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政治(産業)講座ⅴ1107「物資は有限、知恵は無限」

 昔、実社会に出た時に先輩に言われたことに、「知識があっても知恵がない」がこれではいけないと。まさに「論語読みの論語知らず」である。
 福沢諭吉著『学問のすゝめ』にも「論語読みの論語知らず」を戒めており、実学をすすめているのである。
 中国の論文数が世界一であると宣伝されているが、学術論文の質・内容ではなく、論文件数を上げることに論文の目的化しているようである。それで、米国を抜いたとは本末転倒で片腹痛い。
 そして、これも中国共産党のプロパガンダであり、心理作戦の一環である。優位性を見せつけて、上から目線の態度をつくり、心理的にかなわないという事を植え付けて、優位に立とうというものである。
 中国の経済統計やGDPなども粉飾・捏造があると聞く。
 科学論文の「ニセ論文」を聴いて「然り」と納得できる。   日本の報道機関も自虐的悲観論の論調が見受けられるが、決してそのような自虐的悲観になる必要がないことが分かる。学術交流するだけでスパイ容疑で拘束される社会で自由な研究と論文ができるわけがない。中国にはそのような研究の土壌がないので研究論文という花は咲かないし、ノーベル賞という果実もできないのである。そして、日本は如何に素晴らしい国であるか、次にその報道記事を紹介する。

     皇紀2683年5月25日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

レアアース使用削減へ、脱中国依存 日本メーカー技術開発を加速

日本メーカーが、モーターなどのレアアース(希土類)使用を減らす技術の開発を加速させている。特に電気自動車(EV)用モーターに欠かせない磁石では、プロテリアル(旧日立金属)などが現在主流でレアアースの一種「ネオジム」を原料に使った磁石からの代替を狙う。レアアース採掘では中国が約7割のシェアを握り、各国の経済安全保障を脅かしている。各社は中国依存脱却とともに使用量を減らすニーズも拡大するとみて実用化を急ぐ。

プロテリアルはEVなどのモーター向けに、現在主流のネオジム磁石と置き換え可能な「高性能フェライト磁石」を開発した。既にモーターメーカーなどへのサンプル供給を始めており、問い合わせも寄せられているという。フェライト磁石は鉄を主成分とし、希少なレアアースを使わないためコストを抑えられる。製造方法やモーター内部での配置を工夫し、ネオジム磁石に迫るモーターの最大出力を確保した。

モーター用磁石では、デンソーも鉄とニッケルだけを原料に使ってネオジム磁石と同等以上の性能を引き出せる「鉄ニッケル超格子磁石」を開発し、数年後に実用化したい考え。また東芝が東北大と昨年開発し、数年以内の実用化を目指す「サマリウム鉄系等方性ボンド磁石」は、調達懸念のあるネオジムを入手しやすいサマリウムに換え、使用量を半減させたにもかかわらず、やはりネオジム磁石並みの性能を発揮できる。

レアアースの使用を減らす動きはモーター以外でも進む。東レはリチウムイオン電池の電極材料を生産する際に細かく砕く用途で使う「高耐久性ジルコニアボール」を開発。安定化剤に使っているレアアースを別の素材に置き換える一方、耐久性を高めて交換頻度を減らし、コストを抑えられるようにした。今後はベアリング(軸受け)など他の用途も開拓し、令和12年度に数十億円を売り上げたい考えだ。

レアアースは全部で17種類あり、さまざまな用途で使われていることから産業のビタミンと呼ばれる。中国が事実上の対日禁輸に踏み切った平成22年の「レアアース危機」などで重要物資としての認識が高まるにつれ、安定調達が重要な課題となっている。

中国政府はレアアースを使った高性能磁石の製造技術について、禁輸に向けた検討を進めている。中国依存の高さを強みに威圧的態度をとる中国の動向は、使用削減の動きをさらに加速させそうだ。(井田通人)

小さな島国・日本、実は隠れた資源大国だった?―華字メディア

Record China によるストーリー • 

華字メディア・日本華僑報網は22日、「小さな島国・日本、なんと隠れた資源富豪だった?」とする文章を掲載した。© Record China

華字メディア・日本華僑報網は22日、「小さな島国・日本、なんと隠れた資源富豪だった?」とする文章を掲載した。

文章はまず、「世界的に近代化が加速する中、数百万年をかけて形成されてきた天然資源は現在の生活のニーズを満たすことはできなくなってきている」と指摘。「エネルギー危機は一触即発の状態であり、この難関を突破するには代替品を探すほかなく、再生可能エネルギーの応用が大きな注目を集めている」とした。

