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政治講座ⅴ613「経済破綻の危機の中国」

中国に幻想を抱く人がいるなら、その幻想は捨てた方がよい。経済破綻を修復するために計画経済に祖先返りをしている。世界の工場と言われたのは昔のことである。この世は盛者必衰である。

         皇紀2682年11月22日
         さいたま市桜区
         政治研究者 田村 司

中国「人民元」が“重大危機”へ…! 死守防衛ライン「7元突破」で、これから中国、ロシア、米国、日本で「本当に起きること」…!

2022.10.13

「7元ライン」突破の“重大意味”

BBCの解説によれば、2019年8月5日、米中貿易戦争の影響で、7元ラインが突破された。

これは2008年ぶりの元安を更新。この時の人民銀行当局は、「7元というのは、過ぎたら、もう二度ともどってこない年齢のようなものではない。それをこえたとて、大洪水になるわけでもない。7という数字はダムの水位のようなもので、高いときもあれば、低いときもあり、また高くもなることは正常だ」と、保七死守説を懸命に否定していた。

この後、人民元は上昇し、一時期6.3元にまでなった。だが、今年、9月15日にまた、7元を突破して下落して、2週間もたたないうちに7.2元まで暴落すると、さすがに中国当局もあわてたのだった。

引き受け能力を超えた「ドル建て債券」

元安は本来、中国にとってそう悪いことばかりではなかった。
中国が世界の工場という製造大国ならば、むしろ元安は輸出に有利。人民元安は中国製品が安く製造できるということで、メード・イン・チャイナに競争力を与える。
ただ、今の中国にとっては、元安は要注意なのだ。今の元安のもとをたどれば、2008年の金融危機後のドル安の中で、中国を含めた多くの新興国が自身の引き受け能力を超えたドル建て債券を増やしていた。
米ドル金利が上がれば、ドル建て債券の利息も増えるので償還がよりできにくくなり、デフォルトを引き起こしやすくなる。中国はすでに、不動産政策で昨年大きなミスをしており、不動産バブルが崩壊しかけている。
これが銀行システムに波及するかどうかという瀬戸際にある。ここに急激な元安の波がくれば、中国の外資流出を加速させ、資産バブルに非常に大きな圧力を与える。
人民元建て資産切り下げ圧が増し、中国の輸入に不利になり、輸入インフレが加速する。

中国当局の「意見」

ただ中国当局は、こうした懸念を跳ね返すべくポジティブな見立ても発信している。
たとえばSDRバスケットの米ドル以外の通貨と比べると、人民元は決して安くなく、むしろ強い通貨になっている。国慶節連休中の人民元の対ドルオフショアレートは元高に揺り戻しがあり、人民元レートは安定し、グローバルな地位はむしろ上昇しているのだ、と。
2022年は人民元がSDR入りしてから6年だが、国際通貨基金(IMF)の最新のデータによれば、第二四半期末で人民元の世界における外貨準備高の比率は世界五位の2.88%。米ドル比率が59.53%、ユーロが19.77%、日本円が5.18%、英ポンドが4.88%だ。
また、SWIFTが最近発表したデータによれば、2022年8月、世界の決裁通貨統計の中で、人民元は2.31%を占め、世界五位の多さだった。
2022年7月と比較すると、人民元決済は9.25%増加している。同時にすべての通貨の決済金額は4.01%増加していた。

中国、ロシア、モンゴル

ドルとユーロが圧倒的である状況に変化はないが、人民元だけをみると、2021年、銀行代行による人民元のクロスボーダー(越境)決裁の支払い額は合計36.6兆元で、前年同期比29.0%。つまり一年で3割ましという早いスピードで増えている。特にコモディティ、クロスボーダーEコマースなどの分野が新たな成長点と言う。
9月15日、ウズベキスタンのサマルカンドで上海協力機構(SCO)サミットが行われた場で、中国、ロシア、モンゴルの三国首相が会談し、習近平はこのときロシアとモンゴルに人民元越境決済システムに加盟するよう求めた。
この三国会談で、中ロ蒙経済回廊建設を打ち出し、貿易、人文、観光などの領域での、ハイクオリティーな交流プラットフォームを創り、また三国間での貿易は現地通貨決済規模を拡大し人民元越境決済システムにロシア、モンゴルのより多くの銀行・金融機構が加盟することで「堅牢な地域金融安全バリア」を構築しよう、と持ち掛けた。
また中ロ天然ガスパイプラインをモンゴルを通る形で敷設するといる交渉も積極的に推進していくという。人民元越境決済システム協力については、9月カザフスタン、ラオスも備忘録に署名している。

