ようやく、円高恐怖症の必要性が薄れてきた日本経済

米国は、貿易を自国通貨で行なっていますから、ドル高でもドル安でも、影響は(無いとは言いませんが)軽微です。したがって、「ドル高の方が海外からの投資が増えて望ましい」などと呑気な事を言う人が多いわけです。

ドイツは、「景気などどうなっても良いから、インフレだけは避けたい」という人が多い特殊な国ですから、これも自国通貨高を歓迎するでしょう。昔、「ドイツマルクが安くなると、金融引き締めが行われて景気が悪くなるから、ドイツマルクは高い方が良い」とドイツ人に聞いて、世界には色々な国がある事を知ったのでした(笑)。

一方の日本は、輸出に牽引され、支えられて成長してきた経済です。バブル崩壊後の長期低迷期には、国内民間需要の弱さを輸出と公共投資で補って失業を回避してきたわけですから、円高で輸出が減ることが恐怖だったのは当然です。米独と一緒にして欲しくありません(笑)。

最近になり、ようやく少子高齢化と景気回復により労働力不足が深刻化し、失業問題が経済運営の最優先課題ではなくなりつつあります。「円高で輸出が減ると失業が増える」から「輸出数量が減っても失業が増えない」経済になりつつあるのです。このまま労働力不足が定着すれば、円高を恐れる必要が消え、人々の恐怖心も薄れて行くでしょう。

「円高になると輸入品が安く買えて嬉しい」と考える消費者も増えて来るかも知れません。日銀の職員だけは、勤務先が物価目標2%を掲げている間は口が裂けても言えないでしょうが(笑)。

P.S.

最近は、円安になっても輸出数量が増えず、円安の景気刺激効果が表れにくくなっています。これが一時的なものならば(円安になってから輸出が増えるまでのタイムラグが数年間ある場合など)、以下は成り立ちませんが、これが構造的なものならば(たとえば日本企業が地産地消を強く意識して、為替レートに影響されない経営を徹底しはじめた場合など)、「円高が景気にプラスだ」とさえ言えるかも知れません。

仮に円高に戻っても輸出入数量が変化しないとすれば、輸出企業の収益は悪化し、輸入企業の収益は改善するでしょう。輸出入は概ね同額なので、その効果は等しいとしましょう。輸出企業は収益が悪化しても、特に何もしないでしょうが、輸入サイドは競争が働くので円高差益を消費者に還元しはじめるでしょう。結果として、輸出入企業合計の収益は悪化しますが、消費者は潤います。企業部門から家計部門に所得が移転するわけです。

企業の利益は、直ちには投資等にまわらず、内部留保に回るだけでしょうが、家計が潤えば、その多くは消費に回るでしょう。つまり、企業の利益が家計に移転されれば、景気にプラスの効果が見込まれるのです。こうして、円高が景気を押し上げる力が働くのです。

繰り返しますが、あくまでも、円高に戻っても輸出入数量が変わらないとすれば、という前提での話ですが。

https://comemo.io/entries/1592

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