見出し画像

政治講座ⅴ1054「中国経済の行方を考える」

事実・実態を隠蔽して、事実を知ろうとするとスパイ罪で拘束・勾留し、人民には何も教えない愚民化政策で家畜同然に生活をさせる。政策に疑問を持つ優秀な学生はすぐに拘束して処罰する。基本的人権とは何か、民主主義とは何か、疑問を持つものはすべて拘束して共産主義教育をする。共産党員も中国経済が破綻状態にあることを知らないようである。今回はその報道記事を紹介する。中国共産党に14億人が「共同富裕」とのスローガンに騙されてその実態は「共同貧困」へといざなわれているのである。

     皇紀2683年4月29日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

中国経済は回復しつつあるが内需は弱い=共産党政治局

Reuters によるストーリー •

中国経済は回復しつつあるが内需は弱い=共産党政治局© Thomson Reuters

[北京 28日 ロイター] - 中国国営メディアによると、共産党中央政治局会議は28日、国内経済は回復しつつあるが、内需は依然不十分だとの見解を示した。

需要縮小、供給ショック、期待の低下という中国経済が直面する3つの圧力は緩和したとしている。

中国恒大、債務再編案で債権者の同意得られず-期限を3週間延長

David Scanlan によるストーリー • ‎

(ブルームバーグ): 中国恒大集団はオフショア債保有者から債務再編案への合意を取り付ける期限を3週間延長した。かつて国内最大級の不動産開発会社だった恒大は、中国不動産危機の象徴となっている。

  恒大が香港取引所に27日提出した資料によれば、マージンローンや買い戻し義務が含まれている「クラスC」の社債では30%強を保有する債権者からの支持しか得られなかった。

  同社は香港時間同日午後5時を期限と定めていたが、債務再編を実施するためには、それぞれの債券クラスで75%の同意を確保する必要がある。

  恒大が先に示した推計によれば、クラスCの請求権は150億ドル(約2兆円)近い。請求権170億ドルの「クラスA」では77%余りを保有する債権者が再編案を支持したと同社は説明した。恒大は合意期限を5月18日にあらためて設定した。

原題:Evergrande Extends Debt Plan Deadline After Support Falls Short、Evergrande Falls Short of Key Threshold for Debt Plan Support(抜粋)--取材協力:Emma Dong、Erin Hudson、Alice Huang. More stories like this are available on bloomberg.com ©2023 Bloomberg L.P.

中国の不動産抗議問題に当局介入、期日までの住宅引き渡し約束

By Reuters Staff

[香港 14日 ロイター] - 中国でマンションが完成しないことに抗議してローン返済停止をちらつかせる住宅購入者が増加し、住宅融資の不良債権化が懸念されている問題で、当局は14日、地方政府が期日までに住宅開発事業を完了できるよう支援すると表明した。

 中国の銀行は、マンションが完成しないことに抗議してローン返済停止をちらつかせる住宅購入者が増加する中、住宅ローン事業の資産の質が悪化しそうだ。写真は海南省ダン州で建設中の建物。1月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の当局者は、住宅・建設関係当局や中国人民銀行(中央銀行)と連携を強め、地方政府が住宅引き渡しを保証するのに協力する意向を示した。国営メディアが報じた。

メディアや交流サイトではここ数週間、成約済みの未完住宅について、開発業者が建設を再開するまでローン返済を停止すると購入者が警告するケースが増えていると伝えられていた。

報道やアナリストによると、購入者の抗議が起きた開発プロジェクトは今週初めは20件足らずだったが週半ばには100件に拡大。週末には200件に達するとの予想もある。

未完プロジェクトに関与している開発業者は 経営危機にある中国恒大集団や新力控股(集団)が含まれているという。

前出の当局者によると、銀保監会は金融機関が「市場志向的手法でリスクを封じ込め」るよう指導し、住宅価格や不動産融資の安定化を図る考え。

ADVERTISEMENT

<影響受ける住宅ローンは2200億ドル>

ANZはリポートで、最大1兆5000億元(2200億ドル)の住宅ローンが中国の未完成住宅プロジェクトに関連していると指摘した。

住宅ローンは融資全体の約2割を占めており、アナリストは、住宅購入者が住宅ローンの支払いを停止すれば、銀行の住宅ローン不良債権比率が3─5倍上昇する可能性があると推計。