そして、天然資源の分布は不均衡であり、再生可能エネルギーの活用も地域によって異なるとした上で、日本について「化石資源には乏しいものの再生可能エネルギーは豊富で、特に洋上の風力発電の潜在力は大きい」と説明。周囲を海に囲まれた島国・日本ならではで、重要な選択肢になるだろうと論じた。

文章は日本にとっての洋上風力発電の利点について、「海岸線が入り組んだ形をしており、多くは深水海域のため浮体式洋上風力タービンを設置するのに適している。浮体式は着床式よりも台風や地震、津波などの自然災害の影響が少ないと言われ、安定して発電を続けることができる」とした。

また、「2016年に日本初となる浮体式洋上風力発電設備が実用化され強力な発電力を示している」と紹介。「現在のところは洋上風力発電所の建設コストは割高であるものの、技術の成熟に伴い全体のコストは設備数の増加に伴い急速に平準化されていくだろう」とし、「同じ設備なら陸上よりも海上の方が発電効率が高く、普及すれば火力発電設備よりも単価が安く、環境にも優しい」と述べた。

文章は、「これまで日本の再生可能エネルギーは太陽光に偏っていた。21年度の発電量では太陽光が9.3%を占めたのに対し、風力発電はわずか0.9%だった」と指摘。「世界第6位の排他的経済水域(EEZ)と領海を持つ海洋国家である日本の洋上風力発電の可能性は、他の再生可能エネルギーと比べて圧倒的と言える。これは日本の地場企業の技術支援と国内外が足並みをそろえて事業化を進めてきたことによる」とした。

そして、「大規模な事業化により従来型の発電に取って代わるという流れは顕著になっており、例えば中国の水深100メートルを超える場所では日本の技術が使われているほか、太平洋への進出も期待されている」と説明。「将来、浮体式洋上風力発電は主要な再生可能エネルギーになるのか、注目される」と結んだ。(翻訳・編集/北田)

ペロブスカイト太陽電池 実用化への道!薄くて軽くて雨でも発電!?

NHK 2022年9月20日 午後2:00 公開

人類が直面しているエネルギー問題を解決し、脱炭素社会を実現するため、再生可能エネルギーの活用が加速しています。その中で大きな期待を集める「太陽電池」ですが、従来型の太陽電池は、発電効率が天候に大きく左右され、曇りや雨の日だと発電量が大幅に落ちるという弱点がありました。その弱点を克服しようと、今、世界中が「次世代型太陽電池」の開発に注力しています。

その中で、最も注目されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」です。曇りや雨の日、さらに室内の弱い光でも発電することができることに加え、薄くて軽いため様々な場所に設置することが可能で、世界中の企業が実用化に向けた開発にしのぎを削っています。

実は、このペロブスカイト太陽電池は日本人研究者が開発したもので、そのきっかけは学生からの相談という意外なものでした。“ノーベル賞候補”とも言われるほどの画期的な太陽電池の開発秘話と可能性に迫ります。

世界が注目! ペロブスカイト太陽電池の実力

地球に降り注ぐ太陽のエネルギーを全て電気に変換できれば、世界中で使うエネルギーをまかなえるほどのポテンシャルがある「太陽光発電」ですが、現在の主流となっている「シリコン」を用いた太陽電池は、寿命が長くて、発電効率が高いという利点がある一方、天候によって発電効率が大幅に落ちるという弱点を抱えていました。

その弱点を克服しようと開発が進められているのが「次世代型太陽電池」です。その市場規模は、2035年には現在の10倍以上、年間8,300億円にまで成長すると予測されています。そして、その大部分を占めると考えられているのが「ペロブスカイト」を用いた太陽電池です。

ペロブスカイトというのは、もともと自然界にある鉱石です。その結晶構造に特徴があり、利用価値が高いため、人工的に作ったものが超電導やLEDの材料などに使われています。

この人工的に作ったペロブスカイトの結晶を太陽電池の素材に使うと、曇りや雨の日、さらに室内の照明でも発電できることが発見され、次世代型太陽電池の最有力候補となったのです。そして、弱い光での発電を実現させているのが、ペロブスカイト太陽電池のもう一つの特徴である“薄さ”です。

