ツキハル

オリジナルの怖い話を公開していきます。

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最近の記事

裏返しの逢瀬

……ちょっと怖いお話ですけど、安心してくださいね。 人が死ぬような話ではありませんから。 これね、 とある小さな町に伝わっていた、 ちょっとしたおまじないのお話なんです。 その風習、日清戦争だか、日露戦争だかの頃に始まったそうです。 兵隊に取られた夫を恋しく思う女性たちの間で。 そのおまじないとは、こういうものでした。 今は戦地にいる夫の体を思い出しながら、 その身の丈に合わせて、着物を作るんだそうです。真っ白な着物を。 着物は、簡単なもので構いません。 ただ、襟の

    • 冬子ちゃん

      3月1日 「まどの上にある小さいやね」 という言い方を、彼女はした。「ひさし」という単語が、小学5年生の知識ではまだ思い浮かばないみたいだった。 「そこに積もった雪にね、足跡がついてるの。裸足の。大きさは、私と同じくらいで」 日向(ひなた)ちゃんがそういうと、おばけだーと、友達の一人が声を上げた。 「それさ、ちょうどその上に、日向ちゃんの部屋の窓があるんじゃん?」 「うん」 「水滴が落ちた跡とかが、そう見えてるだけじゃない?」 別の友達が、せっかくのオカルト話に水をさす。ただ

      • 【クリスマス怪談】影犬様

        【影犬様に関する聞き取り記録】 (1/4) ・私立聖(セント)XX学園第95期卒業生 影犬様……ですか。例の七不思議、ですね。私の頃はそんな名前はなかったのだけれど……。 ええ。最初は足跡だけでした。その時の話を、すればいいんですね? 私が初等部の4年生のときだから……1996年ですね。お母さんが夕食の準備するのをテーブルで待ちながら、テレビ見てたんですよ。そうしたらほら、あのゲーム……ポケットサイズのモンスターを捕まえるやつ……あれって、ちょうどその年に最初のシリー

        • 柱魂(はしらだま)

          ――こんな話を聞きました。 まだ映像メディアとして、ビデオが主流だったころの話です。 90年代初め頃と思ってください。 少しやんちゃな青年グループが、キャンプに行きました。 仲間の1人が、買ったばかりのビデオカメラを持ってはしゃいでいます。 当時は最先端の機器で、手元にあるだけでテンションが上がるようなアイテムだったんですね。 彼らは、山の中腹にあるキャンプ場を素通りして、さらに奥の方に車を走らせていきました。道の限界まで登りきったところに穴場がある、と聞いていたから

        裏返しの逢瀬

          【怖い話】よく聞く話の裏話

          えっ、怖い話……ですか? まあ、ないこともないですけど……。 …………そうですね。 注意喚起も兼ねて、話しておきましょうか。 縁って、ありますからね。 ああ、そうそう、"えにし"のことです。 "縁結び"とかの縁ですね。 人間が相手でもね、 付き合うべきじゃない相手と付き合ったりすると、 思わぬ形で道を踏み外してしまったりって、ありますからね。 ましてそれが……………… ………………その……………… ………………うーん、 表現する言葉がないな………… まあとに

          【怖い話】よく聞く話の裏話

          朗読等に関するガイドライン

          ツキハルの怪談をお読みいただきありがとうございます。 こちらは、ツキハル作の怪談を配信や動画投稿などに際して朗読なさりたい方へのガイドラインです。 ・端的に言えば「常識の範囲で自由にお使い下さい」の一言です。 ・著作権は放棄していません。 ・商業利用(テレビ・書籍等への掲載)に関しては、必ず別途ご連絡下さい。   ※配信プラットフォームが公式に提供している機能(YouTubeのスーパーチャット等)による収入に関しては、商業利用とみなしません。 細かな点は以下をご確認下さ

          朗読等に関するガイドライン

          見せてくる石碑 #03

          (続き) その後も、Bさんには事故・事件の映像が見え続けた。 ただし、今度は理由の説明付きである。 あの石の目の届く範囲は、結構広いらしい。 公園を中心とした半径100mほどの中で 狼藉を働いた人間たちが、次々と不幸な目に遭っていく。 理由が分かれば、彼らの悲鳴も爽快である。 Bさんは映像を見るたびに、公園にあったあの石に向かって (えらいぞ、よくやった!) と念じてやった。 先の、立ち小便の同僚が自殺したのは、その頃だった。 彼は営業職だったのだが、 事故後の顔で顧

          見せてくる石碑 #03

          見せてくる石碑 #02

          (続き) あの時からたまに、Bさんの頭の中に 誰かが怪我をする映像が流れてくるようになった。 街を歩いている時や仕事をしている時、 食事中などに、前触れもなく事故の映像が視えるのである。 (なんだこれは……?) 最初はストレスが原因の精神医学上の症状だと思った。 けれども、そうではなかった。 それらは全て、実際に起こった出来事らしかった。 ある日テレビを見ていると、 あおり運転をしたドライバーが自滅して死んだ、 というニュースが流れてきた。 そのドライバーの顔写真が映

          見せてくる石碑 #02

          見せてくる石碑 #01

          Bさんは怨霊に取り憑かれている。 ただし、無害な霊だ。 ……と聞けば、無害なのに怨霊なのか、"怨"霊というからには、 怨みを持った霊なのだろう、と反論したくなるかもしれない。 その通り、怨みを持った恐ろしい霊だ。 ただ、Bさんにとっては無害なのだ。 怨霊にもいろいろある。 誰彼見境なく呪い殺すようなのも確かにいるが、 その霊なりのポリシーを持って相手を選んでいるものもある。 Bさんに憑いているのは、後者だった。 何年か前の春のことだった……。 そのころは今(2022年

          見せてくる石碑 #01

          意味がわかると怖い話

          その女の子の家は歯医者さんだった。 小学4年生か5年生のとき、 そこに通っていた同い年の男の子が亡くなった。 男の子とは家も近く、 小さな頃からずっと一緒に遊んでいて、 いつしか相手への気持ちは淡い恋心に変わっていた。 参列したお葬式で、 喪主のお母さんがつけていた真珠のネックレスが強く印象に残った。 葬儀の帰り、女の子はそんなことをつらつらとお父さんに話した。 数日後、お父さんはよく磨かれた白い粒が連なる手作りのネックレスをプレゼントしてくれた。 「男親って、やっぱり

          意味がわかると怖い話