政治講座ⅴ1203「漁夫の利か、火中の栗を拾うか」
災い転じて福となす。日本は米ソ冷戦時代は漁夫の利を得た。今回の米中新冷戦は日本への産業の国内回帰を促進させている。台湾への中国侵攻は常識ではあり得ないが、窮鼠猫を噛むこともあるので中国解放軍の暴走もあり得る。2024年に米国大統領選が行われ、トランプ大統領が再度誕生したならば、米国は日本への核武装の要求をしてくる可能性は大きい。自国の防衛を米国に頼らずに自国の防衛は自国で賄うように要求してくるのである。米国は以前の超大国としての力は無いのである。今回は台頭する覇権国家に変貌してしまった中国とウクライナに武力侵攻するロシアの政治を俯瞰した報道記事を紹介する。
皇紀2683年7月18日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「ロシアリスク」と「中国リスク」がヤバすぎる…直近の事例が証明すること 信頼できない…
中島 精也 によるストーリー • 7 時間前
バブル崩壊以降、最高値をつけた株価、相次ぐ世界の半導体大手の国内進出。コロナ明けで戻ってきた外国人観光客。なんだか明るい兆しが見えている日本経済。
じつはその背景には、日本を過去30年間苦しめてきたポスト冷戦時代から米中新冷戦時代への大転換がある。
いま日本を取り巻く状況は劇的に好転している。この千載一遇のチャンスを生かせるのか。
ウクライナ戦争と資源問題
ウクライナ戦争でロシアがドイツ経由の欧州向け天然ガス海底パイプライン「ノルドストリーム」を停止したのはEU各国に大きなショックを与えたのに止まらず、西側諸国に経済安全保障の重要性を強く認識させることとなった。
当初、EUはロシア制裁の一環として、ロシア産原油の輸入を2022年末までに停止するとした。
内陸国のハンガリーとスロバキアについてはパイプラインによる原油輸入は一時的に対象外とする例外措置を設けたが、EU全体でロシア産原油輸入量の92%もの大幅削減である。
天然ガスについては27年までに輸入を停止するが、当時のEUは消費量の40%をロシア産天然ガスに依存し、ドイツに至っては55%も依存するという歪な構造であったので、一気に禁輸するわけにもいかない。そのため、EUはガス輸入調達先の多角化を進めて、22年中にはロシア依存を3分の2までに減らす意向であった。
しかし、そんな虫のいい話がプーチンに通るとでも思ったのだろうか。案の定、プーチンは段階的にノルドストリームを通じた供給を絞り始めた。
相次ぐ撤退
2022年6月にはカナダ工場で修理中だった独シーメンス製ガスタービンがロシア制裁のため戻ってこないとの理由から供給量を4割に削減すると通告してきた。
7月にはタービンが1基しか稼働できないとして供給量をさらに2割にまで削減し、さらに設備点検を理由に供給停止を通知、9月には欧米のロシア制裁が解除されるまで無期限に供給を停止すると通告してきた。真綿で首を締めるような陰湿なプーチンの性格にピッタリの措置であった。
欧米の制裁はロシアに進出している西側の企業にも大きな打撃を与えた。半導体、コンピュータ、通信機器、センサーなどが輸出禁止とされたことで、現地工場で必要な部品、資材の調達が不可能となった。
これではいつ生産が正常化するか目処が立たないため、自動車メーカーではトヨタが2022年9月にロシアからの撤退を発表、10月には日産、11月にはマツダが続いた。欧米自動車メーカーではルノー、メルセデス・ベンツ、フォードなどが撤退を決めた。
エネルギー関連では欧州の英石油大手シェルはウクライナ侵攻直後の2月にロシアからの撤退を発表して、ロシア国営ガスプロムとの提携を解消し、日本企業も参画する極東サハリン沖の液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」からも手を引いた。
同じく英石油大手BPもロシア国営ロスネフチとの提携を解消して撤退した。またノルウェーのエネルギー大手エクイノール、仏のトタルエナジーズはロシア石油ガス大手ノバテクとの合弁を解消して、シベリアのガス田権益を売却してしまった。
