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政治講座ⅴ1361「中国共産党の国防動員法、反スパイ法が中国経済を破綻に追い込む」

この問題の本質は「正確な情報発信の不足」どころか「事実の正誤」ですらなく、政治的利害関係に伴う情報工作や外交戦の一端であることは明らかだ。
中国はこれまでもレアアース輸出規制などで類似の対応を行い、日本以外にも台湾産パイナップルやフィリピン産バナナ、オーストラリア産の石炭など、政治的な対立に乗じて事実上の輸入制限を事あるごとに繰り返してきた前例が無数にある。今回の処理水問題もその一例を増やしたに過ぎない。
この様な中国の戦狼外交が、他国からドン引きされて、海外投資資金の逃避と進出海外企業の撤退を招き、中国経済が疲弊して、危機的状態に落としていることに気が付かないとは情けない・哀れな政権である。すべて、諸悪の根源は中国共産党のこのような好戦的な戦狼外交と国防動員法、反スパイ法である。それは、中国で活動する外国企業は、 知的財産の保護 やアメリカとの 地政学的緊張 など多くの課題に直面してきたが、今後彼らの中国での事業展開はより困難になるかもしれない。 2023年4月26日、中国政府 は 反スパイ法 の大幅な改正を可決した。 スパイ行為の定義を拡大し、国家安全保障に関連するあらゆる情報伝達を禁止するなどの変更が加えられたのだ。 拡大されたこの改正反スパイ法は2023年7月1日に施行される。
蛇足:権力と暴力の恐怖政治で富を集めて国家を大きくしようとした旧ソ連は崩壊した。ローマ帝国然り、秦の始皇帝も然り、有史以来、国家として永く存続するのは、日本である。神武天皇から2683年、キリスト生誕の660年前から存在するのである。

     皇紀2683年9月14日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司


中国、処理水問題で国際的孤立 IAEAを〝支離滅裂〟批判も「フェイクニュース受け入れる国なし」と欧州外交筋

オピニオン2 時間

東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をめぐり、中国が国際原子力機関(IAEA)を批判し始めた。IAEAの検査で放射性物質が日本の制限値未満だったと説明したことを「加盟国の十分な議論を経ずに行われており、独立性に欠ける」と主張したが、中国の処理水批判は「フェイクニュース」扱いされているのが実態で、国際社会で孤立を深めるばかりだ。
中国外務省の毛寧副報道局長は12日の記者会見でIAEAの検査を正当な結果と認めないとし、「隣国などの利害関係者が実質的に参加する長期的で有効な国際モニタリング(監視)の仕組みを、国際社会は求めている」と強調した。だが、モニタリング結果を分析・評価するIAEAの国際的枠組みへの参加を拒否したのは中国のほうだ
中国はIAEAの「独立性」を批判するが、IAEAの2023年度予算によると、各国の拠出額は首位の米国(25・1%)に続き、中国は2位(14・5%)で、3位の日本(7・7%)の2倍近い比率だ。IAEAは図らずも資金拠出国に左右されない独立性を発揮したといえる。
毛氏は別のモニタリングの枠組みが必要だと主張する一方で、「いかなるモニタリングを行っても核汚染水の海洋放出を許可することにはならない」と言い出すなど支離滅裂だ。
欧州外交筋は「中国のフェイクニュースを受け入れる国はない」と指摘するなど中国の非科学的な主張に距離を置いている。先日の東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議でも中国の処理水放出批判に追随する国はなく、20カ国・地域(G20)首脳会議では批判すらできなかった。
いまや味方してくれるのは、ロシアと北朝鮮、日本国内の一部左派勢力ぐらいだ。