人民元の「信用問題」

人民元決裁が現時点ではSWIFTに頼る部分が大きく、今すぐ、人民元決済がドル決済にとってかわられる、という話ではないにしろ、中国は反米感情の強い新興国市場へのアプローチを長年やってきている。
また、9月20日、中国人民銀行は香港で50億元の6か月期の人民元中央銀行手形を発行したが、この手形発行への、海外投資家の入札総量が4.5倍の228億元分となった。人民元建て資産はけっこうな人気である、ということが裏付けられた、と中国側は報じている。
ドルが利上げによって急激に高騰し、ドル建て債コストリスクが増大する一方で、ロシアなど一部の国で資源価格下落リスクが明らかになっている状況で、SCO加盟国、オブザーバー国の反米的資源生産国、コモディティ生産国が脱ドル化を模索し始め、少なからぬ国が人民元を選択していくのではないか。
クレディスイスのストラテジストのゾルタン・ポズサーがかつて指摘していたブレトンウッズ3(新しい金融秩序)論をなぞる形で中国当局が動いているのは事実だろう。
人民元に一定以上の信用があれば、元安はさほど問題にはならず、かつての安いドルの時代のように、途上国にとって使いやすい通貨となって流動性を増す可能性もある。問題は、人民元の信用を何が担保するのか、だ。

「反米資源国」の動き

これまで、人民元が曲がりなりにも信用を増してきたのは、中国がもつ膨大な米国債を含むドル建ての外貨準備だった。

だが、米中が金融デカップリングの方向に動くなら、人民元の信用は何が担保となるのか。

SCO加盟国のような反米国家の間では、ロシアによるウクライナ侵略戦争を挑発したのは米国という見方があり、米国によるロシアに対する経済制裁のやり方を見て、ドル機軸体制に不安を感じはじめている。ただ、だから人民元を機軸通貨に、という動きにつながるには、人民元の信用は今のところあまりに低い。 

1971年、金本位制を廃止したドルが世界の基軸通貨の地位を確立できたのは石油貿易をドルで支配したからだ。

その理屈から言えば、人民元はその信用を獲得するには、資源、エネルギーを支配することが重要となる。とすると反米資源国が中国の周りにあつまりつつある状況は注意する必要があるかもしれない。


SCOサミットで「打ち出した中身」

SCOサマルカンドサミットにおいては、この一帯一路の中核に中央アジア五ヵ国を置くことを打ち出し、以下を打ち出した。
(1)人類運命共同体という習近平のスローガンをサマルカンド宣言に入れ込み、国連の持続可能な発展目標とリンクさせ、中央アジア五カ国首脳から支持をえた。
(2)一帯一路の枠組みの中で中国と中央アジアは交通インフラ協力を積極的にし、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道建設協力の備忘録に調印。
(3)さらに一帯一路の枠組みで健康シルクロード、デジタルシルクロード、脱貧困ロードなどを建設していき、グローバル統治の新たな模範とすること。

どうしようもないほど貧しく、遅れた経済圏

特に、注目すべきは、「集団化、イデオロギー化、対抗的思想で国際・地域問題を解決しようとすることに反対する」「メンバー国は、個別国家あるいは国家集団の一方的な制限を受けないグローバルミサイル防衛システムが国家安全と安定に危害を加えるであろうと繰り返して言う」という点だ。
暗に米国に対する非難を宣言に盛り込んでおり、このSCOメンバーによって一帯一路とグローバル発展イニシアチブの枠組みで創り上げる経済圏から米国およびその同盟国を排除する方針を見せていることだろう。
折しも、米国のハドソン研究所で9月9日に行われたオンラインシンポジウムのテーマは米中経済デカップリングだった。
このシンポジウムでは、米国は部分的に産業サプライチェーンから中国を外そうとしているが、中国もユーラシアで中国を中心とした新たな経済枠組みを構築して、ユーラシア地域と西側地域を経済的に分離しようとしていることなどが指摘された。
いわゆる新たな東西ブロック経済圏の登場を示唆しているのだが、問題は、中国が主導するユーラシア経済圏が必ずしも、どうしようもないほど貧しく、遅れた経済圏にならないのではないか、ということだ。

集中する「エネルギー・食糧資源大国」

仮にSCOという組織が核となるならば、ロシア、中央アジア五ヵ国、インド、イラン、さらにトルコも加盟し、人口40%以上を占める集団になる。

しかも、エネルギー・食糧資源大国が集中している。

一帯一路のとん挫の原因の一つはAIIB(アジアインフラ投資銀行)の機能不全、つまり資金が集まらなかったことだが、これら資源国同士の国境貿易では、もともとエネルギー、食糧、金、レアアースといった資源同士の取引のようなコモディティ経済圏のようなものが存在する。