米石油大手エクソンモービルはシェルの「サハリン2」に続いて、「サハリン1」の事業から撤退、米石油サービス大手ハリバートンはロシアでの油田サービス事業から撤退したが、日本企業はロシア新会社へ事業移管された「サハリン1」と「サハリン2」に引き続き留まる決定を行い、欧米とは立場の違いが際立っている。
ウクライナ侵攻直後にマクドナルドが店舗を売却して撤退したニュースがセンセーショナルに報道されたが、日用品セクターの関連企業ではロシア撤退は限定的のようだ。
まず、日用品の多くは制裁対象になっている訳ではない。ただし、ロシア向けの金融制裁で自国からロシアに持ち込んだ商品は決済ができないので、ロシア国内から原材料を調達しながらやりくりしているようだ。
ただ、たとえ日用品であってもロシア軍に使用されているとなると、企業イメージを損ない、自国でのバッシングが待っている。ロシアで事業を続けるのは大きなリスクをはらんでいるのだ。
中国の脅威と経済安全保障
豪中関係悪化の際に、中国が豪州産石炭の禁輸に踏み切った話はすでに触れたが、最近、他国の経済安全保障を平気で損なう中国の事例が頻発している。
過去の紛争時に中国がとった報復措置をおさらいしてみよう。我々、日本人の記憶に焼き付けられているのは、2010年9月の尖閣諸島沖での衝突事件で中国人船長が日本側に勾留されたのに対して、ハイテク製品の生産に不可欠なレアアースの日本向け輸出を禁止したことである。日本が得意とするハイテク分野を狙い撃ちにして、日本経済を苦境に追い込もうとする意図が明々白々であった。
日本はレアアースの対日禁輸は世界貿易機関(WTO)の協定違反だと抗議したが、中国側は環境保護のためと反論して撤回しようとしない。これに対する日本側の対応も早かった。11月にはレアアース供給確保のために双日と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が豪州レアアース資源開発会社のライナスと供給契約、2012年には日立がレアアースを使用しない画期的な産業用モーターを開発するに至った。
結局、中国産レアアースへの需要が減ったことから価格が急落してしまい、中国レアアース業界は赤字に転落し、WTOでも全面敗訴した中国は2015年に渋々レアアース輸出禁止を全面撤廃した。ロシアの欧州向けガス供給停止に対して、欧州サイドが調達先の多様化で凌いだ結果、ロシアが欧州という巨大市場を失って苦しんでいる構図と瓜二つだ。
2012年には南シナ海のスカボロー礁の領有を巡る紛争でフィリピン産バナナの検疫を強化、
また13年には中国がノルウェー産のサーモンの輸入規制に踏み切ったが、これは10年に中国の民主活動家の劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞した報復らしい。
ノーベル賞といえばスウェーデンではないかと思いがちだが、こと平和賞についてはノルウェー・ノーベル委員会が選考を行うことになっている。ただ、ノルウェー政府はこの選考に関与していないので中国の八つ当たりとしか見えない。
2016年には地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)が在韓米軍に配備されることが決まったが、その後中国は韓国製品の不買運動と韓国への団体旅行禁止措置を行った。
それまで「日本人観光客さようなら、中国人観光客いらっしゃい」と急速に中国傾斜を強めていただけに韓国側のショックも大きかった。
2020年にはビストルチル上院議長らチェコ国会議員の代表団に対し、事前に「台湾を訪問すれば重い代価を支払わせる」と王毅外相が脅したが、チェコ代表団は屈せず台湾を訪問した。
中国は警告通り、チェコ老舗メーカー「ペトロフ」製ピアノの注文を取り消した。チェコが台湾訪問を強行した背景だが、2016年にチェコを訪問した習近平総書記が「一帯一路」構想に基づき巨額の対チェコ直接投資を行うと約束したにもかかわらず、実際には履行されなかったことで、対中不信感がつのっていたようだ。
いずれにせよ、これらの事例から中国は信頼できる国ではなく、一緒にサプライチェーンを構築すれば経済安全保障上のリスクが極めて大きくなるということを多くの国が認識したのは確かなようだ。
