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政治講座ⅴ1093「BRICS通貨構想?通貨発行権は誰が持つ?」

 自分の国に無い「財」はどのようにして獲得するか? 武力で略奪するか、「貨幣(通貨)」で売買契約で合法的に取得するか、物々交換で取得するか。共通通貨の社会実験として成功した例はEUにおける通貨統合であろう。各国が通貨発行権を放棄してまで、なぜ通貨統合を望み実現に至ったかというと西欧の各々の国では米国ドルに太刀打ちできないなどの通貨が錯綜していたためであろう。そして、両替の不便さから西欧の市場の利権(ドル覇権からの脱却)を確保しよと試みたのである。これで一つのユーロ経済圏の誕生となったのである。翻って、中国の「元」による基軸通貨の構想は可能かと言う命題は、中国は自らを未だ「発展途上国」と称しており、先進国の自覚と他国への国際支援をせずに、発展途上国に対して、経済支援という債務の罠(債務漬)で利益を吸い上げるなどというならず者国家の振る舞いをしている。中国は世界第2位のGDPの経済大国で実質先進国ありながら、「俺だ!俺だ!」のオレオレ詐欺まがいの「発展途上国だ!発展途上国だ!」の途上国詐欺みたいなものである。今回は通貨をに関する報道記事を紹介する。

     皇紀2684年5月19日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

世界の中銀、中国人民元の利用増やす-1~3月の外貨スワップ枠

Bloomberg News によるストーリー • 8 時間前

(ブルームバーグ): 世界の中央銀行が外国為替スワップ枠で利用している中国人民元が1-3月(第1四半期)に過去最高水準に達し、人民元の国際的地位が高まっていることがあらためて示された。

  中国人民銀行(中銀)が15日発表したデータによると、3月末時点の外貨スワップ残高は1090億元(約2兆1300億円)。2022年末から200億元増え、四半期ベースで過去2番目に大きな伸びとなった。人民銀は国別の利用額を開示していない。

Global Central Banks' Use of PBOC Swap Lines at A Record | Foreign countries increasingly tapped currency swap to get yuan© Source: People's Bank of China

  外貨スワップでの人民元の利用増加は、ドル依存を弱め対中貿易を現地通貨で決済しようとする国が増えていることに加え、財政難を克服するため中国の助けを借りようとする国も出てきたことを反映している。

  アルゼンチンは4月、自国通貨ペソの急落後、中国からの輸入代金支払いに充てるためスワップ枠を利用すると発表。ブラジルは貿易の一部を現地通貨で決済することに合意し、中国と元建て取引を容易にするための措置を講じた

  オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)の大中華圏調査責任者、謝棟銘氏は「人民元の国際化を支援するため、人民銀がスワップ枠を通じて流動性を提供している可能性がある」と指摘。通貨スワップや国境を越えた融資は、中国の貿易相手国が貿易赤字に陥っている場合、人民元を確保する数少ない選択肢になり得ると語った。

  中国は越境資本移動に対し厳格な管理を続けており、これが引き続き人民元の地位向上の妨げになっているが、米国が発動しているロシアなどに対する金融制裁が国際取引における代替通貨としての人民元普及の一因になっている。

原題:Central Banks Use Record Amount of Yuan Via PBOC Swaps (1)  (抜粋)--取材協力:Ran Li、Wenjin Lv、Anusha Ondaatjie.More stories like this are available on bloomberg.com©2023 Bloomberg L.P.


「BRICS通貨」の白日夢を冷笑する中国とロシアの現実

土田 陽介 によるストーリー • 2 時間前

4月14日、中国・北京で開かれた歓迎式典で習近平国家主席とともに歩くルラ大統領。© BUSINESS INSIDER JAPAN 提供


世界の基軸通貨といえば米ドルだが、新興国では、特に左派政権の下で、その米ドルによる「支配」から脱却しようという動きが定期的に盛り上がるものだ。1月に再登板というかたちで就任したブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領(ルラ大統領)もまた、そのような米ドル支配からの脱却を重視する政治家の一人だ。
そのルラ大統領は就任早々、隣国アルゼンチンを訪問した際、同国のフェルナンデス大統領に対して、米ドルによる「支配」からの脱却を進めるため、両国間の貿易決済に用いる共通通貨を創出しようと持ちかけた。厳密な意味での通貨統合ではなく、貿易決済にのみ用いる通貨を「デジタル通貨」で発行しようというのだ。
ルラ大統領はこの「デジタル通貨」の名称を、スペイン語で「南」を意味する「スル(sur)」にしようと提唱し、このスルを南米全体(いわゆる、メルコスールと呼ばれる南米南部共同市場)に拡げようという理想も抱いている。メルコスール全体でスルが利用されれば、米ドルによる「支配」の脱却が進み、南米での市場統合も促進されるとルラ大統領は主張する。
さらにルラ大統領はBRICS諸国、つまりブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの間でも、貿易決済に用いる共通通貨を創出する構想を抱いている。ルラ大統領は有力な新興国であるBRICSの間で共通通貨が利用されれば、米ドルによる「支配」からの脱却が一段と進むと考えているようだ。そのため、BRICSの雄であり新興国の雄でもある中国に期待を寄せている
実際にルラ大統領は、4月中旬に中国を訪問して習近平国家主席との会談に臨んだ際、BRICS 間で共通通貨を創設する構想を持ちかけたようだ。BRICS間で共通通貨を創出した場合、その信用力を提供するのは、他ならぬ中国となる。言い換えれば、中国を除くBRICS諸国で共通通貨を創出したとしても、その信用力は乏しいままとなる。