「薄さ」のおかげで曇りでも発電可能

太陽電池は、材料に半導体が使われています。半導体は光を吸収すると、電子(マイナスの電荷を帯びている)と正孔(プラスの電荷を帯びている)がセットで生まれ、それらが別々の電極に移動していくことで電流が流れて発電する、という仕組みです。このとき、電子や正孔の移動距離が長ければ長いほど、それらが電極まで到達できずに損失となります。

従来型のシリコンの場合、太陽電池パネルを薄くすることに限界があるため、光を吸収して生じた電子や正孔が電極まで非常に長い距離を移動しなければなりません。強い太陽光が当たっていると問題なく発電できますが、曇りなどで光が弱くなると、生じる電子や正孔が少なくなるため、影響が大きくなります。

一方、ペロブスカイト太陽電池は光を吸収する力が強く非常に薄い0.1マイクロメートルでも電池として使えるため、電子や正孔の移動距離が短く、ロスがほとんどなく電極に到達できます。そのため、太陽光の500分の1程度の強さの光である室内の照明でも発電ができるのです。

また、ペロブスカイト太陽電池が非常に薄いことは、弱い光で発電できること以外にも大きなメリットがあります。フィルム状の曲げられる太陽電池も作ることができるため、様々な場所に使うことができるのです。

自動車メーカーでは車体に貼り付けてソーラーバッテリーに使うアイデアや、家電メーカーでは室内のIoT機器の電源に使うというアイデア、建築分野では建物全体に貼り付けて発電するアイデアが提案されるなど、様々な業界でペロブスカイト太陽電池を使う構想が練られています。

開発のきっかけとなった“学生の声”

この画期的な太陽電池の生みの親は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授です。宮坂さんがペロブスカイトと出会ったのは、今から17年前のことでした。当時、ペロブスカイトは超電導やLEDの材料などには使われていましたが、太陽電池の世界ではほとんど知られていませんでした。

「開発する前はペロブスカイトという物質に私はあまりなじみがありませんでしたが、私の研究室に来た大学院生が突然『ペロブスカイトによる太陽電池をやってみたい』と言いだしたのです」(宮坂さん)

当時、大学院生だった小島陽広さんは、もともとペロブスカイトの特性を調べる研究をしていましたが、その光を吸収する性質に注目し、もしかしたら光を電気に変える性質を持っているのではないかと考え、宮坂さんに相談を持ちかけたのです。

「私は基本的には学生がやりたいと言ったことは『まずは試してみるべき』という考えでしたので、軽い気持ちで『じゃあ、やってみたら』と言いました。しばらく実験をした後、小島さんから『光を当ててみたら微弱な電流が生じた』という報告を受けたのです」(宮坂さん)

それまで太陽電池の素材としては注目されていなかったペロブスカイトが、発電すると分かった瞬間でした。しかし、いざ本格的に太陽電池の研究開発に着手したところ、すぐに大きな壁にぶつかったといいます。

「本腰を入れて太陽電池を作ったのですが、なんせ安定性が悪く、しばらく光を当てると発電しなくなるんです。しかも効率も低くて、正直、これはダメかなと思っていました」(宮坂さん)

実際、2009年に発表した論文は、光を電気に変える効率(光電変換効率)が低いために、世界の研究者からの反応はほとんどありませんでした。

転機が訪れたのは2012年のことでした。ペロブスカイト太陽電池に関心を持った海外の研究者が、「発生した電気を電極に運ぶ部分を液体から固体に変える」という研究を始めたのです。これにより光電変換効率を3%から10%を超えるレベルにまで上げることに成功しました。その成果を『サイエンス』誌に発表したところ、世界中の研究者の目に留まり、ペロブスカイト太陽電池は一気に注目される存在となったのです。

そして、世界中で研究が重ねられた結果、変換効率は飛躍的に向上し、従来の太陽電池に匹敵する25%を超えるまでになったのです。今や世界中で推定3万人ほどの研究者がペロブスカイト太陽電池の研究開発に参入し、実用化に向けた開発競争が激化しています。

宮坂さんは、ペロブスカイト太陽電池がこれほど世界から注目される存在になったことに驚きながら、こう振り返ります。

「ペロブスカイトは化学と物理という異分野が交わっているテーマです。私たちは化学が専門ですが、物理にも手を出す。不得意でも試してみるというチャレンジ精神が非常に大切だと思ったからです。難しいとは思っていましたが、誰もやっていなかったことだからこそ、チャレンジしがいがあると思ってやりました。やってみてよかったですね」(宮坂さん)

