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追って、追われて、追いかけて、追いついた

再び上を向いたまま考え事をしていると、今日は一日通して社内を駆け回ってきた気がしていた。

今の私が属している所は、自分を含めて7人という人数で仕事を回している。だが今日という日に限って、そのうち2人も欠員が出ている。
いつも営業に出掛けている1人を除いて、その日は僅か4人で回していかなければならない。

そして明日は土曜日、とはいえ「秋分の日」という祝日となっている。もしかしたら、先方からの通常の流れで受けている注文や問合せなどが、前倒しになってそれらが今日のうちに殺到するかもしれない。まさに「予断許さず」の状態であった。

そう考えた時、いつも以上にアンテナを張っておかなければならないと思い立ち、朝のうちに上長をはじめ倉庫にほぼ常駐している先輩後輩に、予め綿密に根回しをしておく必要があった。

ほとんど初歩的なものばかりであったが、現状で2人も欠員が出ている状態を相手に感じさせないように物事を進めることができたら、今後自分の強みとして生かす機会になるかもしれない。
なんてあやふやな野心を抱えたまま、一日の仕事に臨んでいったのである。

しかし通常よりも、先方から各々の問合せが多く寄せられてはその対応に追われてばかりいてしまい、並行して行うべき発伝業務に若干遅れが生じてしまっていた。

もしも20代の頃の自分なら、このタイミングで「一体どうすればいいんだ」などと目先のことに対して、かなりの焦燥感に駆られていたことだろう。

午後から主要としておこなっている出荷作業とやらは、午前中の時点でその先輩後輩に事情を伝えると同時に依頼をかけている。
あとは時折様子を伺いながら先方からの問い合わせを受けつつ、発伝業務に専念していこう。もしアクシデントが起きてしまったらすかさず、先輩や上長に相談して事を進ませておけばいい。

私の心には、あの時とは比べ物にならないほどの余裕を持っていた。

そうしてなんとか定時に差し掛かる前に、全ての業務を終わらせることはできた。
営業先から戻ってきた一人の先輩に「今日は大変だったでしょ」と声をかけられたことに対して、
「いやぁ本当に大変でしたねぇ」
なんていうように、私は思わず笑いながら返答していたのであった。


気づけば昼休みもほとんど休憩していないどころか、一日を通してまるでシャトルランをおこなっているような感覚で、事務所とおよそ二十メートル離れている倉庫をひたすら往復していた気がする。

そのせいか家に着いた頃には、身体中に疲れがいつもよりもドッと出てしまっていた。おまけに食事も水分もロクに摂らずに勤しんでいたからか、帰宅した後にルーティンとして必ずやっている「とある体操」とやらの動きに、多少の鈍さを感じていた。

今日は気温がいつもと比べて少しだけ、これまでずっと続いていた鬱陶しい湿気と日の光から発している熱波などをほとんど感じなかったのが、唯一の救いであった。
9月も下旬にさしかかってようやく秋らしい陽気になったかと思えたが、向こう一週間の天気予報を見る限り、気候的な意味で秋口が訪れるのはまだまだ先かもしれない。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!