バカンス経済主義
春が来た。ということはもうすぐ夏が来る。つまりバカンスが来る。4月に入り新年度の予定も分かり、そろそろ夏休みの予定を立て始めている頃だろうか。だとすれば、認識がちょっと甘いかもしれない。バカンスはそんな簡単なものではない。
岡田家では去年の12月には8月のバカンス計画が完了している。本来なら、去年8月のバカンスから帰ってすぐにでも一年後の予定を計画したかったくらいだ。
僕はバカンスのために生きている。もしくは、バカンスに生かされている。
そのくらい大切にしているし、人生の幸福度が大きく左右する存在だ。
ちなみに過去のバカンスシリーズはこちら。
日本人のどれだけの人が、バカンスを楽しんでいるだろうか。
僕は約15年前、1年半ほどミラノに留学した。
そして驚いた。ミラノの人だけでなく、ヨーロッパの多くの人がバカンスのために暮らしていた。夏休み前には、そわそわしだし、仕事がおろそかになり、夏休みに入ると1カ月間の間、様々な会社やサービスが機能不全に陥っていた。
「あー、○○さんはバカンス中だから、また1ヶ月後に連絡して。」みたいなことを平気で言ってくる。
日本人の僕からしたら、その対応の悪さや遅さにイラッとしていた部分もあった。しかし彼らはそれが自分の当然の権利だと強く主張し、そして相手の権利もきちんと認め、自らのバカンスのために、その不便さも許容しながら、結果的に楽しそうに暮らしていた。
ほんとかどうか分からないが、イタリア人のクラスメイトからこんなことを聞いた。
夏休みが明けた時、日焼けをしていないと、少し悲しい目で見られるらしい。「あー、あなたはバカンスに行けなかったのね、可哀想に。」と言わんばかりに。実際に、イタリアのご婦人たちは、将来シミになることなんてこれっぽっちも気に留めず、日焼けに勤しんでいた。
「シミの量と幸福度は比例する。」そんな社会だった。
実際に、夏のミラノの公園では、水着になり日焼けに勤しむ、若者やおじさん、おばさん、おじいちゃんおばあちゃんたちがたくさんいた。おそらくバカンスに行ったふりをしていたのだろう。
一瞬阿呆らしくも感じたが、彼らにとってはそのくらい重要なものなのだと理解し、羨ましくも感じ始めていた。
彼らはバカンスのために働き、バカンスのために暮らしていた。
まさにバカンス経済主義だ。
一般的には、イタリアやスペイン人などラテン系の人たちは全然働かないイメージだと思う。実際もそうだ。いろんなことがテキトーだし、時間も守らない。けれど冷静に分析してみると、
一人当たりの名目GDP*は、イタリア28位、スペイン34位、そして日本が37位。負けている。仕事の結果でも負け、かつバカンスの楽しみ方でも負けている。
僕はどうすれば日本の生産性を高められるか分からない。そしてそれはあまり期待していない。
であるならば、せめてヨーロッパの人々のように、バカンスを楽しむ暮らし、働き方だけでも取り入れていきたい。今の日本に足りないのはそういった価値観なのではないだろうか。
最近の日本は少し変わってきている。昔みたいにガムシャラに働くみたいな風潮は減ってきている。今の若者はタイパが大切らしい。そこに、バカンスを楽しむという文化を根付かせていけば、より日本はハッピーになるはずだ。
あくせく働き、家族との時間を確保出来ず、ストレスばかり貯めて、いろんなものが許容できない、不寛容な社会。今の日本社会において、1番必要なのもの、バカンスではないだろうか。
デザインを学びミラノへ行ったはずなのに、僕が最も学んだのは、バカンスの楽しみ方と、バカンスを通じた豊かな暮らし方だったのかもしれない。10年以上の時を経て、その価値の重要性を改めて感じている。
みなさんバカンスしてますか?
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