実用化に向けた開発競争の今

宮坂さんは、ペロブスカイト太陽電池は“実用化の入り口”に入ったと考えていますが、実用化のためには大きな課題が残っています。それは「大型化」と「耐久性」です。

日本のある化学メーカーでは、2025年までに実用化することを見据え、大型化を実現しようと研究開発を急ピッチで進めています。大型化が難しいのは、安定して高い効率で発電するために、太陽電池の面に均一にペロブスカイトの結晶を並べる必要があるからです。面積が小さい場合は均一に並べることができても、面積が大きくなるにつれ結晶にばらつきが発生し、効率が落ちてしまうのです。

このメーカーでは均一に作る技術を磨き、30センチ角であれば結晶のばらつきを抑えて十分に高い効率で発電できる太陽電池を作る方法を確立しました。そして、これを組み合わせることで1メートル角以上の大型の電池の実用化を進めようと考えています。

また、ペロブスカイト太陽電池は、物質としての安定性が低く、劣化が早いため耐久性に課題がありました。この課題を解決する方法として、このメーカーでは、耐久性が高いシリコンの太陽電池にペロブスカイト太陽電池を重ねるという「タンデム型」の太陽電池の開発も行っています。

このタンデム型にはもう一つ大きなメリットがあります。ペロブスカイトとシリコンとでは、それぞれ吸収する光の波長帯が異なるため、二つを組み合わせることで、より広い範囲の波長の光を無駄なく使え、変換効率を高めることができるのです。

このメーカーでは、タンデム型はバルコニーや壁面に設置し、ペロブスカイト太陽電池は透明タイプで窓ガラスに貼り付けるなどして、太陽電池を建物のさまざまな場所に張り巡らせたいと考え、開発を続けています。

宮坂さんは、シリコンとペロブスカイトの太陽電池がこれから共存していく将来を考えています。

「晴れた日にはシリコンを使って、曇った日はペロブスカイトが補助する。また、シリコンが使えない窓や壁などはペロブスカイトを使っていくと。両方が共存していくことで、総エネルギー量を高めていくというのが今後の方向性だと思います。実用化される未来はそんなに遠くないと思います。場合によっては、数年先には商品化が始まると思っています」(宮坂さん)

一人の大学院生のアイデアとそれを尊重する宮坂さんのチャレンジ精神によって誕生した次世代型太陽電池が、実用化への課題を克服し、地球のエネルギー問題を救う日が来るかもしれません。日本生まれの画期的な新技術の今後に期待が高まります。

薄くて軽くて曲がるフィルム型の次世代太陽電池 都と企業が実証実験を開始

ABEMA TIMES によるストーリー • 昨日 18:42


薄くて軽くて曲がるフィルム型の次世代太陽電池 都と企業が実証実験を開始© ABEMA TIMES

東京都は、積水化学工業と共同でフィルム型の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の実証実験を始めました。

【映像】薄くて軽くて曲がる フィルム型の次世代太陽電池

ペロブスカイト太陽電池は日本で開発された技術で、従来のシリコン製の太陽電池と比べて重さは約10分の1と軽く、薄さは1mm程度です。また、柔軟性があり湾曲した場所にも設置が可能です。

都はより過酷な環境下での耐久性を調べるため、潮風やガスなどの影響を受ける下水道施設での実験を決めました。視察した小池都知事は、新たな再生可能エネルギーに期待を寄せました。

「薄くて軽くて曲がるという利点を有効に活用する。また原材料が我が国が世界の3割を占めるヨウ素を活用する点でも、有効なツールになっていく」(小池都知事)

実験は2025年12月までで、実用化に向けてさまざまな実験を行うとしています。(ANNニュース)

日本企業の「付加価値ビジネス」は限界なのか 過度な価格競争が招いた「製造業」の地盤沈下

岩崎 博充 によるストーリー • 2 時間前

製造業が行ってきた「付加価値ビジネス」は日本経済の屋台骨だった(写真:cba/PIXTA)© 東洋経済オンライン

日本経済の衰退が叫ばれて久しい。とりわけ、製造業の地盤沈下が進んでいる。製造業大国・日本が世界を席巻していたのは1980年代のことだ。

UNCTAD(国連貿易開発会議)によれば、日本の世界の貿易における輸出総額のシェアは、1985年には9.01%で世界3位だったものの、2022年には2.99%と5位まで低下している。