事態を重く見た当局は銀行と緊急会合を開催したとブルームバーグは報道。一部地方政府も今週、住宅購入者との会合を持ったとの情報もある。

銀行は先行販売されたマンションを担保として所有しているが、その資産は未完成であるため、損失を被る可能性が高い完成を待てば、不動産価値の大幅な下落リスクにさらされる可能性がある

龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のアナリスト、張暁曦氏は「現在の市況でマンションを売るのは難しい。住宅競売の大波が来れば、価格は暴落するだろう。最悪の場合、社会の安定と金融の安定の両方が危うくなる」と述べた。

ジェフリーズによると、住宅ローン債権が多い金融機関は、中国銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、中国工商銀行の4大国有銀行。加えて中国版ゆうちょ銀行の中国郵政儲蓄銀行、中国招商銀行、興業銀行という。

中国農業銀行、中国建設銀行、興業銀行、中国郵政儲蓄銀行など各行は14日、未完成または遅延している住宅プロジェクトに関連する融資債権の規模は相対的に小さく、リスクは管理可能と説明した。

ANZは当局がプロジェクトを完了させるために資金支援する可能性があると予想。銀行と国有不動産開発業者も役割を果たすことになるとした。

中国、住宅ローン返済拒否が拡大…相次ぐマンション建設工事中止が国を揺るがす

藤和彦「日本と世界の先を読む」

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー「gettyimages」より
 債務危機に陥っている中国の不動産開発大手、恒大集団は7月22日、「同社のCEOとCFOが辞任した」と発表した。両氏が傘下の不動産サービス企業の預金(134億元<約2700億円>の預金)を第三者の銀行融資の担保に流用していた問題に関与していたことが内部調査で判明したことを受けた措置だ。

 約3000億ドルに上る負債を抱える恒大集団は、7月末までに暫定的な債務再編計画を発表する方針だった。苦境にあえぐ不動産業界にとっての重要な前例になることから、恒大集団の債務再編は注目を集めている。恒大集団は「複数の主要債権者との間で基本的な合意に達した」としているが、債権者の多くは債務再編で回収できる金額の詳細をほとんど把握していない。このタイミングでの経営陣の刷新により、事態の不確実性がいっそう高まったといわざるを得ない。

 中国当局が不動産大手の財務への監視を強めた2020年以降、借り入れに頼る拡大策を続けてきた恒大集団は資金繰りに窮し始めた。この問題は同社にとどまらず、中国不動産業界全体に波及し、深刻な不動産不況を招いてしまった。中国経済の4分の1を占めるが、不動産部門の今年上半期の投資額は前年比5.4%減となった。不動産業界の上位100社による今年上半期のマンション販売成約総額は3兆4700億元(約70兆5000億円)と前年と比べ半分の規模となっており、不動産市場の低迷が長引いていることは明らかだ。中国政府は必死になっててこ入れをしているが、「値上がりを続ける」という不動産神話が崩れた現在、不動産不況の出口はまったく見えないといっても過言ではない。

中国の金融システムにも悪影響

 不動産不況のきっかけをつくった恒大集団の再建が遅々として進まないことが災いして、関連業界も苦境に陥っている。不動産企業による代金の支払いが滞っていることから、工事を請け負った企業(サプライヤー)が経営に行き詰まっているのだ。資金繰りに窮したサプライヤーらは「窮鼠猫を噛む」ではないが、銀行ローンの返済を拒む動きに出ている。中国メディアは19日「恒大集団に資材などを提供していたサプライヤーら数百社が同社から資金回収ができないことを理由に『金融機関への返済を停止する』と宣言した」と報じた。

