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初恋の解凍

昔と違って今は、遠い昔の初恋の相手がどこで何をしているかわかってしまう世の中になってしまった。

名前を検索すれば簡単に検索出来てしまうSNSがあり(しかも登録には本名を推奨している)、ついつい昔の恋人や初恋の人の名を調べてしまう人も少なくないだろう。

善し悪しはあれど、当時の甘酸っぱい思い出は少なからずSNSのおかげで思い出されやすくなってしまっている。


上川萌は社会人2年目の24歳だ。

最近彼氏と別れたばかりで、傷心していた。

休日のある日萌は家でテレビを見ていた。

内容は、初恋の人を番組が探してタレントと会わせるという内容だった。初恋の人の事が忘れられないタレントは告白して振られていた。

萌はそれを見て、初恋の相手が今どこで何をしているのかという事が気になった。萌の初恋は小学六年生の時で、隣の席だった”圭太”だった。萌は中学に上がるタイミングで親の都合のため遠い街へと引っ越した。そのため、小学生の頃の友人とはほとんど繋がりが無くなってしまい圭太とも疎遠になっていた。

萌が高校生になった頃に本名で行うSNSが流行っていたが、本名で行うのを躊躇っていた萌は登録せずに今まで来た。

しかし、ここに来て初恋の圭太や小学生の頃の友人の事が気になりSNSに本名を登録して、圭太の名前を検索した。すると、簡単にヒットした。

記事を見ると、先ほどアップされていたようだった。萌に少しだけ緊張が走った。

『昨日結婚しました!小学生の頃から一緒の亜紀で、昔だったら亜紀と結婚とか考えられなかったけど、一生幸せにしますw』



「何これ・・・。見なきゃよかった。」

萌は検索したことを後悔した。

そもそも、昨日ってタイミングよすぎない!?亜紀ってめっちゃ性格悪かった子だよね?あの子に何度泣かされたことか・・・・。ていうか、一生幸せ誓ってんのに草(w)なんかつけてんじゃねーよ!?など、萌の心の中でツッコミたいところがたくさんあった。


彼氏と別れたばかりで、初恋の相手も結婚とは、心が中々えぐられる。

もう、どうでも良いはずなのに、一瞬でも期待を胸に寄せた自分を殴りたい気持ちになり、萌は気持ちを切り替えるため散歩に出かけた。


家に帰り、スマホをチェックすると通知がたくさん来ていた。

萌が本名で登録したことにより、昔の友人から大学の友人まで広くフォローしてくれていたようだった。

その中で、メッセージをくれた人がいた。

”伊藤信也”

彼は、萌の高校の同級生で同じクラスになった事は無く、あまり話した事は無かったが、何度か委員会で顔を合わせる程度で顔は覚えていた。

『上川久しぶり!俺の事覚えてる?高校で3年の時委員会同じだったんだけど!懐かしすぎて連絡してみた!元気?』

萌はすぐに返信した。

『久しぶり!覚えてるよー!図書委員で一緒だった伊藤君!元気っちゃ元気!』

『おおー!よかった!そうそう!図書委員!今どこ住んでるの?俺今東京に住んでるよ~!』

『私も東京に就職して、東京住んでる!仙川なんだ~』

『え!?まじ?おれも仙川なんだけど!!ちょっと!ご飯でも行こうよ!』

『ほんとにー!?友達で東京住んでる人あんまりいないから嬉しい!行こう♪』

信也は、高校時代悪い噂を聞いたことがなく、むしろ評判が良かった。


初恋は一度解凍されてしっかりと終止符を打ったが、思いもよらない出会い、再会もあるんだなと萌は少し元気を取り戻した。

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