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政治(金融)講座ⅴ345「支那の金融機関は破綻状態か?」

不動産バブル崩壊に伴い、金融機関の破綻も懸念される状態になって来た。日本の歩んだ道をなぞる様に進んできた。バブル崩壊の顛末は見えてきた。日本は失われた20年と言われたが中国は中国共産党自体が消滅の危機となる可能性がある。今回は報道記事から金融機関の顛末を占う。

        皇紀2682年8月31日
        さいたま市桜区
        政治研究者 田村 司

はじめに

築城3年、落城3日、滅びるのは早い。中国共産党内で経済不況の責任をめぐって権力闘争が繰り広げられるか、民衆の反発も大きく中国共産党の信頼も失墜して国家の崩壊は意外と早いかもしれない。ソ連の崩壊は70年でしたね。中国もいよいよでしょう。今回は不動産・金融機関の記事を掲載する。

中国河南省、30日から凍結預金また返還へ

2022/08/30 09:41

© Reuters/THOMAS WHITE 中国河南省、3
0日から凍結預金また返還へ


[北京 29日 ロイター] - 中国銀行保険監督管理委員会の河南省支部と同省金融当局は29日の共同声明で、地元銀行4行で預金口座が凍結された顧客への資金返還の一環として、30日から40万─50万元(5万7819─7万2273ドル)の個人預金者に払い戻しを始めると発表した。当局は4行の不祥事を詐欺事件としている。

安徽省蚌埠市当局も同様の声明を発表し、当地の1行に預金していた個人に30日から資金返還を始めるとした。

中国金融業界への統制強化で金融の闇にメス

#木内 登英   2021/10/22

金融機関と企業との近すぎる関係を探る

中国恒大集団の経営危機も引き金となり、中国政府は金融機関への統制強化に本格的に乗り出す。IT業界、教育産業、不動産業界などに対して行われてきた政府の統制強化は、中国経済の生命線ともいえる金融業界にまでいよいよ及んできたのである。

中国共産党機関紙・人民日報が14日に報じたところでは、10月に入って共産党の汚職摘発機関である中央規律検査委員会が、汚職特捜チームに当たる「巡視組」を大手国有銀行など金融分野の25機関に対して派遣した。彼らは次々と家宅捜索し、投融資および規制関連の記録を確認して、民間企業に関連する特定の取引や決定がどのように行われたかについて回答を求めたという。
国有銀行や投資ファンド、そして金融規制当局が、民間企業と近づき過ぎていないかどうかに焦点が当てられるようだ。特に、不動産大手の中国恒大集団、配車サービス企業の滴滴出行、フィンテック企業のアント・グループなど、政府が最近標的にしてきた大手企業に対して、金融機関が巨額融資に走った実態が探られる。中国人民銀行(中央銀行)や銀行・保険・証券の規制当局も、企業の監督を怠ったり、規制対象である業界関係者と親密になり過ぎたりした形跡がないかどうか、追及を受けることになるという。

調査の結果、不適切な取引を行った疑いのある個人は、党による正式調査を受け、後に起訴される可能性がある。また、不適切な取引にかかわったと判断された企業も処分されるという

調査の結果を踏まえ、国有の大手金融機関について幹部の報酬削減の是非も決定される見通しだ。金融セクターの報酬が他の産業に比べて高過ぎる、との問題意識が当局にある。

政府内の権力闘争も関係か

米ウォールストリートジャーナル紙は、今回の動きを、中国政府内での権力闘争の構図から読み解いている金融業界は、王岐山・国家副主席の権力基盤として知られている王氏は長年にわたって国有金融機関の要職に、自分に近い人物を据えてきた。

王氏は習政権の1期目に行った反腐敗運動で旗振り役を務めたが、その際には、自身が深く関わる金融業界は調査の対象から外したという。しかし、国有銀行が一部の高成長企業に積極的に融資したことも一因となり、その後、中国の金融リスクは増大してしまったのである。そこで、習近平国家主席は長年の課題である金融業界への介入、汚職摘発を始めたのである。一方、長年の側近が賄賂の受け取りで起訴されるなど、王氏の影響力には足元で陰りが見えてきた。そうした政府内での権力バランスの変化も、金融機関への統制強化が始められた背景にあるようだ。