 金融機関が経営不振に陥った不動産企業の「とばっちり」を受ける事例はこれだけではない。中国では各地で「物件が引き渡されていない」ことを理由にマンション購入者が住宅ローンの返済停止を主張する動きが広まっている。中国では新築マンションの竣工前に購入契約を済ませることが多い。入居前から住宅ローンの返済が始まることが通例だ。だが、恒大集団など経営危機に陥った不動産企業が建設工事をストップさせる事例が相次いだことから、マンション購入者の間でかつてないほどの不満が高まっていた。ローンを払っているのにマンションが完成する前に不動産企業が倒産してしまったら元も子もない。

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2022/07/post_309377.html
Copyright © Business Journal All Rights Reserved.


文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

 権利意識に目覚めた都市部の中産階級が物件引き渡しの遅れを抗議するため、「住宅ローンの返済拒否」という自衛手段に出ているというわけだ。中国メディアは「7月中旬までに300カ所を超える案件で返済拒否が確認された」と報じており、中国の民間調査会社によれば、工事の停止で引き渡しが遅れているマンションに関連する住宅ローンは2兆元(約41兆円)に上るという。返済拒否の動きが沈静化しなければ、金融機関の貸出残高の2割を占める住宅ローン全体が不良債権化してしまうリスクが生じてしまう。低迷が続く2兆4000億ドル規模の不動産市場の問題は、今や中国の金融システムにも悪影響を及ぼし始めているのだ。

 中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は21日、「不動産開発企業に売却済み物件の建設を完了させる」と明言したが、具体的な中身については触れていない。銀保監会は未開発物件の完成を後押しするため金融機関に対し不動産企業への融資を促しているようだが、金融機関はこのところ不動産企業への融資に極めて慎重になっている。政府が奨励したとしても事態が改善するかどうかはわからない。

政治不安の火種に

 この問題は社会不安、ひいては政治不安の火種になりうる可能性もある。「支払い拒否」という現象は、中産階級が中国政府に「ノー」を突きつけている表れだからだ。「中国人は豊かになっても民主主義や人権に対する意識は低いままだ」と揶揄されてきたが、なけなしのカネで手に入れた自らの財産(マンション)にもしものことがあれば、話は違う。「懐の豊かさ」を保障することができなくなれば、中国政府の正統性を揺るがす由々しき事態にもなりかねない。「中国の夢」を掲げ、今年の秋に3期目を目指すとされる習近平国家主席にとっては極めて頭の痛い問題だ。

 2010年から18年まで財務次官を務めた国務院の朱光耀参事は18日、「不動産部門がハードランデイングするリスクがあり、開発会社の流動性危機と返済ボイコットを止めるための介入が必要だ」と異例の警告を発した。

 中国政府は最大3000億元(約60兆円)規模の不動産基金を設立し、経営難に陥っている不動産企業数社を支援する計画が浮上している(7月25日付ロイター)が、問題の発端となった恒大集団の再建問題に適切に対処しない限り、泥沼化した不動産市場が再び活況を呈することはないだろう。中国経済が長期にわたって不況に苦しむことになってしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職

ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2022/07/post_309377_2.html
Copyright © Business Journal All Rights Reserved.

増加する中国の潜在不良債権

2022年10月27日 関辰一
中国では、潜在不良債権が大幅に増加している。ゼロコロナ政策や不動産市場の調整を受けて、金融機関は不良債権化しやすい債権を抱え込むようになっている。

■潜在不良債権は大幅増加
中国では、潜在不良債権が増加している。潜在不良債権とは、広義の営業キャッシュフローである利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)が支払利息を下回る企業が抱える債務を指し、それらを返済が滞る可能性の高い債権と見なしたものである。

上海、深セン、北京の各証券取引所に上場する企業(非金融企業)のうちデータのとれる約3,800社の財務データを基に試算すると、2022年央の潜在不良債権は1兆6,854億元、潜在不良債権比率は9.6%に達している。特に大きく上昇したのが2020年と2021年であり、新型コロナの感染拡大を契機に潜在不良債権が急速に増加したといえる。