処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない

林 智裕 によるストーリー •3 時間

処理水海洋放出に対する各国の反応

「日本政府は国際社会の強烈な疑問と反対を顧みず、一方的に核汚染水の海洋放出を強行した。中国はこれに断固とした反対と強烈な非難を表明する」──。
9月6日、インドネシアで行われたASEAN(東南アジア諸国連合)+3の関連首脳会議で、中国は東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水(以下処理水)海洋放出本格化に反対を表明して日本を強烈に非難した。
中国は現在、日本産水産物に対する全面禁輸措置に踏み切り、香港も追随した。岸田総理は中国の対応を「突出した行動」と強く批判し、李強首相は「人々の健康に影響する」と反論する異例の応酬となった。
ただし、中国の「強烈な非難表明」は各国から全く相手にされなかった。処理水は中国が主張する「核汚染水」では無いからだ。その安全性と海洋放出の妥当性はすでにIAEA(国際原子力機関)もG7(先進国首脳会議)も認め、支持を表明している。
マレーシアのメディアは「日本は処理水放出について透明性を保っている。中国の外交は表面上では紳士的でも、行動はそうではない」と伝え、タイのメディアも「ASEANは賛成しないと思う。攻撃的な外交ではなく、もっと適切な方法をとるべきだ」と報じたという。

参照)【処理水】各国の記者から中国に賛同できない声 マレーシア「日本は透明性保ってる」タイ「ASEANは賛成しないと思う」(2023年9月6日 TBS NEWS DIG)
さらにアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインなど欧州各国は、同じタイミングで、中国とは真逆に日本の食品に対する輸入規制を相次いで撤廃した。
イギリス政府は「日本政府を全面的に支持する」との声明を改めて発表し、
アメリカのカービー広報戦略調整官は「今回のことで懲罰的な経済措置を取るべき理由はいかなる国にもない」として中国の対応を批判した
ジャスティン・ヘイハースト駐日オーストラリア大使(@AusAmbJPN)は9月5日にX(旧ツイッター)で、「今日は大使館で福島の魚を使ってフィッシュ&チップスを食べてます。オーストラリア人は、フィッシュ&チップスが大好きです」「オーストラリア大使館ではこれからも福島県産の食材を使っていきます」「福島の魚は安全です」「うまい」と動画で発信して7万超もの「いいね!」を得ている。

処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない© 現代ビジネス


参照)駐日豪大使の動画に7万超の「いいね」。処理水放出巡り、福島産ヒラメを母国の人気料理で…(2023年09月07日 HUFFPOST)
日本の外務省は、各国から寄せられたIAEA評価や日本の対応を歓迎・信頼するこうした声の一部(アメリカ、イギリス、カナダ、EU、スペイン、フランス、ドイツ、ノルウェー、チェコ、アルゼンチン、パラグアイ、オーストラリア、インドネシア、パラオ、クック諸島など)を、Xの公式アカウントで具体的に紹介した

処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない© 現代ビジネス
これまで処理水に強い懸念を示してきた韓国でさえ、政府が「計画上の科学的・技術的な問題はない」「国内に流通する韓国と日本の水産物の安全は政府が保証する」との見解を表明した。
韓国最大野党「共に民主党」は依然として強硬な反対姿勢を示すが、与党「国民の力」の尹在玉(ユン・ジェオク)院内代表は「IAEAと争う常識外れの立場を取った国はこれまでシリア、イラン、北(朝鮮)しかない」と一蹴した。
参照)韓国与党「国の格を下げる不適切な行動」 野党のIAEA報告書反発に(2023.07.06 聯合ニュース)
事実、この期に及んで「核汚染水」などの非科学的主張を続けて処理水放出に反対するのは中国、ロシア、北朝鮮とその影響下にある特定勢力に限られる。
これらの国々は以前から、「北朝鮮、中国及びロシアは、様々な形で対日有害活動を行っており、警察では、平素からその動向を注視し、情報収集・分析等を行っている」警察白書)と名指しで指摘されている。

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それを裏付けるように、韓国公安当局からも中国政府や北朝鮮が韓国国内で福島の処理水に対するデマを広める情報工作を行ってきた事実が次々と明らかにされた。
中国、留学生・朝鮮族団体を使って対韓世論工作…THAAD・福島汚染水問題で活発に活動(2023年8月11日 朝鮮日報)
韓国情報機関トップ「北、韓国国内の反政府勢力に福島汚染処理水反対活動を指令」(2023年9月6日 朝鮮日報)
事あるごとに北朝鮮が指令を下して、韓国で忠実に実行されていただなんて【9月6日付社説】(朝鮮日報)
つまり、中国による輸入規制措置は「風評問題」ではない。この問題の本質は「正確な情報発信の不足」どころか「事実の正誤」ですらなく、政治的利害関係に伴う情報工作や外交戦の一端であることは明らかだ。
中国はこれまでもレアアース輸出規制などで類似の対応を行い、日本以外にも台湾産パイナップルやフィリピン産バナナ、オーストラリア産の石炭など、政治的な対立に乗じて事実上の輸入制限を事あるごとに繰り返してきた前例が無数にある。
今回の処理水問題もその一例を増やしたに過ぎない。NHKも処理水問題における日中の応酬を「外交戦」と明記して報じた。
参照)
外交戦と偽情報 処理水めぐる攻防を追う(2023年8月29日 NHK政治マガジン)