理財商品などシャドーバンキングの実態も明らかになるか

今回の調査では、経営危機に陥っている中国恒大への国有銀行の融資も調査対象になる。国有銀行は、中国恒大に融資をするだけでなく、投資会社を設立して、その資金調達を助けた。この投資会社は、中国恒大からの融資返済を原資として高リターンを約束する理財商品を個人投資家向けに販売した。中国恒大が保証した理財商品のデフォルトは既に発生している

理財商品を中心に、銀行貸出以外の信用であるシャドーバンキングの拡大が、中国の金融リスクの中核にある。銀行融資、銀行借り入れに対する当局の規制を逃れるために、金融機関はシャドーバンキングを拡大させてきたのである。

投資会社が発行する理財商品は、他の理財商品を投資対象にするなどかなり複雑な構図だ。また、銀行も投資会社が発行する理財商品を購入する一方、投資会社に融資し、また、投資会社から預金を受け入れるなど複雑な関係にある。理財商品のデフォルトや投資会社の破綻は、中国の銀行システムを揺るがすリスクを秘めている。それは、中国の金融の大きな影、いわば闇の部分である。今回の調査を通じて、その実態がどの程度明らかになるかにも注目しておきたい。

(参考資料)"Xi Jinping Scrutinizes Chinese Financial Institutions’ Ties With Private Firms", Wall Street Journal, October 12, 2021
「中国国有銀 汚職調査 習政権 金融界引き締めへ」、2021年10月15日、東京読売新聞

中国住宅ローン返済拒否、許せば連鎖反応の恐れ-習氏の危険な懐柔策

Rebecca Choong Wilkins 2022年7月25日 18:50 JST

  • 共産党の習総書記、痛み和らげるため大きな譲歩も辞さないもよう

  • 住宅ローン返済の返済猶予なら間違ったメッセージを送る可能性

中国共産党の習近平総書記(国家主席)は住宅購入者のローン返済ボイコットという異例の抗議活動に対し従来型の方法で対応しようとしている。

  中国当局は先週末にかけ、人々の不満を抑えようと素早く対応。中国全土で増え続ける住宅ローンのボイコット件数を記録するインターネット上の文書を検閲する一方、地方政府と金融機関に対し未完成の住宅プロジェクトを完工させる手法を見いだすよう促した。大半の中国市民は生涯にわたり貯めた貯蓄をつぎ込み、住宅を購入している。

中国の不動産危機、ミドルクラスを直撃-積極的な住宅購入が裏目に

  香港中文大学(深圳)の唐文方教授は「この種の抗議行動への対応で中国政府は何年も経験を積んでいる。人々の不満がエスカレートするリスクを減らすのに使える戦術を備えている」と指摘した。

  中国共産党は社会不安に対応する上で特に、新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウン(都市封鎖)の時期に経験を積んだ。しかし、このところ全国的に広がる住宅ローン支払い拒否の規模や戦術は、抗議行動が一部の都市や地域に通常限定されてきた中国では極めて異例だ。

  格差是正を狙った「共同富裕」(共に豊かになる)運動を不動産セクター締め付けの中心に置いてきた習総書記だが、不動産危機に見舞われた市民の痛みを和らげるためなら、大きな譲歩も辞さない姿勢のように見受けられる。ブルームバーグ・ニュースは18日、開発が滞っている不動産物件の購入者を対象にペナルティーを科さずに一時的にローン支払いの猶予を認める可能性があると事情に詳しい関係者の話として報じた。

中国、停滞する開発案件の住宅ローン支払いに猶予期間検討-関係者

オンライン情報プラットフォームのREDDによると、中国国務院は先週末、開発業者12社のほか、地方当局により新たにディストレスト開発業者に選定された数社に金融支援を提供する不動産基金を設立する計画を承認した。
だが、住宅ローンの返済猶予を通じて住宅購入者を懐柔しようとするのは支払いボイコットの拡大を助長しかねない危険な戦略だ。DBS銀行のマクロストラテジスト、チャン・ウェイ・リアン氏は「本格的な住宅ローン返済猶予は応急処置で、契約通りにローンを返済している大半の住宅購入者に誤ったメッセージを送る可能性がある」と指摘。「不動産業界のサプライヤーや下請け業者にもローン返済停止という似たような抗議活動を促す恐れすらある」と述べた。