米中経済デカップリングといえば、米国主導のドル機軸経済圏から中国を排除する考えで、トランプ政権以降、米国主導の国際ルールを守らない中国に対する制裁的意味で行われているととらえられてきた。

が、ハドソン研究所のシニア研究員のジョン・リー氏によれば、中国側も米国や英国、つまりドル機軸経済と距離を置こうという計画は、すでに数十年前から練られていたという。

ただ、中国は過去数十年の間、国際貿易がもたらす利益を手放したくなくて、それができなかった。

「西側諸国」を排除せよ

鄧小平が改革開放を言い出したとき、中国としては国際経済、特に米国からは利益を得たかっただけであり、心からグローバル経済の一員となって米国の戦略的パートナーになりたいと思ったことはなかった、とリーは指摘する。

中国が国際貿易に参与してきた目的は、最初から、韜光養晦、つまり中国の国家実力をひそかに蓄積し、西側国家と対抗するためであったという。

だが、鄧小平路線を打ち切ろうとする習近平は、ユーラシア経済を整理、統合し、中国を中心とした経済体をつくり、その中で米国、ドル機軸に頼らないサプライチェーンを完結させよう、と考えている。

リー氏によれば、中国の一帯一路はこの構想の一部であり、一帯一路の短期目標としては中国企業に投資機会を与えることだが、長期的な戦略目標はこれら地域にインフラ建設を行い、中国と連結し、なおかつ中国に有利な方法で運営することだという。

そしてユーラシアの中国式ビジネスモデルに、あとから西側国家が入り込めないように囲いこむ。
ロシア「敗北」の影響

ハドソン研究所シニア研究員のトーマス・デュスターバーグ氏が、中国の現在の経済政策目標はすでに、トウ小平や江沢民時代と異なる、と指摘する。

そのうえで、「すでに経済成長は北京の最重要政策目標ではなく、西側のユーラシア地域に対する経済的影響力が低下させることの方がさらに重要」と指摘するのだ。

リー氏は「中国の最終的目標はグローバルなサプライチェーンを支配すること」という。

そのために、産業の根本であるエネルギーや資源鉱物の豊かな中央アジアやロシアなどを反米でまとめ上げるSCOを中心に一帯一路を立て直そう、というのが戦略であろう。

かつてロシアが強い影響力をもっていたころは、ロシアが中国による中央アジア支配や一帯一路の拡大に対してある程度のストッパーになっていた。

が、ロシアはウクライナ戦争の事実上の敗北で、今は中国に意見するような力はない。SCOの盟主は中国ということになる。

これに米国やその同盟国はどのように対応していくか。

やはり「インド」が肝になる

すでに東西ブロック経済という方向性を変えることが難しいのであれば、出来るだけ資源の豊かな国家を自由陣営の仲間にいれていく努力を怠らないということだろう。

同時に、インド太平洋国家での結束強化を図ることだろう。

とくにSCOにはインドが入っており、インドは日米豪印が作るQUADのメンバーだ。

SCO内でロシアに代わってインドの影響力が強くなれば、SCOメンバー国が中国の言いなりになることは防げるかもしれない。

さらには、台湾、日本、韓国、シンガーポールなど対中経済依存度が比較的高い自由主義先進国のハイテク領域が早々に中国と決別する覚悟をもつことではないだろうか。

中国経済は、もうダメかもしれない…

根本的な原因は言わずもがな、中国共産党が土地資源経済に依存しすぎたことだろう。

他国も同様の問題があるが資本主義市場と違い、共産主義はその思想が元々世界を改造するという発想があり、政策が極端で、しかも往々にして権力闘争がからむ。

トップダウンの一方通行で現場からのフィードバックが難しく、市場メカニズムに淘汰されるべきが淘汰されない。

これは不動産だけでなく、問題ワクチンや汚染粉ミルク問題、半導体産業やエコエネルギー政策、あるいは防疫政策など中国が直面するありとあらゆる問題につながる。

とすると現行体制が続くかぎりは、短期的に中国不動産市場が安定を取り戻すという期待は持たないほうがよさそうだ。

むしろバブルを大崩壊させ体制すら一新するぐらいの大変革を経験しない限り、中国経済の造血機能は取り戻せないのではないだろうか。


参考文献・参考資料


中国「人民元」が“重大危機”へ…! 死守防衛ライン「7元突破」で、これから中国、ロシア、米国、日本で「本当に起きること」…!(福島 香織) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)

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