見出し画像

ヘアースタイリストという職業 #6

僕は他人の職業に興味があり特に珍しい仕事をしている方に会うとどんな仕事をしてどんな1日を過ごしやりがいや経緯についてつい質問してしまいます。だってもしかしたら自分がその職業を選んでたかもと思うとワクワクしませんか? 僕だけ? ではないはず。

なので今回は僕の仕事ヘアースタイリストという職業を紹介して行きます。


幅広いジャンル

働き方はさまざまで美容師と違うのはカットやカラーやパーマなどは基本しません、クライアントは1人のお客様ではなく企業やブランドで現場は毎回違う場所です。

内容も雑誌や広告や動画の撮影、ファッションショー、有名人がレッドカーペットを歩く時のスタイリング、ウエディング、講師、プロダクトの開発など様々です。

これら全てを幅広くやっている人もいればサロンワークと兼用して働いてる人、ファッションの撮影だけ、映画だけ、有名人だけ、ウエディングだけと内容を絞ってやっている人もいますし、ヘアー、メイク、ネイル全てを1人でやる人もいます。 

一言にヘアースタイリストと言っても多くの稼ぐ可能性があるわけです。


仕事をgetするまで

日本には美容師になるための美容専門学校はたくさんありますがスタイリングやメイクに特化した学校は少ないので多くの人がまずは美容学校で勉強してサロンワークを数年して具体的にどの分野が好きなのかを知りそれぞれの分野に分かれていきますが多くの人は美容師を続けるか全く違う業種に転職します。 

仕事の取り方は主に企業やブランドの方と知り合い直接仕事の依頼を受けるパターン、WebサイトやインスタなどのSNSで自ら宣伝し仕事を受けるパターン、アーティスト事務所に所属してそこに来た仕事を受けるパターン、現場で知り合った他のアーティストの方からの推薦で受けるパターンなどいろいろですがどの手段も依頼したいと思っていただける為には実績や実力を証明する強いPortfolio (作品集)が無いと良い仕事は回ってきません。

その強いportfolioを作るために僕達は多くの時間を費やします。



画像1

アシスタントの頃の作品。アメリカらしいゴージャスなスタイルを勉強していた頃の物、柔らかい白人の髪でヴォリュームを出すのは難しいんです。


Portfolioはその人の好みを表す物です

例えば有名人と仕事を沢山したいのならPortfolioの中身は有名人だらけの方がわかりやすい。

有名人と仕事をしたいなら有名人を多くやっている人のアシスタントを数年間して技術を学びその現場で働く人達やマネージャーと知り合い人脈を広げなければいけませんし海外のファッション雑誌やショーをやりたいなら留学してまたその街で人脈作りとその街のクライアントの好みに合ったportfolioに作り変えなければなりません。全ては本当にやりたい内容の仕事をgetする為に。

僕はNYに来て10年になりますが約5年間はいろいろなアーティストのアシスタントをして勉強させてもらいどんなスタイルが自分の好みなのか探しました。その間少しずつ作品撮りをして自分の好みの集合体であるPortfolioを作ってきました。

アイロンでチョイチョイと巻いてるだけの様に思うかもしれませんがバイトなしでこれだけを生業にするまでには多くの努力の積み重ねしかありません。世渡り上手な人は楽して仕事を取って来れるかもですが技術職というのは本物か偽物か簡単にバレてしまいます、なので保証の無い結果が出るまで努力を続けるしか無いのです。 収入が安定するのは分野にもよりますが僕が働くファッション業界では大体35歳ぐらいからです。

これを早いと思うか遅いと思うかは人それぞれですが美容学校に入学してから35歳というと17年です。 

長い、、、 ホリエモンが寿司職人の修行10年てバカでしょって言ってましたけど、、、そのバカです。

美容学校に行かずサロンでも働かずいきなり海外に行って修行すれば早いんですがそうもいかないんです。作品は自分の技術と経験の集大成なのでもしそれらを経験してなかったら完成度は絶対的に違うのと日本で実績がないと労働visaが取れず海外で働く事ができません、なので15年以上はかかってしまうのです。ホリエモンには理解してもらえないでしょうが。

