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またあくる日

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振り返ったり、立ち止まったり、先々に思いを巡らせたりして、考えたことを書くつもりです。
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記事一覧

さよならと言う

子どもは保育園に通っている。
通っている保育園は、いいところだと思う。
先生方は優しく、給食は極端な偏食の子どももおいしいと喜び、園庭はないが毎日お散歩に連れて行ってたくさん遊ばせてもらっている。
散歩に行けない天候の日でも、絵本や紙芝居を読んでもらって楽しそう。

でも、保育園で、「男の子はカッコイイ」「女の子はかわいい」を覚えてきたなあ、と感じる。
父である夫には「お父さんは青とか、カッコイイ

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あのホーム

いまの会社に転職して、一年目のこと。
春からしばらくは楽しく面白く、仕事を覚えていこうと思えていた。
でも夏から状況はじわじわ変わり、秋になるとどうにもならない繁忙期の波で溺れ始めた。
先輩たちに迷惑をかけている自覚があった。
仕事が遅いしクオリティも低い。
作ったものに赤字がびっしり入り、それを直すのに精一杯で、また次の仕事、並行してまた次…
本当に、『溺れかけている』状態でいた。

残っても仕

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想像してごらん

私が操れる言語は今のところ日本語だけである。
英語、という科目の成績が悪かったということはないけれど、文法も単語も本当にまったく記憶に残っていない。
きれいさっぱり忘れている。
日本における英語教育の敗北、を体現しているかのよう(もちろん、能力や興味や努力の不足であることは理解しています)。

そんな私だけれど、高校1年生のときにビートルズの『imagine』を訳してきなさい、という課題が出された

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クレープを焼く週末

クレープを焼いた。
2週連続で週末に焼いた。

うちの母が作ってくれたお菓子は数あれど、好きなお菓子ランキングで確実に上位だな…と思うのがクレープである。いや迷うけど。
でもブラマンジェより、スイートポテトより、りんごのケーキより、やっぱりクレープが好きだなと思う。

クレープはよく、大量に焼かれ、包まれ、誰かの家にお邪魔する際などの手土産になった。
具材としては生クリーム、合わせるフルーツはバナ

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脈絡なく、福井のこと

都道府県別の幸福度ランキングというのが存在する。
東洋経済新報社が発表しているもので、この調査で3回連続1位に輝いたのは、福井県だ。
俄然、興味が湧く。福井県に対して。

ちなみに、私は今は東京都に住んでいるのだけど、東京都は2位である。

5分野(健康、文化、仕事、生活、教育)でのランキングと、総合的なランキングが出されているのだが、当たり前のように東京都の『文化』分野は1位。
でも、『生活』は

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言葉と歌声

私は日本語しか喋れないし書けない。
学生時代に英語の成績は特に悪くはなかったが、好きなのは辞書片手に和訳する作業で、結局好きなのは日本語だった。
高校1年生の頃に英語の担当教師が若い情熱的な女性の先生で、授業で出された課題『imagine』の歌詞を訳す、の出来栄えをすごく褒めてくださったのを覚えている。自分の能力の範囲内で最大限に素敵な和訳にしたい、と頭をひねったのでうれしかった。
たとえば英語が

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サンタクロースイズカミング

クリスマス。
今年は平日で、会社員の私はいつも通りに出社していたため、子どもにサンタさんは来たか、と複数の人から尋ねられた。
「いえ、今年はあわてんぼうのサンタクロースが、早めに来てくれました」
と答えると、あぁそうだね、今年はね、平日だもんね、との反応が返ってきた。

子どものところへ、サンタクロースは土曜の夜に来たらしく、日曜の朝には枕元にプレゼントが置かれていた。
子どものリクエストは、はら

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週末

子どもは保育園に通っていて、私は共働きの母である。
朝、目を覚ますと子どもは時々、「きょう、ほいくえんは?」と聞いてくる。
平日には「今日、保育園だよ」と、休日には「今日はお休みだよ」と、答える。
「今日保育園だよ」と答えた時に「やだ…」と言ったこともこれまでに何度かあるのだけど、先週は「やったー、ほいくえん!」と言っていた。ここまで前向きな反応は初だったのでちょっと驚いた。どんな心境の変化だった

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女の子

私のお腹に娘がいるとき、ある人が話していた。
「男の子は恋人、女の子は王子様、っていうよ」と。
どういう意味か聞くと、「男の子を産んだら母親にとっては永遠の恋人のように可愛いし、女の子を産んだら自分の夢を叶えてくれる存在になる、って意味」とのこと。
でも、ピンとこなかった。

子どもと親は、別の人間だし、各々の人生を歩くものだよなあ。
子どもには子どもの意志が、あるはずで。

子どもは親のものでは

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うきうきするコート

おしゃれな人間ではないけど、服を選んで買ったり、服の色の組み合わせを考えるのはわりと好きだった。
出産して、仕事にも復帰して、新しい服を買うこともあまりなく(子連れで出かけると、試着室に入るというそれだけのことが、恐ろしく大変だからだ。抱っこ紐で行けばまず無理だし、ベビーカーも試着室には入らない。大人が複数人いない限り、試着は不可能になる。子が歩き出せばそれはそれで困難を極める、試着室におとなしく

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空気も風も、人の心も

「空気を読む」という言葉が広まり、多くの人が使うようになった頃は、たしかまだ制服を着ていた。
流行りの言葉となったらしく、あっというまに周囲で「空気読めよー」「あいつは空気が読めないから」という台詞が聞かれるようになった。

「空気読めよ」と、目の前の他人に対してなんの考えもなく陽気に吐き出せる人の、「空気の読めなさ」が、気になる。
気になるというより腹立たしくて、信用ならなくて、嫌悪する。とても

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M先生

小学二年生のときの担任のM先生は、若い女性だった。
すらりと背が高く、ほっそりとしていて、卵型のきれいな輪郭で、眉のカーブが優しく、目は涼しげでいかにも理知的だった。
声にはあたたかさと丸みがあり、口調も穏やかだったと記憶している。

M先生は、宿題として日記を書くように言っていた。
本を読むことと文章を書くことが好きだった私は、いつも楽しんでその宿題に取り組んだ。

あるとき、学級だよりに、私の

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あのとき、本当は何を考えていたんだろう

私には姉がひとりいて、姉とは誕生月が同じだ。
子どもの頃は毎年のように、誕生月の頃に、遊園地に連れて行ってもらった。それが、誕生日プレゼント。
わざわざ車とフェリーを使って、暮らしていたのと違う県にある、遊園地へ。
園内のレストランは高いしおいしくないからと、すぐ近くのお弁当屋さんで安っぽい容器に入ったお弁当を買ってから入園するのが定番だった。カラフルなプラスチックの容器に、海苔で巻いたおにぎりが

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