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、フランシス・チャン氏はいかなる債務モラトリアム措置であれ、住宅ローンの借り手に返済ストップを促す可能性に触れ、「すでに支払い停止を始めた借り手は、最終的にデフォルト(債務不履行)を選択するかもしれない」と語った。

  中国当局は抗議活動が国際的なメディアで大きく取り上げられるかどうかも注視している。唐教授によれば、当局の懸念は住宅ローンのボイコットが連鎖反応を引き起こし広範な反発につながるトリガーイベント」になることだ。「コロナ対策に不満を持つ失業者や店舗閉鎖に追い込まれた人々を含め、他の経済セクターに広がるかもしれない。仮にそうなれば、中央政府ははるかに大きな問題への対応を迫られる」と話した。

原題:Xi Wields Carrots and Sticks to Quash China Mortgage Boycotts (抜粋)


「最大40兆円リスク」も! 中国・習近平が直面する重大試練「住宅ローン返済拒否」騒動の衝撃

8/16(火) 6:01配信

 中国全土で吹き荒れる「住宅ローン返済拒否」運動のうねりに収束の気配が見えない。ゼロコロナ政策で冷え込む中国経済を奈落へと突き落としかねないリスクすら孕み、共産党大会を秋に控えたいま、習近平政権にとって“最大の懸案事項”に浮上しているという。 

 発火点となったのは6月末、中国江西省の景徳鎮という地方都市で起きた前代未聞の“反乱劇”だった。景徳鎮市で建設中のマンション購入者らが「工事が再開されなければ、住宅ローンは返済しない」と開発業者などに宛てた通知書を公表。それを中国メディアが報じたことで、騒動は全土へと拡大した。  中国メディアによると、7月下旬までに「返済拒否」に遭った物件は300を超え、全国26省(直轄市や自治区を含む)にまたがるという。  また中国の不動産調査会社が公表した数字では「返済拒否」に遭っている物件金額ベースで約4000億元(8兆円)にのぼり、これは中国の住宅ローン総額20兆元(400兆円)の約2%に相当。さらに“予備軍”とも目される、引き渡しが遅れている物件のローン総額は「2兆元(40兆円)」との試算値もあり、予断を許さない状況だ。  中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏が話す。 「近年の中国の不動産(住宅)開発の主役はタワーマンションですが、そもそも人口200万人にも満たない景徳鎮市でタワマンを建設しても、高い収益性などは見込めない。つまり最初から居住目的だけでなく、いまだ衰えぬ不動産投資ブームに乗った投機目的の客も当て込んでマンション建設が行われている事情がある。今回、返済拒否という“反乱”を起こした人たちのなかにも自分が住むためでなく、投資目的で購入した人たちが少なくない数、含まれていると見られています」

工事中断が続出の背景

 日本では住宅ローンの返済は物件の引き渡し後に始まるのが一般的だが、田代氏によれば、中国の場合、物件の購入契約時からローンの支払いが始まるという。さらに返済期間も10~15年程度と日本よりも短いため、工事の進捗の遅れは無視できないのだとか。 「中国ではまだ更地の状態から物件募集が開始されることも珍しくなく、この第一次募集時に手を挙げると一番安く買える仕組み。工事が進むにつれて第2次、第3次募集も行われますが、人気は第1次募集に集中する。そのため、今回のように“ローン返済は続けているのに、肝心の建物が一向に建つ気配がない”といった現象が起きてしまう」(田代氏)  騒動が拡大する背景にあるのが、中国の不動産市況の悪化だ。負債を抱える開発業者が急増し、資金繰りに窮した末に建設工事を中断するケースが相次いでいるという。 「引き金となったのが2021年1月、加熱する不動産バブルを警戒して、中国人民銀行が市況引き締めのために導入した総量規制でした。その煽りで同年9月、中国不動産大手『恒大集団』が経営危機に陥り、不動産市場が一気に冷え込んだ。景徳鎮のケースも恒大系列の不動産会社が販売したマンションが舞台となっています」(全国紙外信部デスク)住宅問題は「近代中国の土台」

