見出し画像

雨さんぽ、雨映画

 古本を買いにパリへ出かけました。傘をさしほくほくと本を抱えながらひとり雨さんぽ。

 朝から断続的に降る雨で、往来も減りひっそりとした裏道は人もいません。 黙々と歩くことは、わたしにとって精神の浄化の時間だなぁと感じます。あれこれ次々に頭を巡る思いを静かに整頓していくような作業です。

画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

 東京に暮らしていた時、大失恋をしました。くる日もくる日も歩き続けました。雨の日も晴れの日も。会社勤めだったので、早朝に隣町の公園まで歩いたり、途中のパン屋さんで買ったパンをかじりながら、同じように朝早くから外にいる人々や風景を眺めていました。
毎朝公園で太極拳をするご婦人たち、ベンチに腰掛ける老人、ジョギングをする若者、トラックから荷物を運ぶ業者のおじさん。朝早くから実にいろんな人がいろんな目的で活動しているのだと感心しました。

 そのお陰で失恋の傷が癒えたとは思いませんが、私が静かにもがいていた時に、歩くことが助けになっていた、あるいはそれを求めていたのだと思います。

 昨日雨の中、傘越しにみる目の前の世界にそんな時代の自分を思い出しました。

***

 その頃ウディ・アレンの映画をよく観ていました。彼の作品の登場人物はよく街の中を歩きます。そして、突然の雨に降られてしまったり、雨の中をひたすら歩いたりします。そんなシーンにいつしかシンパシーを抱くようになっていました。
 彼の最近の作品『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』はまさに雨のシーンがたっぷり。

画像6

 以下のインタビューにウディの雨への思いが語られています。↓
ウディの「雨感」、いいなぁ。

ロンドンやパリにも言えることだけど、特にニューヨークは雨が降ると、より美しくよりロマンチックになると僕はいつも思っていたんだよね。それに、天気の良い日って退屈なんだよ。すべてが太陽の光に当たって輝いていて、いつだって同じように見えてしまう。何もかもとにかく輝いてるだけ。だけど、雨の日というのは、それぞれ違いがある。暗い日もあれば、明るいこともある。また激しい雨も降れば、優しい雨も降る。かと思えば、霧のような雨もある。ニューヨークというのは、そもそも可能性に満ちているし、楽しい。さらに雨が降るとアパートも歩道もすごく美しく見えるんだ。

 ウディ作品の雨のシーンの中でもお気に入りは、『ミッドナイト・イン・パリ』のラストシーンです。こちらも是非、おすすめです。

画像7

 パリは明日からもしばらく雨の日が多そうです。てくてく雨さんぽを楽しめそう。

それではまた。


 


いいなと思ったら応援しよう!

月子
サポート代は連載中のパリのカフェ手帖「フラットホワイトをめぐる冒険」のコーヒー代や美術館エッセイ「カルトブランシュ・ミュゼ」の資料代にあてさせていただきます。応援よろしくお願いします!