中国が西側諸国から「締め出し」を食らうことで待ち受ける末路…予想される中国の「異常事態」
2023.07.17 中島 精也
バブル崩壊以降、最高値をつけた株価、相次ぐ世界の半導体大手の国内進出。コロナ明けで戻ってきた外国人観光客。なんだか明るい兆しが見えている日本経済。
じつはその背景には、日本を過去30年間苦しめてきたポスト冷戦時代から米中新冷戦時代への大転換がある。
いま日本を取り巻く状況は劇的に好転している。この千載一遇のチャンスを生かせるのか。
フレンド・ショアリングの構築
米バイデン政権は2021年に半導体供給強化を目的とした米国とEUの「貿易・技術評議会」を設立し、22年の会合では半導体やレアアースなどの重要物資に関する米EU間のサプライチェーン強化で合意した。一方、21年の東アジアサミットでバイデン大統領は「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」構想を発表しており、米国が主導して欧州、アジアとのフレンド・ショアリング(同盟国や友好国間に限定した新しいサプライチェーン)の構築に動き出している。
すでに見てきたように中国やロシアなど専制国家は外交関係が悪化すれば、グローバル・サプライチェーンの寸断を戦略的に実行する。よって、経済安全保障の観点から専制国家にサプライチェーンの拠点を置くことはリスクが大き過ぎる。
そこで、エネルギー、原材料、部品、製品、物流など既存のグローバル・サプライチェーンを根本的に見直す動きが始まっている。民主国家が採用すべき方法は生産拠点のリショアリング(国内回帰)、ニアショアリング(近隣友好国への工場移転)、フレンド・ショアリングである。
リショアリングとして米国では半導体製造のための施設投資額の25%の税額控除が受けられるCHIPS法の成立もあって、米メーカーのマイクロンが国内工場新設を発表するなど、電気自動車用バッテリー、ソーラーパネル、半導体、バイオテクノロジーの業界が相次いで国内に生産工場を建設すると発表している。
日本では半導体大手ルネサスエレクトロニクスが2014年に閉鎖した甲府工場を24年から再開する。京セラは半導体部品増産に伴う生産スペース確保のために鹿児島川内工場の増設、日本電産(現ニデック)は川崎に半導体ソリューションセンターを設ける。ダイキンは中国で生産する家庭用エアコンの国内回帰を検討している。
しかし、国内回帰だけでは低コスト生産には限界があるので、民主国家連合間でのニアショアリングやフレンド・ショアリングが今後ますます重要になってくる。その政治的枠組みの一つが先に述べた米国主導の経済圏構想IPEFである。
IPEF閣僚会議ではショックに強い弾力性のあるサプライチェーンの構築のために、重要セクターや製品の基準明確化、重要セクター・製品への投資で弾力性を高める、情報共有と危機対応メカニズムの設定、サプライチェーンの物流面の強化などで合意しており、経済安全保障の観点から中国やロシアに依存しないサプライチェーンの構築を目指している。
新冷戦時代はインフレは必至
さて、新冷戦時代はブロック経済による生産要素価格の上昇と経済安全保障を意識したグローバル・サプライチェーンの再構築により、コスト高は必至である。
よって、世界のインフレ率はポスト冷戦時代よりも高くならざるを得ない。ポスト冷戦時代の金融政策はデフレ突入の阻止に大きなエネルギーを費やしたが、新冷戦時代にはインフレが悪性インフレにならないように管理することが大事になってくる。
現在、米連邦準備制度理事会(FRB)は急激かつ大幅な利上げを実施しているが、現状5%のインフレ率をできる限り早めに2%目標に近づけないと、アンカーされている期待インフレが漂流しかねないからだ。
FRBのFF金利は2022年3月より10回連続引き上げられて、23年5月時点で5.0~5.25%のレンジとなっている。米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻など不透明な要素もあるので、いったん利上げは打ち止めを示唆しているが、バランスシートの縮小は着実に進むだろう。同じくECBも主要レポ金利は3.75%だが、利上げは続くし、バランスシートの縮小も粛々と実行されるだろう。