中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」、元公安捜査官が解説

稲村 悠:日本カウンターインテリジェンス協会代表理事

国際・中国元公安捜査官が教える「見抜く力」

2023.4.1 5:00

写真はイメージです Photo:PIXTA

スパイ容疑により
多くの日本人を摘発

 大手製薬メーカー、アステラス製薬の社員である50代日本人男性が「反スパイ法」に違反した疑いがあるとして、中国国家安全局によって、日本への帰国直前に拘束され、中国外務省がその事実を認めた。

 この男性は、中国に進出する日系企業の団体「中国日本商会」の幹部を務めたこともあるベテラン駐在員であるという。

 この件に関し、中国の外務省報道官は、「本人はどのような違法行為をしたのかよく知っているはず。日本国民の類似事件がしばしば発生しており、日本は自国民に対する教育や注意を強化すべきだ」とコメントしている。日本政府としては、林芳正外相が4月1~2日に急きょ訪中することを予定しており、日中での解決に向けた動きが速やかに進展することが望まれる。

 中国は2014年に「反スパイ法」を制定。これまでに17人の日本人がスパイ活動への関与を疑われ拘束された。そのうち1人が病死し、11人は刑期を終えるなどして帰国しているが、今回拘束された日本人男性を含め5人がいまだに拘束されている。

 いずれも、具体的な容疑は謎のままである。というのも、スパイ事案において、中国は「国家機密」を理由に容疑内容や裁判などの司法手続きを非公開にする場合が多い。

 今回もその容疑内容は不明であり、スパイ容疑という性質上、中国は非常に抽象的な発表に終始しており、中国政府による“恣意的”な法運用であったと推認される。

スパイ行為の摘発に関する
中国側の三つの思惑

 中国の思惑として、三つ考えられる。
 一つ目は中国による正当なスパイ行為の摘発だ。
 これは国家安全保障上も非常に重要な活動(=カウンターインテリジェンス)であり、国家として当然の思考・行動である(日本においても捜査機関が懸命に既存法を駆使して対応しているが、しっかり定義付けされた、拡大解釈のできないスパイ防止法の制定が望まれる)。
 二つ目は、見せしめである。
 ただし、この見せしめにも二つの側面がある。
 一つ目は外交カードとしての側面だ。
 本件拘束の報道があった前日に、日本政府が2月末に帰国した中国の孔鉉佑前駐日大使からの岸田文雄首相に対する離任あいさつの申請を断っていたことが判明している。これは、日本政府の対応としては異例であり、世論を考慮し、慎重な対中姿勢が示された結果である。
 これに対し、中国は、日本への報復措置として、日頃から本件アステラス製薬の社員の動向は把握しつつも、いつでも反スパイ法が適用できるように泳がせ続け、日本政府への見せしめとして検挙・拘束した可能性もある。
 実は、このような手法はウラジオストクの日本総領事館領事が安倍元首相の国葬の前日にロシア連邦保安局(FSB)によって身柄を拘束された件と類似している。その拘束のタイミングと拘束された際の行為自体を見ても、ウクライナ侵攻を巡る日本への報復措置・見せしめと同様の趣旨が垣間見える。
 ただし、これまで中国によってスパイ容疑で日本人が摘発されたタイミングを見ると、必ずしもそのタイミングが報復や外交的見せしめとなっておらず、線としては薄いだろう。
 また、広島県におけるG7が控えている中でのけん制としている可能性はある。
 いずれにせよ、外交カードの一つとして、反スパイ法が有効に活用される手段であることは認識しておかなければならない。

