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悲しみの果てに彷徨って


22.1122

誰かが救ってくれるのを待っている

美しい言葉を話す人に会ったことがある。
愛に生きている人に会ったことがある。
愛しあう夫婦に会ったことがある。
私を愛してくれる人に会ったことがある。
この人と生きたいと思えた人に会ったことがある。

私の人生は幸福であり、
出会う人も皆幸福であるかのような顔をしている。

それでも私は常に孤独や悲しみに争うように生きている
愛などないのだという顔をして。

誰にも私は理解出来ないのだと言いながら
見知らぬ誰かをずっと待っている。
私だけのヒーローを。

無知で無価値な私を愛し救ってくれるヒーローを待っている。
退屈な世界から救い出してくれるヒーローを。

私の中の愛おしいほどにバカで幼稚なワタシは、信じて待っているんだ。

可哀想に。
そんな人世界中のどこを探したっていない。
未来永劫現れない。



私は鬼を飼っている。

私の中には鬼が居る。
私は鬼を生まれた時からずっと飼っている。

鬼はワタシに言う「苦しいことは何もしなくていい。誰かがきっと助けてくれる。」

ワタシは「救われたい」と言いながら、本当に救われたいわけじゃないんだ。
救いのない世界を楽しんで浸って不幸なワタシに酔っているだけなんだ。
愛などないと証明したいのだ。無駄だと。
ワタシが正解で、愛だの言ってる奴らの負けだと認めさせたいだけのエゴ。
ワタシは私を潰し続ける存在。
ワタシは私を認めることはない。
私もワタシを認めようとはしない。

認めてもらえないワタシは永遠に消化出来ずに彷徨い続ける。
ワタシは鬼の思うツボ。

ワタシを救えるのは私だけということに
私はずっと気付けない。
何よりも弱くて卑怯で未熟で許せない存在だから。
自分の大嫌いそのものだから。

愛する貴方を悲しませたワタシなど生きている価値もなくて、
惨めで存在そのものを消して無くしてしまいたいと思うほど。
自分自身を呪っている。
産んだ母や父は救ってはくれない。

私がワタシを救う気がない。
この世は望んでいないことは起きない世界だ。

ワタシを見捨てているのは私自身だ。

鬼に惑わされて、失う恐怖で心を支配された私は鬼そのものだ。
悲しみに飲まれ分離した。
そしていつしか幼いワタシを嫌い責めて排除した。

愛する貴方のいない世界でどう生きるのが正解なのかわからなかった。
一瞬で愛を失ったのだと思った。
私は理解した。私の中に愛はなかったのだと。
失った貴方を死の世界に閉じ込めた。
心は簡単に崩壊し、身勝手な嘘は悲しみを加速させた。

行き場を失った私は笑った。
ひたすらに笑い続けた。誰かに気づいてもらいたかったから。
強がりたかった。認めたくなかった。
一人では何もできないことを。
今までの努力が無駄だったことなど認めたくない。
認めなければいつしかこの嘘が真実に変わると本気で思っていた。
神様さえも騙せると。

誰の声も聞こえない。届かない。
今日も寂しい世界に生きていると思っている。

愛されたいだけ。
私だって信じたかった。

貴方の望む世界で生きてみたかった。

私は知っている貴方がワタシを愛してくれたことを。
私を許していたことを。
愛し合っていたことを。
二人で一つだったことを。

私は貴方の全てで、貴方は私の全てだった。
愛そのものだった。

ずっと愛の中にいた。
貴方の愛に包まれていた。
貴方がくれた言葉を信じて生きて行く。
貴方が愛してくれたワタシを私は愛している。

ワタシを救えるのは私だけだ。
愛の源はいつもここにある。赦しあってここにいる。
ヒーローは私だった。
愛する人よ私から迎えに行くから待っていて。


ねぇ私は貴方のように愛の言葉を話す人になりたかったんだよ。

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