「中国ではスマートフォンを通じて個人の“信用”が数値化されるので、ローン返済を拒否するのは非常にリスクのある行動です。それでも捨て身の行動に打って出たのは、それだけ横行しているマンション開発業者の杜撰で無責任な経営を世に訴えたかったから。リスクを負ってでも公表することで、政治的なアクションが起こるのを期待したのです」(田代氏)  事実、政治が動くこととなり、中国政府は7月28日の中央政治局会議で「住宅の引き渡しを保障し、人民の生活を安定させなければならない」と指示し、問題解決に乗り出す姿勢を見せた。 「中国の庶民にとって、住宅とは住むところであると同時に、資産形成のための“財産”でもあります。だからこそ住宅を手に入れるため、人々は一生懸命働くのです。中国経済を支えているのはこの価値観であり、住宅の建設推進は“現代中国の土台”ともいえる。それゆえ、今秋に総書記として3期目を目指す共産党大会を控えたいま、習近平氏にとって返済拒否問題は必ず解決の道筋を付けなければならない“最大懸案”に浮上しています」(田代氏)  誰もがハッピーになる解決策はないと見られているが、難局をどう乗り切るか。習近平にも“試練”が訪れている。

デイリー新潮編集部

中国で「住宅格差」が深刻化、バブル再燃の上海と沈みゆく地方都市

2021.1.22 

コロナ禍で急増? 住宅を手放した人々の波乱の人生

 中国で住宅を手放す人が増えている。借入金の返済ができないなどの理由で、銀行が差し押さえて強制売却する競売物件が増えているのだ。新型コロナウイルスは住宅ローンを組んでマイホームを購入した中国の一般家庭をも直撃している。

 中国ではアリババ集団の「阿里拍売」などが各地の裁判所とリンクする競売サイトを運営している。「阿里拍売」では12月14日時点で登録されている住宅件数が134万2850戸だったが、1月21日には137万4981戸に増えた。わずか1カ月強で3万2131戸も増えた計算だ。

 この競売サイトでは、さまざまな競売物件が閲覧できる。聞いたこともないような土地に建てられた豪華なタワマンや、入居が進まない巨大マンションなどもある。室内画像をクリックすると、起き抜けのままの乱れたベッドや、散乱した私物、扉には差し押さえの貼り紙、果ては、資産調査に来る破産管財人まで映り込んだものもある。こうした生々しい画像からは、所有者の売り急ぎが見て取れる。熱狂的な“不動産信仰”に取りつかれたものの、結局住宅を手放した人々の波乱の人生の一端でもある。

 中国には4億2000万の世帯があるといわれるが、多くの世帯が「いつかは大都市のように値が上がる」と期待して住宅を購入した。今や中国の持ち家率は89.68%(西南財経大学調べ。なお日本は約60%)だというが、このコロナ禍で、一部のサラリーマンや事業者は職や事業を失い、住宅ローンの返済が滞るという厳しい局面に立たされている。中国における個人向け住宅ローン残高は、2020年8月末で28兆元(約448兆円)、ローン契約者数は7000万人に上っている(中国人民銀行『中国貨幣政策執行報告』、2020年9月15日)。

上海ではまたしてもバブル懸念

 一方、一部の都市ではバブル再燃の兆しもある。感染回避で多くの市民が家にこもった2020年2月の住宅価格は、多くの都市で横ばいか前月割れとなった。しかし、北京、上海、広州、深センの大都市では感染拡大の封じ込めの成功とともに、その後市況は急速に回復した。その一つが上海で、すでに「天井に達した」と言われてきた住宅価格がまたしても上昇している。

 たとえば、香港系デベロッパーが手掛けた浦東新区の張江湯臣豪園は、上海の人気高額物件だが、2020年10月には89平米のマンションが総額にして1250万元(約2億円)で成約した。1平米当たりの単価は実に約14万元(約224万円)だ。

 89平米のマンションは、日本であれば「広くて大型」とされるが、上海では100平米未満では「狭くて小型」という認識が一般的だ。上海では今、その「小型」を中心に値を上げる物件も少なくなく、「上海の上昇は無限」といった“不動産神話”まで生まれている。

