嫌われている男を調査してみた

私はクラスのとある男子に注目している。
その男子は、菅野という男だ。
クラスの女子からの人気は最後から数えた方が早いくらいの奴で、悪い奴じゃないけど…なんかちょっとね。。。という評価を下されている。
私は別に好きでも嫌いでもなく、公平に判断出来るだろうと密かに菅野を勝手に調査していた。
何故悪い奴じゃないのに人気が少ないか、その理由を知りたかった。
”なんかちょっと”には何が含まれているのか、みんな明確には意識していない。
だから私が一か月かけて明確化しようと試みた。

菅野は優しい一面もある。
私が赤ペンを忘れた時、俺の使えばー？と貸してくれるような奴だ。
その優しさを打ち消すほどの何かを秘めているのだろう、と赤ペンを借りておいてそんなことを考えてしまう自分にも少し罪悪感を覚えた。

菅野は、クラスで一番人気のある女子の事が好きで、しかも結構積極的にアプローチをしていた。
別に誰を好きになろうが他の皆には関係が無いのだが、人気のある女子に、ちょっぴり不潔な男が近寄るとみんな警戒するのだ。
不人気の要因はそこが大きいのではないかと思った。
菅野はSNSにも、その女の子について語ったり、物をプレゼントしたりと行動があからさまだった。
どうやら2回ほど告白して振られているらしい。

また、菅野はクラスで一番人気のある男子と仲良くしようとしている。
別に誰と仲良く使用が関係ないのだが、その人気ある男子自らが、菅野に付きまとわれていてウザいと友人に漏らしているという事だった。

菅野は授業中、めちゃくちゃ頭を掻きむしっている。
そのたびに白い粉が舞うのだ。
それに不快感を示す女子は少なくない。
だけど、菅野は結構良い香りがする。みんなは気が付いていないけれど、奴は毎日ちゃんとお風呂に入っている。きっと肌が弱いのだろう。
私はそう思いながらそっと窓を開けた。

菅野は授業中もよく発言をする。
他の皆は黙って授業を受けているが、奴は積極的だ。
私はそれは素直に見習おうと思った。

菅野はキレやすい。
しかし、女子からの人気が低いというのは自覚しているようで、それもあって敏感になっているのではないかとも思った。いわゆる自己防衛反応だろうか。

菅野は学校行事に一生懸命だ。
学校行事なんてダルイ、と言いながら何も行動しない奴が多い私のクラス。だけど菅野は率先して色々と作業を行っていた。
みんな、こういうところは注目しないんだな、と思った。

菅野は結構男気がある。
ある日の放課後、クラスの何人かで罰ゲームを掛けた大富豪を行った。
珍しく、菅野も参加していた。
罰ゲームは、クラスの男子がユニバに行って買ってきた耳糞味のグミを食べる事だ。
最悪なことに、私が負けて嫌すぎて気が付いたら涙が出ていた。
すると、「いいよ俺食べるよ」と言って、菅野は私の代わりに耳糞味のグミを食べてくれた。

以上が、1か月菅野を調査して目についたことだ。
菅野は誤解されていることが多いと思った。
本当は優しい男なのだ。
ちょっとウザい所もあるけど、みんながもっと彼の優しさに気が付けば絶対良いポジションを取れる奴だと確信した。
肌の弱い人向けのシャンプーをネットで調べ、菅野に渡そうか悩んでいることを、親友の由利に相談したら
「あんたそれ、菅野の事好きになってるじゃん」
と言われた。