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ドキッ☆ルームメイトと百合関係?!始めてのドミトリー生活でソッチも初体験なの?!


漫画家である私が、まるで漫画のような体験をした。

あれは忘れもしない、関東大型台風直撃10/12のできごと。

私はとある事情で、
暫定的に実家のお世話になっていたのだけど、
急遽実家を出なくてはいけなくなった。
よりにもよって、大型台風直撃10/12の日に。

関東に大型台風が直撃しているのに、実家には帰れない。

マク○ナルドも10時に閉店し、
コンビニも午前中に閉店。
カフェもファミレスもスーパーも当然閉まっている。

もう行く場所がない。
雨も風も強くなる一方だ。

急遽南千住のビジネスホテルに逃げ込み、
次の住まいを探した。

シェアハウス運営をしている友人、
増田さんに連絡をしたところ、

「東京都○○区のシェアハウス、『コロコロ』が空いてるからおいで」

と即答していただいた。

台風をビジネスホテルでやり過ごし、
台風が過ぎた10/14の深夜からコロコロに宿泊、
10/15から正式に契約が決まった。

入居が決まった部屋は、
一部屋を2人で使用する女子ドミトリー。
一部屋に二段ベッドが入っており、
空いているスペースには荷物が置けるようになっている。
収納スペースにも工夫が施されていて、
快適そうだなと思った。

ルームメイトは今日は帰りが遅くなるから
挨拶は後でね、という話になり、
取り急ぎ先に自分の荷物を部屋に入れた。

シェアハウスの一階リビングには
連絡用のノートが置いてあり、
私はシェアハウスのメンバー宛に自己紹介を書いた。

シェアハウス生活もドミトリー生活も初めてで、
少し緊張を解こうかな、なんて思って、
冗談交じりに
「ルームメイトと百合展開になっちゃうかも(ウソです)」
なんて書いてみた。

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あのときは、まさかあんなことになるなんて、
思いもしなかった…。


◇◇◇◇◇◇◇

王子月乃(オウジツキノ)/つきのゆ@セラピー漫画家です。
現在、最新作の百合漫画を執筆中です。

それでは本編の続きをどうぞ。

2020/1/30追記:
諸事情がありましたので、一部内容に修正を加えました。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓

【注意】
この物語はフィクションであり、
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
すべてはホントでウソかもね?
(by. 米米CLUB)

◇◇◇◇◇◇◇


【10月16日】

ルームメイトの名前は「ゆきさん」。

柔らかい雰囲気で、ゆったりと話す女性。
透明感があり穏やかで、
一緒にいると自分の気持ちもリラックスするような人だった。

長い髪を丁寧にセットして、ゆるふわにアップしている。
淡いピンクのモヘアニットが似合うどころか一体化している。
しかも華奢で線が細い。うさぎをイメージさせる。
いかにも「女の子と一緒にいるぞ!」って感じ。

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ゆきさんは製図のお仕事をしていて、
帰りが遅く、朝は早いとのことだった。
お部屋が片付いてなくてごめんなさいと言われたので、
片付けはゆっくりでいいですよ、と伝えた。

私も急な引っ越しで気持ちが追いついてこない。
ちょうど良かった。わたしもゆっくりの方が助かった。

私は急な引っ越しで
着るものも選んでいる余裕がなかったから、
ワークマンの蛍光色レインスーツを着ていた。
落ち着いたら私もゆきさんのような、
女性らしいニットを買おうと思った。


◆◆◆

【10月19日】

ゆきさんと一緒に部屋の荷物整理をしていたとき、
ゆきさんと私が使っている
化粧水と歯磨き粉が同じなことにビックリした。

ドクダミ化粧水はまだメジャーだから分かるのだけど、
パックス石鹸歯磨き粉は、
知る人ぞ知る隠れた名品なのだ。

石鹸歯磨き粉を色々と試して、
最終的に辿り着く高みの境地!みたいな歯磨き粉。
それがパックス石鹸歯磨き粉。

思わず口からこんなセリフが出ていた。

「すごい!私、この歯磨き粉を使ってる人に
出会ったことがないの!
ルームメイトが使ってるとかすごい偶然!」


ゆきさんも驚いていた。

「ホント!化粧水はともかく、
歯磨き粉が同じって驚いちゃいました!
なかなか売ってないですもんね、コレ」

私より年下だからか、ゆきさんは私に敬語を使っていた。

それからお互い
使っているコスメの話などで盛り上がりつつ、
荷物整理を続けた。

フェイスパックが好きだとか、
このボディソープオススメだよとか、
料理やお菓子作りが趣味だとか……。
ああ……、すごい女子会感……。
会話にお花が咲いてるお……、と思った。

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私は数年間
起業家として活動していたので、
当然ながら起業家との交流が圧倒的に多かった。

起業家との会話は基本的に、
ゴールからの逆算だの、
まずは結論から話すだの、
解決法はこうだの、
現実的で合理的で理論的であることが求められる。

交流する人は圧倒的に男性が多く、
女性と関わるときも起業家が多かったので、
純粋な女子トークと言ったことを
あまりやってこなかった気がする。
いわゆるとりとめもない話ってヤツを。