 2008年に金融危機の打撃を受けた中国は、景気刺激策として翌年に4兆元(約64兆円)の財政出動を行ったが、このとき、資金の多くが不動産市場に流れ込み、たちまちにして住宅価格がつり上がった。今回も金融緩和で同じようなことが繰り返されているというが、上海の場合は“特殊性”が作用している。というのは、昨年前半、上海の医療体制の充実を見込んだ地方都市の人たちが、上海への移住を算段する動きがあったのだが、このような「他の省にはない」独自の価値が住宅価格を押し上げているケースもあるからだ。売り主が住戸を手放さないことも住宅の慢性的不足の一因とされてきた。

帰国留学生の急増が価格を押し上げる

 上海市は以前から人材獲得に熱心だった。留学帰りの優れた才能を集積するために、財政支援や有名企業とのマッチングにも積極的に取り組んだ。市内で就労もしくは起業する帰国留学生を囲い込み、その数は累計で20万人を超えた。

 実は今、感染拡大が止まらない欧米先進国から逃げ出すようにして祖国に戻る中国人留学生が急増している。彼らは帰国しても故郷のある地方都市には帰ろうとはせず、帰国後の生活の舞台に上海を選ぶ傾向が強い。その理由について、上海のコンサルティング会社に勤務する宋偉さん(仮名)はこう話している。

上海は外国投資が集まる都市という性格もあり、他の一級都市よりも国際スタンダードで仕事ができる環境が整っています。残業もなく、土日祝日の休みを保障し、社会保険を完備させる企業が多い。帰国留学生の間で上海が人気なのは、人材獲得のための政策もありますが、法令を順守する企業が多いことと無関係ではありません」

中国のSNSでは、上海での最先端の都会生活をアップロードする投稿を目にする機会が少なくない。“国の情報統制”という部分を割り引いても、これらの投稿は上海での生活を楽しんでいる様子を十分に伝えている。

「新しく開発された話題のスポットや、そこで食べるおしゃれな食事など、海外の若い中国人は、外国と変わらない上海生活に一目置くようになりました。彼らは今、このまま西側の先進国に居続けるか、それとも中国に帰国するかを真剣に悩んでいます」(同)

 中国への帰国を望む理由は一つではないが、決定的といえるのが、先進国における感染拡大がもたらすリスクだ。世界の混乱は収まらない。不景気で就労の門戸はますます狭められており、さらにはサプライチェーンの途絶や技術の遮断、民主主義を共通の価値観とする西側諸国の包囲網…、中国回帰が本格化しているのはこうした外部環境の変化にもある。

 小型物件の価格上昇の一因は、高予算の若い世代が単身で上海に移住しようとしているためでもある。条件を満たす帰国留学生に上海の戸籍を付与するという政策も導入された。ここ数年動きがなかった上海の住宅市場が息を吹き返したのは、このような事情もある。

格差は開くばかり

 その一方で、内陸の地方都市では、人材の流出とともに衰退がよりいっそう進むことが懸念される。

 振り返れば、2019年は多くの中国メディアが「GDP6%成長の保持は難しい」と予想した。中国経済の成長が鈍化し、積み上がる不良債権を不安視する声は小さくなかった。そして2020年が始まると同時に、コロナの感染拡大に見舞われ国内は大混乱に陥った。

 中国は短期的な封じ込めに成功したが、水面下で住宅を手放さなければならない人が多数発生している。冒頭に紹介した競売サイトでも一部を除けば、「購入希望者ゼロ」のまま買い手の現れない住宅が在庫となって日々積み上がっている。

 浙江省温州市は、2011年の住宅バブル崩壊とともに繁栄から衰退へと一気に転落してしまった地方都市の一つだ。ここでは今、人口の流出が進んでいる。現地企業に勤務する呉俊さん(仮名)は「友人の子どもたちが米国から中国に帰国したが、上海、北京、杭州に行ってしまい故郷には戻ってこない」と訴える。同地の住宅市況に回復の兆しは訪れず、新たな産業が興る気配もない。