もう一つの側面は、中国による姿勢の誇示である。
 中国は、元来メンツを気にする国であり、さらに政権として国内秩序の安定を強く望み、秩序の不安定化につながる要因を非常に嫌う。それが、国内要因だろうが国外要因だろうが関係ない。
 そのような中で、通常の国家であればスパイ容疑に当たらないような行為も、中国から見て秩序を乱す要因であると判断されてしまえば摘発され、その強硬な姿勢を内外に示すことで、中国におけるスパイ活動のリスクを知らしめるのだ(裏を返せば、国内秩序の不安定化を極度に恐れる中国の思考の表れでもある)。
 中国の強い姿勢を示し、日本政府を含む日本のインテリジェンスコミュニティーへ圧力をかけた可能性が高い。
 そして中国の思惑の三つ目が、中国が欲しい情報を収集するために反スパイ法で摘発した可能性である。
 現在、中国が自国で強化したい分野として医療領域がよく挙げられている。それは、中国政府が発表している外商投資奨励産業目録(外国投資家による投資の奨励および誘致に関連する特定の分野、地区などが明記されたリスト)や在中国欧州商工会議所が公表した報告書からも読み取れるが、そのような環境の中でアステラス製薬の男性社員が狙われた可能性もある。
 そして、帰国直前というタイミングを図った理由もそこにある。
 筆者のスパイ捜査の経験から話をすれば、まず証拠を固めて構成要件を満たした段階で共犯者の有無等の捜査とともに検挙に着手する。だが、例えばスパイが本国に帰国してしまえば、スパイの所属国家・組織に自国の情報が持ち出されてしまうため、帰国を検知した段階で検挙することも考えうる。
 しかし、中国による日本企業の情報収集が目的だった場合を想定すると、例えば中国に定期的に訪問する立場の日本人が帰国する際には、ビジネスでの機密情報などが入ったパソコンや資料を日本に持ち帰り、日本の本社に共有しようと思うだろう。そのため、帰国時には重要な情報を欠かさず持った状態となる(もちろん、データで本社へ送付している可能性もあるが、中国データ3法の恣意的運用を恐れて送付していない可能性もあるし、拘束後に使用端末を解析すれば、中国による情報収集は可能だろう。
 中国当局として、日本人が働く企業(今回はアステラス製薬)の情報が欲しかった場合、あえて帰国時に拘束することで、重要な情報を持った状態で日本人の身体を拘束し、所有物を差し押さえできるため、非常に“良い情報”が“効率的”に収集できる。
 一方、帰国直前ではなく中国国内の自宅や企業にいた場合では、ガサなどの強制捜査を行ったところで、口を割らなければ、機密情報のありかを探すのに苦労してしまうのだ。
 ただし、この医療分野に関する情報収集の筋は、中国の外資企業に対する厚待遇政策(後に技術やノウハウを吸収し、中国市場から締め出す)や複合機問題中国現地での設計・生産を外資企業に要求)を始めとした、これまでの中国による半強制的な技術移転の手法などを見ても、やや疑問が残るだろう。
 むしろ、日本人男性が所属した経済団体や在中日本人コミュニティーの情報が欲しかった線が想定される。
 以上、中国の思惑について論じたが、今回の反スパイ法による摘発は、これらのどれか一つというより、複合的に判断されていると考えられる。

反スパイ法改正により
スパイ行為の対象拡大の可能性

 そもそも、この反スパイ法は14年11月1日の第12回全国人民代表大会常務委員会第11回会議で可決され、施行された。

 同法のスパイ行為の定義は、すべての機構、組織、個人によるスパイ行為はもとより、その任務受託、ほう助、情報収集、金銭授受などは、すべてスパイ罪とみなされ、その定義は非常に広範で曖昧だ。

 さらに懸念すべきは同法改正の動きだ。

 2022年末には改正案が公表され、40条の現行法から71条編成へと大幅に内容が加えられた。

 この改正案は、現行法にある“国家機密の提供“に加え、「そのほかの国家安全と利益に関係する文書、データ、資料、物品」を対象に含むと定義し、さらに「重要な情報インフラの脆弱(ぜいじゃく)性に関する情報」もスパイ行為の対象であると規定している。