それに比べると、日銀は異次元緩和の黒田東彦前総裁に代わって植田和男新総裁が誕生したが、欧米と異なり金融政策の正常化を急ぐと金利が高騰して保有国債の巨額の評価損が発生しかねない。下手をすると債務超過に陥るリスクもあり、出口戦略は慎重な上にも慎重であらねばならない。
株価の爆騰はしばらくない
為替については米ドルの復権がメインシナリオになると思われる。世界的にドルの流動性が低下してドル需給がタイトになること、新冷戦下におけるサプライチェーン再構築で米国が主導権を握ること、国際緊張激化で有事のドル買いが意識されること、米国の技術力の優位性などからである。
ユーロについては天然資源をロシアに、輸出先を中国の巨大市場に依存する欧州成長モデルが崩壊するので先行きは悲観的にならざるを得ない。
人民元は中国が西側の先端技術、重要部品のサプライチェーンから締め出されること、共同富裕という社会主義政策への回帰による国内投資の落ち込みもあり、成長にブレーキがかかるので下降に向かうと予想される。
日本円は海外工場の国内回帰、フレンド・ショアリングの一角を担うこと、潜在的な技術力の高さもあって、日本経済復活に向けた動きも見られ、必ずしも円の先行きを悲観することはないと思われる。
日サウジ「外相級の戦略対話」設立へ 中国念頭に連携強化
テレ朝news によるストーリー •
テレ朝news
日サウジ「外相級の戦略対話」設立へ 中国念頭に連携強化
サウジアラビアを訪問している岸田総理大臣はムハンマド皇太子と会談しました。脱炭素化に向けた技術協力を推進することで一致しました。
会談では、岸田総理が原油の安定供給に謝意を伝え、両首脳は脱炭素技術の協力などを通じて、中東を将来のクリーンエネルギーの供給拠点にしていくことで一致しました。
また、外交や安全保障分野での交流を一層活発にするため「外相級の戦略対話」を設立することで合意しました。
中東で存在感を増す中国を念頭に連携を強化したい考えです。
岸田首相、サウジ皇太子と会談 原油の安定供給や脱炭素協力で一致
朝日新聞社 によるストーリー • 5 時間前
岸田文雄首相は中東歴訪の1カ所目となるサウジアラビアで16日夜(日本時間17日未明)、同国のムハンマド皇太子と会談した。原油の安定供給や脱炭素の技術協力など経済関係の強化で一致した。ペルシャ湾岸6カ国による湾岸協力会議(GCC)とは、外相会合の定例化や、来年中の自由貿易協定(FTA)交渉の再開などで合意した。
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日テレNEWS
岸田首相 サウジで首脳会談 脱炭素技術で協力連携強化へ
岸田氏は16~19日の日程でサウジのほかアラブ首長国連邦(UAE)、カタールを訪れる。中東訪問は首相就任後初めてで、日本企業約30社が同行する。16日の出発前、記者団に「3カ国は日本のエネルギー安全保障上、大変重要なパートナーであり、政治・経済両面で国際場裏における存在感を高めている。各国との関係を強化する機会としたい」と語った。
岸田氏は同日、サウジ西部ジッダの宮殿で、首相を務め、国政を取り仕切るムハンマド氏と会談した。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにエネルギー価格が高騰するなか、日本の最大の原油供給国で、石油輸出国機構(OPEC)の盟主でもあるサウジに原油の安定供給を呼びかけた。
一方で、サウジが石油に依存した経済からの脱却をめざしていることを踏まえ、太陽光発電の整備のほか、水素やアンモニアといった次世代燃料での日本企業の高い技術を売り込み、ビジネスチャンスの拡大を図った。
参考文献・参考資料
「ロシアリスク」と「中国リスク」がヤバすぎる…直近の事例が証明すること 信頼できない… (msn.com)
中国が西側諸国から「締め出し」を食らうことで待ち受ける末路…予想される中国の「異常事態」(中島 精也) | +αオンライン | 講談社(1/3) (gendai.media)
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