巷では
「女子トークは中身がない」だとか言われがちだけど、
ゆきさんと話していると、
自分の乾いた心に
幸せなお水が入ってくるような感覚があった。
心が潤う……。
これが「満たされる」ってヤツか……、と思った。


◆◆◆

【10月31日】

あれから私はありがたいことに、
急にお仕事を頂いたりなどで
慌ただしい日が続いた。

私はその日までには就寝することにしていて、
ゆきさんとは生活サイクルが合わなかった。
ゆきさんが帰宅する頃には私は寝ていて、
私が起きたころにはゆきさんは外出していた。
ゆきさんの睡眠時間は短かった。


私が寝ている二段ベッドの上にはカーテンが付いていて、
就寝時はアイマスクと耳栓をつけて眠るので、
私はゆきさんの出入りに気がつくことなく爆睡していた。

かつ、ゆきさんは実家と行き来したり、
休日も外出して過ごすのが好きなようで、
シェアハウス内で一緒になる機会は少なかった。

そんななかで、
ゆきさんが実は
11/末でコロコロを退去するという話を聞いた。

ゆきさんからは以前

「実は仕事を変えようかなと思っていて。
職場に近いからコロコロに住んでいたので、
遠くなるなら住む場所は職場の近くがいいかなあ……」

なんて話を聞いていた。

管理人の増田さんいわく、
シェアハウスは人の出入りが激しいらしい。
同じ場所に何年も住み続けるよりも、
一定期間で他のシェアハウスを点々とする人が多いのだそうだ。
だからメンバーの入れ替わりはごく普通のことらしかった。

◆◆◆

【11月18日】

私はあのあと
更に出張などが入ってしまい、
ゆきさんと会話する機会がほとんどなかった。

その日は久しぶりにゆきさんがお昼頃にコロコロにいて、
「お菓子を買ってきたので一緒に食べませんか?」と
シュークリームをごちそうになった。

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あれからゆきさんは製図の仕事を退社して、
次の就職先を探しつつ、
同時に次のシェアハウスも探しているとのことで、
生活サイクルが変わったようだった。

荷物を少しずつ実家に預けたり、
そのまま実家に泊まるなどが続いていたので、
相変わらずゆきさんとは一緒になる機会は少なかった。

その日はゆきさんと久しぶりに、
二人でコーヒーとシュークリームを頂きながら、
一階のリビングでお話をした。

ゆきさんは遠慮がちに口を開いた。

「次の仕事は何がいいんだろう?
少し悩んでしまって。
ダメですかね、この年でこんな話するなんて……」

私が自分を振り返ったときに、
ゆきさんくらいの年齢のときも
ゆきさん以上に揺れていた気がする。

私にこの仕事は本当に向いているのだろうか?だとか、
今の交際相手は本当に好きな相手なんだろうか?だとか、
私という人間はどういう人間なんだろうか?だとか、
ひたすら悩みまくりだったし、
一般的に言われるような
立派な大人なんかじゃなかったし、
今もそうかも知れない。

私はゆきさんに自分の体験談を話した。

「私は一時期とある事情で、
出版社でバイトしたり、
スーパーや家電量販店でパートをしたり、
仕事を転々としていたんだけど、
天職だ!とは思わなかったけど、
どれも貴重な体験だったと思ってるよ。

一度起業したあとでパートに戻ると、
今までとは違う視点で経営を見れるようになる。
例えば店長はどうやって
チームの連携を取っているのかなどが
分かるようになる。

お惣菜の仕込みも上手くなったし、
パートのおばちゃんもみんな優しかったよ。
そう考えると
無駄だった経験はないなー。
全てに意味があったと今は思える。

気軽に色々チャレンジしていいんじゃない?
イヤだったらスパッと辞められるしね(笑)」

若い頃はこういう台詞に対して

「キレイゴト言いやがって!」

みたいな気持ちが芽生えてたけど、
今はぐるっと一周回って
やっぱり全てのことって意味があるんだなあと
素直に思える。

だからストレートにこういう話をゆきさんに伝えた。
漫画の展開で言うと王道ってヤツなのかしら。


ゆきさんは

「元気でてきた!ありがとうございます!」

と言って、次のシェアハウスの内見に向かった。

ゆきさんが元気になったと言ってくれて、
なんだか自分も元気になった。


◆◆◆

【11月29日】

ゆきさんの次のシェアハウスが決まって、
引っ越し作業に入っていた。

私はゆきさんの布団の圧縮などのお手伝いをしつつ、
部屋で仕事をしていた。

コロコロの契約は明日までだから、
明日までには荷物を全部まとめて
次のシェアハウスに運ばなければならない。
それなのに、どうもゆきさんの手が止まるのだ。

ゆきさんは

「王子さんはなんで漫画家になりたいって思ったんですか?」

「王子さんはどんなふうに自分に合った職業を見つけたんですか?」

と、
色々と質問をしてきた。
完全に引っ越し作業が止まっている。

おそらく、
ゆきさんのニーズは別にあるんだと思った。
ゆきさんの心の扉が開こうとしているんだと思った。

控えめな彼女は、
あまりこういう話をしてこなかったし、
お互い時間のタイミングも合わなかった。
明日で彼女は完全に引っ越ししてしまう。
彼女のニーズを満たせるのは今しかないのだ。