ルールベースでの経済運営は新興国にはまず不可能

仮にメルコスールが貿易決済に用いる共通通貨を創出し、さらにそれがBRICS間の共通通貨と統合した場合、米ドルを中心とする貿易決済の在り方は変わる。米ドルによる「支配」からの脱却も進むことになるだろう。とはいえ、それがルラ大統領の提唱するデジタル通貨の発行によって達成されるとは考えにくい。
共通通貨が信用力を持つためには、ユーロのような「通貨統合」が必要となるはずだ。しかしルラ大統領は、共通通貨を貿易決済に限定し、同時に各国の通貨を維持する構想を持つ。各国民が貯蓄手段・交換手段としても共通通貨を用いない限り、その信用力は高まらない。
通貨統合を図らないデジタル通貨の形態と採るとしても、決済通貨の信用力を高めるためには、各国が一定の幅で共通通貨と各国通貨の為替レートを維持する必要がある。そのためには、インフレを抑制するなどルールベースでの経済運営を徹底する必要があるが、それがブラジルなどの新興国に果たして可能なのかという根本的な疑問がある。
メルコスール諸国で米ドルによる「支配」からの脱却を訴えるのは、ほとんどが左派政権だ。共通通貨を提唱するブラジルのルラ大統領自身、同国を代表する左派の大物政治家であり、バラマキ志向が強いことで知られている。そうしたバラマキ志向が強い左派政権が、ルールベースでの経済運営を徹底できるとは、まず考えられない。

中国にとっても望ましいは言えないBRICS共通通貨

BRICS共通通貨に話を転じると、その創設をブラジルから持ちかけられた中国が、この構想を支持しているとも考えにくい。
確かに中国は、米ドルに代わる決裁網として、いわゆるCIPS(人民元決済システム)の整備に努めるなど、人民元の国際化を重視している。しかし、ブラジルが提唱する共通通貨構想とは、必ずしも親和的ではない。
人民元の国際化を、中国が途上国を経済的に「支配」する動きと評する向きもあるが、そもそも中国が人民元の国際化を進めれば、中国は人民元が普及した第三国で生じた経済的なショック(財政危機や国際収支危機)のコストを、否応なしに負担せざるを得なくなる。そのため中国は、慎重に人民元の国際化を図ろうとしている。
同じ理屈で、中国がBRICS共通通貨に参加すれば、それが貿易決済のみの利用だとしても、他のBRICS諸国で発生した財政危機や国際収支危機の悪影響を中国は負うことになる。また共通通貨を守るためには、世界第2位の経済大国である中国が否応なしに危機対応支援の矢面に立たなければならない。そうした強い意志を中国の習近平政権が持っているとは考えられない。
それに、中国に並ぶ雄であるインドがBRICS 共通通貨の導入に前向きになることもないだろう。BRICS共通通貨に参加すれば、インドに対する中国の政治的・経済的な影響力は否応なしに強まる。国境問題や通商摩擦を抱える両国の関係は複雑であるため、インドからすれば、できるだけ中国の影響を排したいのが本音だろう。

先進国以上に一枚岩ではない新興国

ロシアもまた、BRICS共通通貨に対してネガティブなはずだ。
共通通貨に参加して、財政支出等、経済政策にルールベースでの運営が義務付けられた場合軍事支出にも制限が科される。ロシアの場合、仮にウクライナとの間で停戦が成立しても、軍事費は長期的に高止まりせざるを得ない。そうした状況をロシアが受け入れるなど、非現実的だ。
ルールベースでの経済運営を余儀なくされるくらいなら中国の人民元を貿易決済に利用したほうが、ロシアには好都合となる。すでにロシア国民にとって、人民元は、利用が制限されている米ドルやユーロの代替通貨となっている。
こうして整理すると、ブラジルが提案するBRICS共通通貨構想は、「ブラジル以外の国にとっては不都合」な性格が強い。
いま、世界の構図を先進国と新興国の対立と捉える向きもあるが、一方で新興国もまた決して一枚岩ではなく、政治的・経済的な対立を抱えている。
したがって、米ドルによる「支配」からの脱却が新興国共通の目標だとしても、その手法で新興国が一致することは、まず考えられない。ブラジルが語る理想を中国やインドの現実が許さない。
ブラジルが提唱するかたちでBRICS共通通貨が生まれることはないし、仮に生まれたとしても、それが米ドルの地位を脅かすことはないだろう。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

