ホテラスネツタイヤ
連日の熱帯夜で、そろそろ自分の頭のネジが吹っ飛ぶどころか、ネジ自体が溶けてなくなってしまいそうな勢いだ。
という、ウケを狙っているのか否かすら全く分からない一文を瞬時に思い浮かべた時点で、自分の思考はもはや停止している…ではなく、別方向でイカれ始めているという表現がピッタリのかもしれない。
8月に入って以降、メディアに目を移すたびに、何処もかしこも毎回こぞって「各地で最高気温が35℃以上の猛暑を記録している」などと託けては、ライターやコメンテーターなどを中心に異常気象だのと騒ぎ出すばかりだ。
毎度毎度、常に情報を受け取る側である私たちに向けて、そう告知していくのは別に構わない。ただ、単に騒ぎ立てるだけでは何も変わらないし、一歩も進めやしない。
一方的に煽ってばかりいないで、せめて一人一人の役に立てるような代案を編み出してほしいと思うのである。そう考えてみたものの、まずこの手の人たちに向けて、イチ一般人の意見を述べたところで通じるわけなどない。
脳がおかしくならない程度に熱を冷ましてくれと云おうが、適度に水分補給しておくれなどと云おうが、当事者の方々にはほとんど届くはずもないのだ。
にも関わらず、平日の朝に放送されている某ワイドショー番組を見ている母は、画面越しに声を荒げては、対話なり説得なり試みようとしている。
世間一般がお盆休みのシーズンになっており、各地で帰省ラッシュが始まっている頃、私も地元の実家に戻っていた。およそ三ヶ月ぶりに帰省を果たしたのだが、母は相変わらず元気であった。
むしろ、この異常気象とも騒がれている暑さのおかげで、声量が若干上がっているようにも思えたのである。加えて、買い物などで外から戻ってくるたびに「暑い暑い!」と、まるで熱湯に手が触れて思わず引っ込めるように愚痴をこぼしていた。
そのたびに私は「暑いを連呼しているから、余計に暑く感じるんじゃ…」と指摘してみるものの、一向に応じる素振りすら見せない。もはや、照り付ける日光と四方八方から流れてくる熱波に煽られて、冷静に判断が取れていない様子であった。
そう分析してみるが、そもそもこの時の私には、母に対して説得するための力など何も持っていないのだ。
実家にいる間、お墓参りなどで出かける用事以外は、一歩も外に出ることなく一日を中で過ごしていた。家でぐうたらしている自分自身が、母に対して説得を図ってみたところで、ガスしか噴き出ないスプレー缶の如く何の効き目もないのである。
そう考えたら私も私とて、やっていることは母とあまり変わっていないのかもしれない。状況が違えど、相手に対して通じらせるための最適な状態でないことを、承知しておきながら説得を試みようとしても、まったく効果がないというものだ。
おそらく熱にやられているのだろうか。頭の中が渋滞しているのも、文章をうまくコントロールができていないのも。結果的に一つ一つ辻褄が合っていなくとも、ひとまず熱帯夜のせいだと決め込んでみるのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!