なぜ日本の製造業は衰退してしまったのか。その理由として、少子高齢化や海外戦略の失敗、労働生産性の低下などが挙げられるが、いずれも的確な答えになっているとは思えない。

そもそも、日本の製造業では、資源に乏しい日本特有のスタイルが確立されていた。素材を海外から輸入し、付加価値の高いものづくりによって利益を上げていた。いわば「付加価値ビジネス」とも呼ばれる産業構造になっていた。

その付加価値ビジネスが徐々に機能しなくなり、企業の稼ぐ力が衰退。日本の製造業が苦難に陥っている、と言ってよいだろう。モノやサービスがあふれている現代では、商品の付加価値が高くなければ価格競争で勝負するしかなくなる。そのため、日本は国内外で価格競争に陥りがちとなり、その結果、30年にわたるデフレ経済を強いられてきた。

なぜ、日本企業が稼ぎ出す付加価値は少なくなってしまったのか。そもそも企業の付加価値とは何なのか。日本の得意としてきた「付加価値ビジネス」について検証してみよう。

企業の付加価値とは何か

もともと企業の付加価値額の計算方法は、「加算法(日銀方式)」や「控除法(中小企業庁方式)」など数多くの計算方法があり、統一されていないのが現実だ。たとえば、経済産業省の「企業活動基本調査速報(2021年実績)」でも付加価値額が算出されている。同調査対象の企業(約3万3700社)の売り上げは702.5兆円、付加価値額は136.3兆円だった。同調査の付加価値額は次のような計算式で求められている。

●付加価値額=営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課

企業会計上の「粗利益(売上総利益)」に似ている概念だが、商品やサービスの売り上げから仕入れなどに要した費用や人件費、諸経費などを差し引いたものと考えればいい。高い成長率を達成している企業の多くは、この付加価値額(粗利益)が成長とともに増えていくのが普通だ。

一方、中小企業庁の控除法は、売上高から経費を差し引いた金額を付加価値額として算出する。

●付加価値額=売上高-外部購入価値

これを言い換えれば、売上高を増やして経費をカットすれば企業の付加価値はアップすることになる。日産自動車を短期間で立て直したカルロス・ゴーン元CEOのような経費カットが、付加価値向上の切り札と思われてきた。

人件費がカットされて、給料の高い正規社員が減少し、非正規雇用者が急増。さらに売上高を増やすために、価格競争に参入する企業が主流を占めた。その結果、日本は海外の格安の労働力に頼ることになり、日本の製造業の多くは生産拠点を海外に移すことになる。

付加価値創造の切り札はイノベーション

日本は、商品開発や新しいサービスの開発で付加価値を高めるのではなく、海外の格安な労働力でモノを作って、より安い価格で商品を提供するほうを選択してしまった。ユニクロやダイソーが格安のビジネスモデルを展開し、日本企業の多くが価格競争への参加を強いられた。これが、デフレの原因のひとつと言ってもよいのかもしれない。付加価値をつけるか、価格で勝負するかが、ここ30年の選択の分かれ目だったというわけだ。

その点、ドイツやオランダなど欧州企業は、いたずらに価格競争に参加せずに、商品やサービスの付加価値を上げることで生き残ってきた。日本は、IT社会の到来やデジタル化といった「メガトレンド」に乗り遅れることが多かった。自動車産業も、ガソリン車からEV(電気自動車)にシフトしなければいけなかったのに、ハイブリットという技術でガソリン車に固執してしまったために、EVというメガトレンドに乗り遅れつつある。

要するに、付加価値を創造する最もオーソドックスな方法は、価格競争や目先の付加価値をつける変革ではなく、新しいイノベーションにいかに乗り遅れないか。「付加価値創造=イノベーションだ」と言っていいかもしれない。

日本の付加価値創造力のなさはデータに如実に表れている。日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較」によると、日本の時間あたりの労働生産性(就業1時間あたりの付加価値)は49.9ドル(2021年OECD調べ、購買力平価換算)。85.0ドルの労働生産性があるアメリカの6割程度しかなく、OECD加盟国38カ国中、第27位となっている。

年間の労働生産性(就業者1人あたりの付加価値)でも、日本は8万1510ドル(818万円、2021年、同)しかなく、ポーランドやハンガリーといった東欧諸国と同程度。順位も1970年以降で最低の29位。従業員1人の付加価値を稼ぎ出す労働生産性が確実に低下していることを物語っている。

