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ショートショート。のようなもの#24『鼻人間』

 今から3日程前からだろうか?突然、私の鼻が歌い出したのは…。
 鼻が鼻の穴を自らの口のように使いパクパクしながら陽気に何かを口ずさんでいる。
 私は病院へ行こうかとも考えたが、背中に何かが貼り付いていて身動きがとれない。
 仕方がないので私は諦めて、しばらく様子をみることにした。

 それから一週間程経つと私の鼻の穴、いや鼻の口からは舌が生えてきた。私はぎょっとした。
 恐らく歌詞を上手く発音するために発達したのだろう。
 しかし、やはり病院へはいけない。背中に何かが貼り付いて身動きかとれないから。

 その日以降、私の鼻は日に日に成長していった。顔全体の輪郭が出来、首が生え、胴体が出来て、3日もしないうちにすっかりヒトの身体のような代物となった。
 私はこいつを鼻人間と名付けた。

 数日が経つと、えらいもので少しづつこいつの存在にも慣れてきた私は、気分が沈んでるときには明るい歌をリクエストしたりもした。
 すると鼻人間は、アップテンポな歌を愉しそうに高らかに歌い上げてくれた。

 がしかし、そんな生活が続いたある日、1人で歌っているのがつまらないと思ったのか?はたまた歌の幅を広げたかったのか?
 気がついたら私の鼻人間はいつの間にか合唱団を結成していて、私の顔面は沢山の鼻人間でごった返していた。
 私はさすがに気分が悪くなりその場で嘔吐した。
 誰かに背中をさすってもらいたいが、それもできない。
 背中に貼り付いている大きなモノが邪魔になるからだ。
 なによりそんなことができるくらいならとっくの昔に病院へ行っている。

 しかし、それは絶対に叶わない。
 叶うわけがない、手術でもしない限りは。

 なぜなら、私はこの背中に貼り付いてる大きな顔面の鼻人間なのだから。

                  ~Fin~

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