このサンプルデータを基に、中国全体の潜在不良債権を試算すると、2022年央で19.7兆元となる。これはGDPの16.9%に相当する規模であり、不良債権が中国経済の重しになっていることが読み取れる。

中国政府が公表している統計では、コロナ禍によって不良債権が大きく増加していることを把握することが難しい。政府統計によると、2022年央の商業銀行の不良債権は3.0兆元にすぎず、不良債権比率も2020年央をピークに緩やかに低下している。

この背景として、政府が景気下支えのために融資拡大を後押ししたことが指摘できる。その手段として、まず、ロールオーバーの要請が挙げられる。2020年以降、政府は、企業の資金繰りを支援するため、借り手の返済能力に問題が発生したとしても、金融機関に積極的な融資姿勢を続けるよう要請した。既存借り入れ分をロールオーバーさせたほか、新規借り入れも増やすことによって、金融機関全体の融資残高のGDP比は2019年末の155%から2022年央には176%まで上昇した。加えて、政府は、不良債権の認定基準を見直して、返済状況が悪化しても不良債権に分類されにくくした。これらの措置によって、不良債権の政府統計は実態を反映しなくなっている。

■非製造業の潜在不良債権の増加が顕著

上場企業の潜在不良債権を業種別にみると、非製造業の増加が著しい。2022年央の上場非製造企業の潜在不良債権は1兆2,447億元と、2019年末に比べて4.9倍に増えた。この結果、上場非製造企業の潜在不良債権比率も10.8%に急上昇した。

この理由として、以下の2点が指摘できる。第1は、わずかな感染も許さない「ゼロコロナ政策」である。感染が発生した地域では、店舗の営業や公共交通機関の停止、幹線道路の閉鎖といった事実上の都市封鎖が行われたほか、厳しい外出制限が実施され、多くの非製造業企業の収入が急減した。

とりわけ、運輸・倉庫の潜在不良債権比率は0.4%から31.1%に大幅上昇となった。国家統計局によると、2022年1~6月の幹線道路、鉄道、飛行機、船舶を合わせた旅客輸送量は2019年同期から▲68.5%の減少となった。この結果、運輸・倉庫業では、営業キャッシュフローで支払利息を賄えない企業が大幅に増加した。

飲食・宿泊業の潜在不良債権比率も同1.2%から18.9%へ大きく高まった。文化旅行部によると、2022年の春節連休の国内観光収入は2019年同期から▲43.7%の減少となった。

第2は、不動産市場の調整である。政府は、住宅価格の高騰や不動産企業の過剰投資を警戒し、2020年から過熱抑制策を需要側と供給側の両面から講じた。需要抑制策として住宅ローン総量規制や住宅購入規制が実施されたほか、供給抑制策として不動産企業向け融資を規制した。これにより、住宅販売が大きく減少した。国家統計局によると、2022年1~6月の分譲住宅販売床面積は2019年同期から▲12.3%の減少となった。資金繰りに行き詰まった一部の不動産企業は住宅建設工事を止めざるを得なくなり、不動産業の潜在不良債権比率2019年末の3.2%から2022年央の22.9%へと大幅に上昇した。

一方で、製造業の潜在不良債権比率は2019年末の8.3%から2022年央の7.2%へと小幅に低下した。ゼロコロナ政策によるサプライチェーンの混乱が足かせとなったものの、コロナ禍でパソコンなどのICT機器の需要が高まり、世界への財輸出が大幅に拡大したためである。

ゼロコロナ政策や不動産市場の調整を受けて、金融機関は潜在不良債権を一層抱え込むようになっている。中国がウイズコロナに転じることができれば、非製造業の経営環境は改善するとみられる。しかし、習近平総書記は党大会で今後も感染拡大を抑制していくと表明し、ゼロコロナ政策の継続に意欲を示した。ゼロコロナ政策に加え、不動産市場の調整も長引くと予想されるなか、今後も潜在不良債権が高止まりを続けると予想される。

住宅ローン支払い拒否、銀行詐欺…中国の不動産・金融「崩壊」最悪のシナリオとは?