日本では最近になって働き方改革が注目されるようになったが、労働時間に制限を設け、少ない労働時間で高い生産性を生み出すシステム作りをしなければならない。例えばドイツでは、平日の労働時間を理由のいかんにかかわらず最長でも10時間までに制限している。OECDの中では、最も少ない労働時間だ。

ドイツに大きく遅れた日本の製造業

ドイツは、日本の製造業を語るときによく比較される対象国のひとつだ。現在日本はGDP世界3位だが、4位のドイツとの距離は急激に縮んできている。このままでは、追い抜かれてしまう可能性が高い。

なぜ日本はドイツに抜かれようとしているのか。日本は大企業に比べて中小企業の生産性が低く、日本全体の地盤沈下に拍車をかけている。一方、ドイツでは従業員が500人以下の中小企業が国際競争力をつけて世界で活躍している。

日本の製造業が衰退しつつある中で、ドイツはいまも製造業大国の地位を確保している。冒頭で示した世界の輸出シェアでも、ドイツは6.6%(2022年)程度を維持している。中国の台頭(同14.4%)が著しく、シェア自体は下げたものの欧州共同体(EU)の中心的な地位はゆるぎない。

ドイツは長年、「独り勝ち」という指摘をされてきた。かつて日本は、ドイツに比べて人口や企業数、GDPのいずれも約1.5倍程度だった時代があった。しかし、現在のドイツは、年間労働時間が日本の3分の2しかないのに賃金は日本の1.5倍もある。

 この理由を、日本と異なり価格競争に関心を示さなかったからだと指摘する人は多い。家電やカメラ、時計、スマホなどの製造から撤退。日本のように既存製品の生産に執着せず、韓国や中国といった新興勢力と価格競争もしていない。その分、ITなどデジタル化を進め、医療機器やバイオテクノロジーなど付加価値の高い製品開発に集中的に投資してきたのだ。

企業の付加価値はどうすれば上がるか

一口に企業の付加価値を上げると言っても、いわゆる特効薬はない。とはいえ、日本の場合「労働生産性が低い」「雇用の流動性が低い」「中小企業が多い」「新商品や新市場を開拓するパワー不足」「デジタル化の遅れ」といった課題はわかってきている。

そんな中、企業への刺激となりうる取り組みも出てきた。東京証券取引所が上場企業に対して「PBR(株価純資産倍率)改善」を要請したのだ。PBRは純資産に対する時価総額の大きさを示す指標。投資家が事業遂行のために企業に委託している資金を「純資産額=投下資本」と考えれば、株式時価総額から純資産額を差し引いた額は付加価値とも言える。つまり、PBRが高ければ、それだけ付加価値を生んでいるというわけだ。

東証が重い腰をあげたことで、海外投資家は即座に反応した。4月には2兆2300億円(東証プライム市場)の海外投資家による買い越しがあり、5月19日の日経平均株価は3万808円とバブル後高値を更新している。

こうした動きを受けて、上場企業を中心にPBRの向上を意識した経営スタイルが確立されていくはずだ。PBR向上のためには、人件費のカットや生産効率の向上といった部分に加えて、新商品の開発や新市場の開拓、イノベーションへの取り組みが必要になってくる。

日本では政府による数多くの補助金制度がある。たとえば、政府によるデジタル投資支援策ひとつをとっても、経済産業省・中小企業基盤整備機構、中小企業庁、日本政策金融公庫、厚生労働省といった省庁が複数の補助金制度を用意して、お金をばらまいている。

企業のイノベーションを生み出すためには、単に補助金をばらまくだけでは不十分だろう。本当に企業の付加価値を上げるための制度作りを、省庁をまたいで展開すべきだ。

参考文献・参考資料

レアアース使用削減へ、脱中国依存 日本メーカー技術開発を加速 (msn.com)

小さな島国・日本、実は隠れた資源大国だった?―華字メディア (msn.com)

ペロブスカイト太陽電池 実用化への道!薄くて軽くて雨でも発電!? - サイエンスZERO - NHK

薄くて軽くて曲がるフィルム型の次世代太陽電池 都と企業が実証実験を開始 (msn.com)

日本企業の「付加価値ビジネス」は限界なのか 過度な価格競争が招いた「製造業」の地盤沈下 (msn.com)

学問のすゝめ - Wikipedia

福沢諭吉著 伊藤正雄校注『学問すゝめ』旺文社1988重版発行

政治講座ⅴ1058「中国の学術論文のからくり(ニセ論文カウント)」|tsukasa_tamura (note.com)

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