ヘアーだけに集中して17年ですからメイクやネイルまでやる人の努力と情熱はハンパない、マジで。


画像2

18年かかってやっと叶ったVOGUEの表紙の仕事


アシスタント

日本でアシスタントをする場合なんと1人の師匠に弟子入りして2、3年間無給です。朝早く師匠の家まで行き荷物を受取り現場へ向かい10時間ほど兵隊の様に仕事をし師匠を家まで見送りその後深夜までバイト、を2、3年。超ブラックです。

アメリカはアシスタントには必ずお金が支払われます。払わないとアシスタントが文句言うしその噂が回って誰も手伝ってくれません、良くも悪くもハッキリしているがこれが普通だと思う。

金額は師匠がどれだけ稼いでいるかによりますが1日1万円から3万円。 フリーのアシスタントで優秀な人はいろんなアーティストから求められるので結構稼げます。

フリーなので自分の作品を作りたいときはアシスタントの仕事を断ってもいいので学びとportfolio作りを同時進行で進める事ができます。 

大御所のアーティストはフルタイムのアシスタントを常に2、3人雇い優秀な順に1st〜3rdアシスタントの肩書きを与えます。大御所の1stを約3〜5年(アメリカでは)勤めると卒業後portfolio無しでもいきなり事務所と契約できる可能性があるのです。

例えるとさんまさんの付き人を5年やるとさんまさんが推薦してくれてその後すぐに吉本に所属していきなりテレビ番組に出演できる様な感じです。

なので多くの人が大御所の1stになる為にアシスタント同士で蹴落としあうのです。正に映画プラダを着た悪魔の世界です。


アシスタントはフリーかフルタイムどちらかの道を選んで進むわけですが当然どちらも成功の保証はありません。フリーで数年やって活躍する人もいればフルタイムで1stを5年やっても活躍できない人もいます、結局のところどちらの道を選んでも自分次第、真剣に努力を重ね上手くなりさらに幸運な人だけが成功できる。

僕は大御所に2年半つき1stになる直前でフルタイムを辞めてフリーになりフリーでさらにいろいろなアーティストの現場で2年半学び独立しました。僕はこの道で良かったと思っています、とにかく沢山良い経験ができた。


画像3

アシスタント時代、パリコレのバックステージで隠し撮りしたミランダカー


独立

独立後は事務所に所属するまでは自分でスケジュール管理やギャラの交渉、請求をするわけですが自分の技術に値段をつけるのは非常に難しい。時間をかけ苦労して得た技術ですから安売りはしたくないけど高く伝えて交渉が成立しなかった事は沢山あります。 

僕は1日(10時間)3万円からスタートしました。時給にすると1時間3千円です、17年かけて時給3千円て安いですよね笑 

それでも初めは週に1つ仕事があれば良い方でしたので月収0円の時もあれば50万円の時もあったりなかなか安定しませんでした。

事務所に所属するとスケジュール管理や宣伝、ギャラの交渉や請求は全部やってくれるようになり代わりに売り上げの20%事務所に取られます、それでも1日のギャラは最低10万から最高35万ぐらいに上がり週に3つ以上は仕事が入ります。

年収何千万て稼いでる人もいるので夢のある仕事だと思いますが安定する保証が無い事に15年以上賭けるわけです。 お笑い芸人に似てるかもしれません。

コロナで仕事が全く無い今書いていて思ったんですが何年やってもやっぱりこの仕事が楽しいし好きな気持ちは変わらない、そしてもっと上手くなりたい。 早く仕事がしたい、、、



なぜこの職業を紹介したかというと僕はずっと思ってきましたが学校ではもっと様々な職業の現実を教える授業があっても良いかと。

公務員の良いところや消防士のやりがい、建築家の奥深さ、美容師の魅力、そしてそれぞれの年収や労働時間や可能性や苦労なども。

ネットで調べたらわかる事もありますが高校生の時にもっとリアルに紹介してくれる人がいたら進路を決める時にすごく役立つと思う。会社説明会みたいな職業説明会。


これから仕事を選ぶ人、転職を考えてる人、美容師として可能性を広げたい人の役に立てばと思います。


Tsuki

@tsukihair

https://www.streeters.com/artists/hair/tsuki#portfolio








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?