってもらえない。

「成功する姿を(子供に)見せてやりたいんだ」

それでも、農業をあきらめないジェイコブ。

夫婦の関係も修復不可能と思われる状態になってしまいます。

ここまでは「日常生活を丁寧に描いている作品」という印象でしたが、終盤に起こる悲劇は観るものに衝撃を与えます。

それでも、家族は立ち上がり、諦めず大地を耕す。

川辺にはスンジャが植えたミナリが

根を張って育っていました。


1980年代

毎年3万人を超える移民が韓国からアメリカに渡りました。

土地に根を張り、諦めずに生きた人々。

その両親のひたむきな努力を

小さな男の子はしっかりと見ていました。

小さいデビッドはチョン監督自身がモデルで

この作品はアーカンソー州の農場で育った監督とその家族の物語です。



追記(2021年4月26日)

第93回アカデミー賞助演女優賞はユン・ヨジョンさんが受賞されました。

おめでとうございます!





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