 また、改正案では、スパイ行為が疑われる人物・組織が所有・使用する電子機器やプログラム、設備などの調査権限も規定している。

 これらを見てもわかるように、スパイ行為の定義自体が非常に幅広く、例えば中国国営に近しい中国企業との取引で発生したデータさえ抵触する恐れがあるし、疑いがあれば企業施設内に当局が入り込み、調査と称してあらゆる機器を差し押さえ、当該機器内の機密情報は筒抜けとなるだろう。

 これまで、日本企業として相手先企業のデューデリジェンスは当然のごとく行われてきているが、中国の恣意的な法運用や昨今の国際情勢を鑑みて、よりハイレベルで中国の恣意的法運用リスクを含む地政学的要素を盛り込んだ対応が実施されなければならず、今回のように日本大手企業の中国法人幹部が不透明な容疑により反スパイ法で摘発されたとなれば、よりその必要性を感じさせることとなる。

会食中の政治的な会話が
国家機密の収集とされる例も

 中国におけるリスクの最大の要因は、法の曖昧さと恣意的運用である。
 中国では、施設の写真を撮れば、軍事関連や国家として重要な施設の写真を撮っただろうと言いがかりをつけられ、検挙されることがある。
 また、会食の場で政治的な話をすれば、中国の国家機密を探っているとして検挙されてしまう。
 北京外国語大学で教員を務め、「日中青年交流協会」を設立するなど、日本と中国の友好事案を進めていたほか、衆議院の客員調査員を務めていた鈴木英司氏は、16年7月に国家安全局に突如スパイ容疑で拘束され、懲役6年の実刑判決を受け、22年10月に刑期を終え釈放された。
 この鈴木氏に関するスパイ容疑は、同氏が13年12月4日に中国高官との会食中、その前日に北朝鮮の金正恩の伯父(張成沢氏)が失脚したことをうけ、どうなのかという会話をしたことだという。会話内容は、既に公開されている情報であったにもかかわらず、これが国家機密の収集に当たるとされ検挙されたとのことである。
 今回のアステラス製薬の男性も、「中国日本商会」の幹部を務めたこともあることから、中国での人脈は相当広いだろう。その中で、会食中に政治的な話をしてしまったのかもしれない。
 仮にそうであったとしても、反スパイ法によってスパイ容疑でその身体を拘束されるような理由にはならず、反スパイ法の定義の曖昧さと恣意的運用が中国におけるリスクを顕著に示している。

反スパイ法だけではない
中国の法運用リスク

 中国という国を考えれば、幾多ものリスクが存在する。
 例えば、国家安全法や国家情報法、国防動員法だ。
 特に、国防動員法は中国政府が有事と判断すれば、中国に進出している日本企業も含めて、中国のあらゆる組織の人的資本や金、アセットの徴用が合法化され、戦時統制下におかれることが可能となってしまう。この有事の定義はやはり曖昧であり、台湾有事に限らず、南シナ海で偶発的な衝突が起きた際に、中国が“有事”と判断すれば、国防動員法が適用される。
 また、先述の複合機問題や合弁会社による技術流出リスクなどの中国による半強制的な技術移転、さらに視座を高くすれば、反外国制裁法などがあり、いずれも中国政府による恣意的な運用が懸念されるものばかりである
 先述したように、中国で活動をするならば、 “中国の実態”を深く理解した上で、中国のリスクを深く・正しく捉えた対応が強く求められる。少なくとも、これらリスクを許容した上で中国と付き合うべきである。
 最後に、拘束された男性の適切な処遇と身の安全を心から祈る。
(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、元警視庁公安部外事課警部補 稲村 悠)

参考文献・参考資料

中国、処理水問題で国際的孤立 IAEAを〝支離滅裂〟批判も「フェイクニュース受け入れる国なし」と欧州外交筋 (msn.com)

処理水放出を巡る世界の反応…中国の「核汚染水呼ばわり」「水産物禁輸」は結局、政治的な“情報工作”“外交戦”でしかない (msn.com)

国防動員法 - Wikipedia

中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」、元公安捜査官が解説 | 元公安捜査官が教える「見抜く力」 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

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