EUにおける通貨統合

令和2年6月29日

1 通貨統合の歴史

 欧州において単一通貨を導入しようとする構想は,古くは第二次世界大戦前から存在したが,具体的に動き出したのは,1989年に欧州共同体(EC=後の欧州連合EU)がEMUの完成へ向けて,以下の具体的なロードマップを定めた以降である。

第1段階(1990年7月-1993年12月):域内市場統合の促進

  • 人,物,サービスの移動の自由化

  • 中央銀行総裁会議(EC各国の中央銀行総裁の集まり)の機能強化

第2段階(1994年1月-1998年12月):マクロ経済政策の協調強化

  • 経済収斂基準の達成(ユーロに参加する条件として各国が物価安定性,健全な財政等,定められた基準を達成する)

  • 欧州通貨機構(EMI)の創設
    1998年5月に第3段階当初からの参加国を決定

第3段階(1999年1月から):経済通貨統合の完成

  • 単一通貨ユーロの導入

  • 欧州中央銀行(ECB)による統一金融政策の実施
    2002年1月よりユーロ貨幣の流通開始

2 ユーロの導入

  • (1)銀行間取引など非現金取引を対象に,単一通貨ユーロは1999年1月1日から導入された。同時に欧州中央銀行による統一的金融政策が開始され,ユーロ圏各国は独自に金融政策を行う権限を失った。この時からユーロに参加したのはドイツ,フランス,イタリア,スペイン,ポルトガル,アイルランド,オーストリア,フィンランド,ベルギー,オランダ,ルクセンブルグの11か国であり,経済収斂基準の達成が間に合わなかったギリシャは2001年1月から遅れてユーロに参加した。一方,これら以外のEU加盟国(英国,デンマーク,スウェーデン)は,国内世論の支持が得られなかったこと等によりユーロへの参加を見送った。

  • (2)2002年1月1日よりユーロ参加国内において,ユーロ貨幣の流通開始。

3 ユーロ非参加国のユーロ導入の展望

  • (1)EC条約においては,EU加盟国は,基本的にEMU(経済通貨同盟)に参加し,単一通貨ユーロを導入することが想定されている。但し,EC条約第122条に適用除外規定(オプト・アウト)が認められており,デンマークは適用除外が認められている。また,一定の経済収斂基準(注)を満たしていないブルガリア,クロアチア,チェコ,ハンガリー,ポーランド,ルーマニア及びスウェーデンの7か国は,「Member States with a derogation」(ユーロ非参加国)として,条約の規定の一部及び欧州中央銀行制度(ESCB)の権利義務の一部の適用を除外されている。

  • (2)これら諸国がユーロを導入するためには,物価安定性・健全な財政・為替安定・長期金利の安定性といった経済収斂基準を満たす必要がある。このうち為替安定に関しては,欧州通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM II)への参加が法的に要請されており,ユーロに対する自国通貨の標準変動幅を2年間,上下15%の範囲とする必要がある。(注)経済収斂基準

    • ア 物価安定性:過去1年間,消費者物価上昇率が,消費者物価上昇率の最も低い3か国の平均値を1.5%超上回らないこと。

    • イ 健全な財政:過剰財政赤字状態でないこと。(財政赤字GDP比3%以下,債務残高GDP比60%以下)

    • ウ 為替安定:少なくとも2年間,欧州通貨制度(European Stability Mechanism : ESM)の為替相場メカニズム(European Rate Mechanism:ERM II)に深刻な緊張状態を与えることなく参加し,ユーロに対して自国通貨の切り下げを行わないこと。

    • エ 長期金利の安定性:過去1年間,長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3か国の平均値を2%超上回らないこと。 このほか,市場統合性や国際収支の状況等も考慮される。

  • (3)ユーロ非参加国の7か国は,総じて可能な限り早期のユーロ導入を望んでいるが,財政赤字やインフレ率といった経済収斂基準を満たすには相当な期間を要すると見られる国もある。

  • (4)ユーロ非参加国のユーロ導入の見通し

2020年6月時点国名ユーロ導入目標年(政府方針)ルーマニア2024年チェコ未定ハンガリー未定ブルガリア未定ポーランド未定(但し,ユーロ導入は政府の最優先課題の1つとされている。)クロアチア未定スウェーデン未定


参考文献・参考資料

「BRICS通貨」の白日夢を冷笑する中国とロシアの現実 (msn.com)

ユーロ紙幣 - Wikipedia

EUにおける通貨統合|外務省 (mofa.go.jp)

世界の中銀、中国人民元の利用増やす-1~3月の外貨スワップ枠 (msn.com)

中国、中央アジア5か国と首脳会議…ウクライナ問題で「12項目の提案」支持取り付け狙う (msn.com)

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