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建築家のサブスク | 設計が体験に変わり、暮らしを豊かにする仕組み

今年の夏休みはどこでバカンスしようか、と妻と妄想を巡らせていた。結局、ここ2年ほどコロナの影響で行けていなかった沖縄かなということになり、早速宿探しを始めた。しかし時既に遅し。お気に入りの宿はすべて予約で埋まっていた。みんな考えることは一緒なのだ。

そこで、僕らがいつも訪れる今帰仁(なきじん)エリアにも、新しいホテルが出来ているのは?と思いリサーチを始めた。するとすぐに新しい素敵なプライベートヴィラが見つかった。

Makina  Nakijin

一泊15万~。うん。僕らにはちょっと高い。けれどデザインリサーチを兼ねると思えば頑張れなくもない。妻へは将来ホテルをデザインする時の勉強だ。といういつもの言い訳を準備していた。しかし、よく見ると12歳以下はNG。残念ながら今回諦めることにした。


で、ここからが今回の本題に入るわけだが、実はそのプライベートヴィラは建築系メディアでも取り上げられており、以前から知っていた。設計された建築家の五十嵐敏恭さんは、沖縄拠点に活動されており、以前にModern Livingの同じ号に僕の自邸と五十嵐さんの自邸兼事務所が掲載されて以降、同年代ということもあり、面識はないが勝手に親近感を持ち、刺激をもらい、参考にさせてもらっている建築家の一人である。

眺めているだけで今帰仁の心地よい空気感が伝わってくるヴィラの写真を見ながら、正直「あー羨ましいな。僕もいつかこういうプライベートヴィラや別荘のデザインがしたいな。」と想像を膨らませていた。そして何気ない気持ちで、こんなことをtwitterで呟いた。

すると思いの外、多くの方から反響やコメントをもらいびっくりした。

「こんな建築家と地域のコラボ、素敵だと思います。」

「この取り組みありだと思いません?依頼者にはメリットしかないし。」

「とってもありだと思うけど、竣工後、秒で売られて約束も反故にされそう。」

「お金を介さないやり方だと、値引きなどの概念も無くなって実質、生産性が上がるのは本当に良い試みだと思っている。」

「安売りするから建築士の価値が下がる」

ツイートした時は深く考えていたわけではない。五十嵐敏恭さんが設計されたプライベートヴィラ以外に、いいなと思える様な宿泊施設が見つからなかったので、だったら自分でもデザインしてみたいな。僕だって、五十嵐さんに負けないくらいの、素敵なプライベートヴィラ作れるはずだ。という嘆きの部分も強かった。

しかし、何気なく呟いたツイートだけど、このある種の建築家のサブスクシステムは、もしかしたら新しい建築家の在り方、新しい仕事と暮らしの繋がりになるのでは?と思えてきたので、もう少し深ぼって考えてみることにした。

大前提として、このシステムが成立する条件はかなり限定的だし、建築家業界の新しいフォーマットになる。とかでは決してない。あくまで部分的な取り組みとして、面白いかもくらいに捉えてもらえると嬉しい。


建築家のサブスク

僕の提案を整理するとこうだ。

一泊5~15万くらいのプライベートヴィラ。1棟あたりの工事費は1~2億くらいかな。設計料は無料にする。代わりに年5日程度無料で使用可能。

という簡単な仕組みだ。

施主とっては工事費の10~15%の設計料が必要なくなり、イニシャルコストを下げられる。建築家に依頼するハードルが下がるだろう。設計者にとっても自分事として、高いモチベーションを持ち、より魅力的な成果を生む。

設計料としても実質、一泊15万 × 年5日 × 20年 = 1500万の換算になる。しかも、年に5日ほど、一泊15万のところに泊まれるなんて、まあまあリッチな体験ではないだろうか。全然損はない。

と、表面上は上記の様なメリットが考えられるが、個人的には、この提案の本質的な価値は、もう少し別なところにあると思っている。

お金→体験

それは設計という行為が「お金」ではなく、「体験」に変わるということだ。自分が長い時間を掛け、精魂込めてデザインした空間 = 体験が、建築家自身の暮らしを直接的に豊かにしてくれる。こうしたこれまでにあるようでなかった実体験が、建築家としての更なる成長に繋がっていくはずだ。

通常、設計という行為は仕事である以上、お金に変換されてそれでおしまいだ。もちろんそのお金を使って、様々な体験に変換することが可能なわけだが、お金を間に挟むことで、設計がこの体験を生んでいる。という実感が持ちづらくなってしまう。

少し話がずれてしまうかもしれないが、僕は豊かな暮らしからしか、豊かなデザインは生まれないと信じている。だからこそ建築家自身がまず豊かな暮らしを実践しなければいけない。であるならば、建築家自身が作りあげた空間=体験が、自分自身の暮らしを豊かにしてくれる、良い影響を与えてくれるのは、すごくよい仕組みではないだろうか。

第二の自邸

それに、設計・デザインという行為が、自分ごとに変化する。まるで第二の自邸を設計しているように。すると設計・デザインに対する姿勢や深度に変化が生まれるはずだ。自分も使うわけだから、建築家としてのエゴを優先する。みたいなことが無くなり、利用者目線が強くなり、より成熟度の高い空間が生まれる。これはクライアントにとっても良いことだ。

他には、出来上がった建物と継続的な関係性を作れることもメリットだし、年間5日程、泊まれるようにするためには、暮らし方や働き方にも柔軟な変化が生まれるかもしれない。

仮に、1年に2棟の設計を10年続ければ、
10年後には、20棟 × 5泊  = 年間100日程、全国各地のプライベートヴィラを転々としながら、
暮らすことだって可能だ。夢のようだ。

もちろんこの建築家のサブスクシステムは、個人住宅や店舗/オフィスなどの別の用途だったり、規模の大きい宿泊施設の案件の場合は使えないかもしれない。他にも、建築家自身が興味の薄いエリアだと、実際には訪れることが少なくなるから、損してしまうのでは?設計契約上の法的な問題点は?責任範囲は?などの懸念点を挙げたらキリはない。

しかし、設計料のすべてを無料にするのではなく、部分的に「お金」から「体験」に変化させることは出来るかもしれない。

一緒にチャレンジしてみませんか?

ただの思いつきで始まった、この建築サブスクシステムは、どうだっただろうか?意外にありではないだろうか。少なくとも僕にとっては、普段おこなっている設計・デザインという行為が、直接的に自身の暮らしを豊かになるというのであれば、やってみる価値は十分にあると思っている。

もしこのこれまでにない新しい仕組みや、そこから生まれる空間の可能性に興味がある方がいたら、ぜひ一緒にチャレンジしてみましょう!
連絡お待ちしております!


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