だから私は彼女の質問に色々と答えた。
二時間近くは話したような気がする。

実は当日、
新しい入居者が来るということもあって、
歓送迎会を催すことになっていた。

扉の外から増田さんが

「ゆきちゃん、もうすぐ始まるよー」

と声をかけてきた。
歓送迎会の時間になったのだ。
主役がいないのでは始められない。

私は仕事が押していたので、
後で軽く挨拶に行こうと思った。

歓送迎会が終わって、
片付けが終わってからも、
ゆきさんはまだ話がしたいようだった。

他の残ったシェアハウスメンバーと一緒に、
ゆきさんと一階リビングで会話が続いていた。
たまたま管理人の増田さん以外は全員女性だった。

ゆきさんは

「わたしビールが飲みたいです!」

と言って、
増田さんとコンビニに買い物に行った。

相変わらずゆきさんの引っ越し荷物は全然片付いていなくて、
今日引っ越し先に運ぶ予定だった荷物も
結局まだ運んでいないということが発覚し、
大丈夫なのか!?と思ったが、
なんだかここに
ゆきさんのニーズがあるような気がしていた。

ゆきさんの本音中の本音。
ゆきさんは本当は何がしたいのか?

ゆきさんと増田さんがコンビニから戻ると、
こたつの上は甘いお菓子とワインでてんこ盛りになった。
イカのくんせいとか、焼酎とか一切ない。超、女子会っぽい!

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「ボジョレー・ヌーボー解禁だって!
みんなで飲んでおきたいです!
だからワインにしちゃった!」

ゆきさんはグラスを持ってきて、
メンバー全員に
ボジョレー・ヌーボーをついだ。
甘いお菓子を食べながらみんなで乾杯した。

そして、ゆきさんの口からこんな台詞が。

「わたし、コロコロに来て今日が一番楽しい!」
「わたし、ずっと女子会がしたかったの!」
「こんなふうに、みんなとお話がしたかった!」

ゆきさんのニーズはこれか!と思った。
彼女のニーズはこんなに
ささやかなものだったんだ。

それなのに、私、ルームメイトだったのに、
彼女のニーズを
ずっと叶えてあげられてなかったんだなと思った。

だから深夜2時ごろまで一緒におしゃべりしながら飲んだ。
とりとめのない話をいっぱいした。
私もずっと、こういうことしたかった気がする。

男性の話、恋愛の話、仕事の話、年齢の話、
あんなこと、こんなこと……。

巷で言われる

「役に立たない身にならないガールズトーク」

ってヤツをいっぱいした。


不思議なことに、ものすごく満たされる時間だった。
心に幸せなお水が溜まっていく気がした。
人間との交際に見切りをつけてバイブを彼氏にした話とか(笑)、
オナホマスターが男友達にいて対談したとか(笑)、
クッソくだらない話を山盛りで話してゲラゲラ笑った。


次の日は早いのでさすがにもう寝るおー!と言って
深夜2時頃解散になった。

結局ゆきさんの引っ越しは
増田さんのお友達にお願いして、
荷物を運んでいただけることになり、無事完了した。


◆◆◆

【12月1日】

あれから私は増田さんに

「ゆきさんが
『わたし、ずっと女子会がしたかったの!』
って言ってた。
わたしルームメイトだったのに、
ずっと叶えてあげられてなかったんだなって思った」

と伝えた。

増田さんは

「いつでもできるんだよ~!」

と笑顔で答えた。


増田さんはこんな話をしてくれた。

「シェアハウスというのはバンドのようなもので、
だから僕は住人ではなく、メンバーと呼んでる。

音楽性の違いで他のところに行ってもいいし、
戻ってきてもいいし、
ソロ活動してもいい。

自由に行ったり来たりしていいんだよ」


シェアハウスはバンドのようなもの、かぁ。
ステキな言葉だな。

ゆきさんのニーズと、
私のニーズは一緒だったのかも。
お互い、女子会したかったんじゃないかな。
だから私も彼女のことがやけに気になったのかも知れない。
 
ゆきさんは
次のシェアハウスにも遊びに来てくださいねと言ってくれた。
落ち着いたら遊びに行こうかな。
楽しみだな。

そして私は新しい洋服を通販した。
女性らしい明るい色のニットだ。
女子力上げたいな、と思った。
服を選びながら、
ゆきさんと始めて出会った日のことを思い出していた。

これがゆきさんと私の、女子ドミトリー生活の物語だ。

◇◇◇◇◇◇

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