 上海では富と人材の一極集中が進むが、同じ沿海部でも少し離れた地域では、処分不能の住宅に加え、人口減や空き家問題が潜在する。コロナ禍でさらに二極化する都市間格差に、中国はどう是正の道筋をつけるのだろうか。

中国で「住宅ローン返済拒否」が増加、景気減速の新たな火種に

2022.8.25 5:05 

写真はイメージです Photo:PIXTA

不動産市場の悪化で
高まる中国経済の減速懸念

 2022年4~6月期の中国の実質GDP成長率は、コロナ感染急拡大に伴う上海市を中心としたロックダウン(都市封鎖)の実施により、前年比+0.4%と前期(+4.8%)から失速した。もっとも、6月単月の経済指標は、上海市のロックダウン解除や、インフラ投資テコ入れなどの政府の景気対策を背景に、持ち直しを示していた。

 しかし足元で、再び中国経済の減速懸念が高まっている。7月の主要指標は、輸出が好調だったものの、生産・消費・投資がいずれも6月から減速した。甘粛省など一部地域での散発的なコロナ感染拡大による経済活動停滞に加え、不動産市場の悪化が影響したとみられる。

 今回の不動産市場悪化の背景には、6月末以降、中国各地で広がった、建設中住宅の購入者による住宅ローン返済拒否の動きがある。

住宅ローン返済拒否で拡大する中国の不動産危機

著者 鳥羽賢

2022年8月16日
中国は去年から不動産価格の上昇が止まり、恒大集団など経営が厳しくなるディベロッパーが増えた。ディベロッパーの経営難によって住宅の建設が途中で止まるケースが増え、怒って住宅ローンの返済を拒否する購入者が次々と出てきている。中国の不動産危機がさらに拡大しているようだ。

不動産の総量規制を導入

 中国ではここ1~2ヶ月間、住宅ローンの返済を拒否する動きが全国的に拡大している。中国は昨年頃から不動産価格の上昇が止まり、そのために不動産ディベロッパーは経営が苦しくなる企業が増えた。住宅ローン返済拒否は不動産危機のさらなる拡大と見ることができる。
 そもそもの始まりは中国政府が、昨年初頭になって不動産価格高騰に歯止めをかける政策を打ち出したことにある。中国の不動産市場は過去30年間ほど上昇が続いてきた。中国は日本のバブル崩壊から「不動産価格が下落に転じると景気が後退する」との前例は学んでおり、不動産価格の下落を防ぐよう努めてきた。
 しかし最近になってあまりに不動産価格が高すぎ、中低所得層が家を買えず子どもも持てないようになってきた。少子化が深刻化している中国はこの現実を容認できず、ついに不動産価格抑制策を実施。2021年1月には銀行が過大な住宅ローンや不動産融資を実施できないような総量規制を導入した。
 この規制や他の政策によって不動産市場は冷え込み、ディベロッパーは多大な影響を受ける。多くの企業は恒大集団のように経営危機に陥り倒産やデフォルトになった企業も少なからず出ている。
 そして不動産危機は今、住宅の買い手である個人にも拡大している。中国は日本と違い、物件が完成する前、建設が始まった時点から契約を締結して住宅ローンの支払いを始める場合が多い。
 だが最近の不動産危機のため、ローンの支払いを始めても建設が予定通り進まず、物件の完成が当初より遅れるケースが目立ち始めた。ローンを払っているのに完成して住める状態にならないため、怒った個人の契約者達が住宅ローンの支払いを拒否している。そしてそのような動きが最近メディアやSNSで拡散されて、中国全土に広まっているのだ。
 返済を拒否しているローンの総額は数千億元(約数兆円)と言われ、中国の住宅ローン総額からすれば数%程度でしかない。割合としてはまだ小さいが、やはり数兆円のインパクトは大きい。
 こうなると次に危機が拡大するのは住宅ローンを貸し付けている金融機関だ。借り手が返済を拒否すると金融機関にお金が返ってこなくなるため、金融機関の経営が打撃を受ける。そして不動産危機はさらに拡がっていく。
 1990年代の日本のバブル崩壊もダメージは大きかったが、中国はこれまで30年間続いていた不動産バブルがついに弾けようとしている。そのダメージは日本のバブル崩壊より遥かに大きくなるだろう。
 中国では今年春に上海など各地の都市でロックダウンが行われ、第2四半期の成長率は前年同期比でわずか0.4%だった。そこにさらに不動産問題が加わるため、今年や来年以降の中国経済はかなり厳しくなると思われる。


中国の住宅ローン返済ボイコット運動の現状は?