世界経済の大きなリスク、何が起きているのか

2022年08月06日 06:00

高幡 和也  住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

  • すでに崩壊しつつある中国の「不動産神話」の現状は?

  • 住宅ローン返済拒否問題が孕む「最悪のシナリオ」とは?

  • 巨額の銀行詐欺事件も追い打ち。不動産と金融「ダブル危機」

現在、中国ではマンションを購入した人が住宅ローンの支払いを拒否するケースが頻出している。一般的に中国の住宅ローンは建物が完成してからではなく契約時にスタートする。

しかし、マンションの建設工事がストップし建物が完成せず、物件が引き渡されないためにトラブルが起きているというわけだ。


昨年から続く不動産不況の影響によって、不動産会社の資金繰りが悪化し、建設工事が中断。完成して引き渡しを受けるどころか、工事再開の見通しすら立っていない物件も少なくないという。

この状況が続けば、不動産開発業者への信頼はさらに低下し、消費者の住宅購入マインドは下がり続け、底の見えない不動産氷河期に突入する可能性もある。中国の販売用建物(マンションなど)は昨年中頃から現在まで販売面積、売上高ともに下がり続けている。

住宅ローン返済拒否がもたらす最悪のシナリオ

日本同様に信じられてきた中国の「不動産神話」はすでに崩壊しつつある。2020年末ごろから中国政府は高騰しすぎた不動産価格を抑制するために、不動産融資規制や購入制限などを行い、その狙いどおり都市部の不動産は過熱感が抑制された。

しかし、政府による市場への介入は日本の平成バブル崩壊と似た構図を作り出すことになった。不動産関連融資を制限したことによって、不動産会社の資金繰りは急激に悪化。その象徴となったのが中国の不動産大手、恒大集団の経営危機問題だ。昨年、恒大集団の総額約2兆元(約40兆円:現在レート)という巨額負債が明らかになり、世界経済全体のリスクとして危機感が強まったことは記憶に新しい。

だが、資金繰り悪化によって経営危機に瀕しているのは恒大集団だけではない。

中国不動産大手「世茂集団」は、今年7月3日が満期だった米ドル建ての債務10億ドル(約1350億円)に関する支払いができず、債務不履行(デフォルト)となった。

恒大集団、世茂集団だけではなく、他の不動産会社についても資金繰り悪化が続けば、マンション建設工事のさらなる遅延や、なかには事実上、工事中止となるマンションも出てくるだろう。

販売不振、経営悪化、工事のストップという負のスパイラルが広がりつつある中、さらに事態を悪化させているのは住宅ローンの支払い拒否による不良債権の増加だ。

報道によれば、返済拒否の公表を確認できた開発案件は300カ所を超えるという。工事の停止で引き渡しが遅れているマンションに関連して不良債権化する住宅ローンは、最大で2兆4000億元(約47兆2000億円)にのぼるとみられる。これらが実際にすべて不良債権となれば、恒大集団の負債を大幅に上回る巨額不良債権が生み出されることになる。国内不動産市場のさらなる信頼低下はさけられず、現在でも困難な不動産会社の資金調達はますます難しくなっていくだろう。

※下図は不動産開発企業の資金調達額の推移。1月から5月までの不動産開発企業の資金調達額は6兆404億元で、前年比で25.8%減少。

銀行詐欺事件がもたらした金融不安

 中国経済をけん引してきた産業の一つである不動産市場への不信感が広がる中、中国で社会不安をさらに高めているのが、被害額が約400億元(約7850億円)ともいわれる巨額の銀行詐欺事件だ。この事件は、河南省の投資グループ、「河南新財富集団」が地銀5行と結託して違法な資金集めを行った巨額詐欺事件である。