2022年8月27日

  • 中国では完成・引渡し前からローンを支払う慣行があったため、開発会社は内部留保を蓄える必要がなく資本構造はかなり脆弱な状態でした。そこに、不動産開発会社の融資規制が導入されたことで、多くの開発プロジェクトが頓挫する結果となってしまいました

  • 2022年8月25日時点で117都市にわたる332のプロジェクトでボイコット運動が起きています。恒大集団 (ボイコット物件数:83件)、融創中国控股(同:20件)、緑地控股集団(同:17件)の上位3社は企業規模が大きいので、他にも建設が止まっている物件がたくさん存在します。この問題がさらに拡大し、金融危機に発展する危険性もあります。注意しましょう。

住宅ローン返済ボイコット運動の発端は?

「中国住宅価格指数の推移(中国の70の大・中都市における住宅価格を前年と比べた変化率)」investing.comより(画像はすべてクリックすると拡大します)
前回の記事(「中国で住宅ローンの返済を拒否する運動が活発に。金融危機は起きるか?」)で取り上げたように、現在中国では住宅ローンの返済を拒否する運動が起きています。そこで、今回は同運動の現状についてあらためてまとめてみたいと思います。
もともと、中国では長期にわたって不動産価格が上昇していたこともあり、不動産開発会社の多くが有利子負債を積極的に活用して拡大路線を突き進んできました。また、中国では住宅価格の値上がりを見越して、完成・引渡し前から住宅ローンを支払う慣行があったため、開発会社は内部留保(現預金)を蓄える必要がなく、資本構造は脆弱な状態となっていました。

「三条紅線の合格状況」2021年9月29日第123期 MUFG Bank(China)経済週報より(画像はすべてクリックすると拡大します)
そんな中、中央政府は不動産価格の高騰を抑えようと、2020年8月に「三条紅線」という不動産開発会社に対する融資規制を導入。これによって事態は急変します。同規制によって財務状態の悪い(負債の多い)企業への融資が制限されたことから、多くのディベロッパーが資金難に苦しむことになりました。

「不動産開発会社への資金流入量は大きく減少」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)
突然の規制の導入と資金繰りの厳しさから、最大手の恒大集団をはじめ、新力控股(集団)、花様年、華夏幸福基業など、不動産開発会社のデフォルト(債務不履行)が相次ぎます。そして、不動産セクターのデフォルトが増加したことで、金融機関のどうえクターに対する融資姿勢はますます慎重になり、不動産開発会社の資金調達はさらに困難になっていきました。
悪循環に陥ったディベロッパーは資金流出を防ごうと、資産売却や人員整理、プロジェクトの中止を決定しますが、市況は回復せずに財政再建は難航。結果として、建設途中の建物と不動産購入者だけが取り残されることとなりました。

My  opinion.

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵におなじ。
支那の世は、平家物語と同様に盛者必衰の無常が定めである。おごれるものも久しからず。  どんとはらい!

参考文献・参考資料

中国河南省、30日から凍結預金また返還へ (msn.com)

中国金融業界への統制強化で金融の闇にメス | 2021年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

中国住宅ローン返済拒否、許せば連鎖反応の恐れ-習氏の危険な懐柔策 - Bloomberg

「最大40兆円リスク」も! 中国・習近平が直面する重大試練「住宅ローン返済拒否」騒動の衝撃(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

中国で「住宅格差」が深刻化、バブル再燃の上海と沈みゆく地方都市 | China Report 中国は今 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

中国で「住宅ローン返済拒否」が増加、景気減速の新たな火種に | 伊藤忠総研「世界経済ニュースの読み解き方」 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

中国不動産の不振が波及、大手民間銀の株価急落 - WSJ

住宅ローン返済拒否で拡大する中国の不動産危機 (iforex.jpn.com)

中国の住宅ローン返済ボイコット運動の現状は? | 株の本を100冊読んでみた (kabunohonn.com)

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