今年の4月下旬頃から河南省、安徽省などの5つの地方銀行(村鎮銀行)が、システムの更新を理由に預金の引き出しを拒否した(※実際には当局の捜査の一環として5行の口座が凍結されたためとみられている)。

預金が急に引き出せなくなったことに怒った預金者が、地元政府の銀行監督当局庁舎の付近などで「金を返せ」などの横断幕を掲げ、連日大規模な抗議活動を行った。しかし、集まった人たちがコロナ対策の目的で当局から排除され、その様子がSNS上で拡散されたことで世界にこの騒動が知られることになった。
さらに、抗議のために河南省の省都・鄭州市を訪れた預金者たちのコロナ防疫アプリ「健康コード」が、感染の恐れが高く隔離対象となる赤色の表示となり、実際に隔離されたり追い返されたりしたことで、当局が抗議デモを封じるためこのシステムを操作したことが発覚抗議の声はさらに強まった。

抗議活動の沈静化を図るため、現在は当局が関与し、預金の一部払い戻しを始めたが、まだ事件の全容は明らかになっておらず、全面解決の見通しも立っていない

この事件の舞台となった村鎮銀行(町や村の銀行)は、かねてから資金集めの方法(高い利率をうたいネットで預金を集める)等、リスク管理の脆弱さが問題の収束結果如何によっては、中国国内すべての中小銀行に対する預金者の信頼を大きく揺るがせる事態になりかねない。

経済だけではなく、市民生活にも大きな影響を及ぼす不動産と金融。中国政府がこの2つについてかじ取りを誤れば、中国国内で社会不安が一気に広がる可能性もある。そして、中国の不動産と金融の不安定さは、世界経済全体にとっても大きなリスク要因になることはいうまでもないだろう。

中国「潜在不良債権」は400兆円!習近平3選が不良債権問題に与える影響とは

関 辰一:日本総合研究所 調査部 主任研究員

政策・マーケット政策・マーケットラボ


Photo:Bloomberg/gettyimages

増加する潜在不良債権
中国全体でGDPの約17%

 中国では、(顕在化していない)潜在的な不良債権(潜在不良債権)が増加している。潜在不良債権とは、広義の営業キャッシュフローである利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)が支払利息を下回る企業が保有する債務を指す。こうした債務は、返済が滞る可能性の高い債権と見なされている。

 上海、深セン、北京の各証券取引所に上場する企業(非金融企業)のうち、財務データの入手が可能な約3800社を対象に試算すると、2022年央の潜在不良債権は、1兆6854億元(約34兆円)、潜在不良債権比率は9.6%に達している(図表1)。

 潜在不良債権がとくに大きく上昇したのが2020年と2021年である。両年は、新型コロナの感染が拡大した時期であり、新型コロナを契機に潜在不良債権が急速に増加したといえる。

 このサンプルデータを基に、中国全体の潜在不良債権を試算すると、2022年央で19.7兆元(約400兆円)となる。これはGDPの16.9%に相当する規模であり、不良債権が中国経済の重しになっていることが読み取れる。

参考文献・参考資料

中国経済は回復しつつあるが内需は弱い=共産党政治局 (msn.com)

中国恒大、債務再編案で債権者の同意得られず-期限を3週間延長 (msn.com)

中国の不動産抗議問題に当局介入、期日までの住宅引き渡し約束 | Reuters

金融機関の貸出残高の2割を占める住宅ローン全体が不良債権化してしまうリスク:中国、住宅ローン返済拒否が拡大 | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp)

中国、住宅ローン返済拒否が拡大…相次ぐマンション建設工事中止が国を揺るがす (biz-journal.jp)

増加する中国の潜在不良債権|日本総研 (jri.co.jp)

住宅ローン支払い拒否、銀行詐欺…中国の不動産・金融「崩壊」最悪のシナリオとは? – SAKISIRU(サキシル)

中国「潜在不良債権」は400兆円!習近平3選が不良債権問題に与える影響とは | 政策・マーケットラボ | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?